「怖い」以上に仕掛けの楽しさ
2013/09/10 16:55
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投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
先ごろ芥川賞を受賞した藤野可織さん。
受賞作は未読だが、紹介を読むと、
語り手とそれが見る周囲の世界との関係の設定が独特だ。
どうやらこの作家の語り手は、文学批評でいう「信頼できない語り手」のようで、
なかなか油断はならない。
表題作「パトロネ」でも、いかにも変な語り手が登場する。
もちろんだからわけがあって、ここは仕掛けを楽しむ読書。
妙な雰囲気の話が展開して、わかりにくい面はあるが、
仕掛けに気付くとおおっという感じ。
今までも似たものがあって某映画なども思いつくが、
それとはまた趣向というか方向性が違うのがいい。
「信頼できない語り手」を使う一人称の作家と思っていたら、
この本のもう一編、芥川賞候補だったという「いけにえ」は三人称だった。
こちらの方が「パトロネ」より古いので、だんだん一人称になったのかとも思ったが、
「パトロネ」とは違ったテーマに、三人称の方がよりふさわしいような気がした。
つまり(これまた変な)主人公をどう見るのか、という問題。
何かをどうとらえるか、というのが、もしかすると作家のキーワードかもしれない。
「いけにえ」もわかりやすくはないものの、やはり仕掛けも含めて考える楽しさがある。
「純文学のホラー小説」のようにも言われているらしい藤野さん。
毎日新聞だったかのインタビューで、自分では意外なように言っていたと思うが、
たしかにホラーっぽい設定は使っているものの、狙っている方向が違うと思うので、
つまり怖がらせることがポイントではないので、
たとえば「いけにえ」に出てくるモノはたしかに不気味ではあっても、
私自身はあまり怖いとは思わなかった。
怖いものは他にあると思えるわけで、
まあ勘違いかもしれないが、そうわかることの楽しさの方が不気味さに勝る。
というわけで、藤野さん、
ここでは何を狙って、どんなことを仕掛けてくるのかな、
と考えながら読むタイプの作家ではないかと思う。
そういうのが好きな読者なら楽しいと思うし、
そこが馴染めないと魅力は感じないかもしれない。
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表題作と芥川賞候補にもなった「いけにえ」の二編からなる短編集。マジックリアリズムっつーんかね。Don't Think. Feel.
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人間の内面描写って言うのでしょうか。私には難しい本ですね。
2編目の物語の母親の考え方、「親子だからって好きにならなくてはいけない訳ではない」は考えさせられます。本能とばかり思ってましたので。
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明け方に見る奇妙な夢みたい。
フィルムの外側をパトロネっていうんだね。
あれを手で弄んじゃうのはわかる。
今じゃ貴重品かな。
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うーん、うまくリンクできなかった中編奇譚二編。
リンクできなければ、心に何も入ってこない。
残念。
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よくわからなかったなぁ。メタファーなの?帯に書いてあったけど、確かにシュール。
どちらかと言えばメフィスト賞な感じかなぁ。
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何だろう? このざらざら感は?
今までにないタイプの小説だけど、以前からこんな感覚知っているような気がする。
「パトロネ」は姉は妹を意識しているけど、妹は姉をを空気のように扱っている。
「いけにえ」は美術監視員のボランティアをしている主婦が、展示室に居座っている悪魔を捕まえようとする話で、若干ホラーティストも含まれている。
いずれの作品も、現代社会における閉塞感を感じられる内容だった。
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2作とも主人公に誠実感がなく、他人を寄せ付けない孤独感とかマイペースな感じとか感情の薄い冷酷さや、作品全体に漂うシニカルな感じは好きなんだが、何の説明もなく幽霊・お化けみたいのが出てきちゃうと流石に意味がわからなく付いていけないなあというのはある。「パトロネ」で似た名前の少女が出てきた時は過去の自分の投影なのかな?と思ったが、どうもそうでもないようだし。
あまり意味は考えずに世界観を楽しむ作家なのだろうけど。
「爪と目」同様、ベランダ閉じ込めや植物系の話が出てくるのだが、著者はこれらに対して何か拘りがあるんだろか。
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途中までは自意識過剰な女が人とは違うってことをがなりたてるような(表面は静を装いつつも)苦手な文章だと感じて(作者と作品の距離がなさ過ぎるタイプに感じた)、でもそれは実はこうだっんだっていうとあることに気づいてからは全部ひっくり返された。
純粋にすごい小説だと思いました。
そしてそのからくりに気付くまでは「なんか怖い」に支配されているのに気付いてからは、気付いたんだから本当はもっと怖いはずなのに何故か安心した。ほっとした。
「いけにえ」の方はやや肩透かし感が。「パトロネ」がすごかったからかなぁ。
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大好きな桜木紫乃さんの直木賞受賞時に芥川賞を獲った方だったので、まずは受賞作以外を一作読んでみようと思い。
姉と妹の話ね、と思いつつ途中まで読み進めてから、展開の理不尽さにもしやこれはと気付く。でも最後まで答えはない。意味の繋がりを見出せないストーリーは好みではないと感じ、併録の2篇目("いけにえ")は読むのを止めようか...とも思いつつ読んだら、こちらは良かった。同じ理不尽でも、ごく普通の中年主婦と悪魔という日常と非日常のバランスがおもしろく、恐ろしげな悪魔から彼女のような存在によって護られる気さえした。他の作品も読んでみようかな。
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空っぽのパトロネ、中身の入ったパトロネ。残ったものは何なのか。外側からではわからない。触れた者しかわからない。
幻想、残像、夢、現。解釈は人それぞれ。
あけすけな感じと限定的な閉塞感。
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パトロネ、いけにえの2作だが、どちらの女性もよくわからない。
不安定な感情のふたり。
いけにえでは魔が出てきたり、その悪魔を捕まえて、切ったり、あぶったり
挙句の果てには美術館の監視員もやめてしまう。
女性の感情って、わけわかんないものなのかな。
文章的には、なかなかいい。
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表題作「パトロネ」は一風変わった幽霊譚。中盤過ぎまではイメージの拡大や推測の拡がりができて面白いのだが、その後は終わらせることに意識が向かってしまっているのか、減速してしまうのが残念。皮膚病と心情をリンクさせたのは上手い。イライラ感が伝わってくる。パトロネって何かと思ったがアレだったのね。オジサンはパトローネと習いました。
「いけにえ」は普通さ凡庸さに潜在する執着や狂気といった感じ。普通のオバサンの普通の美術鑑賞がツボにはまる面白さ。美術なんて分からないと言いつつもその観賞力はただ者では無い。コミカルな文章だがこの後の作品と比べるとまだ硬い感じがする。言葉の選び方がまだこなれていないからかな。こういう話は大好き。
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妹と同棲することになった主人公。
ある日妹は失踪し女の子が現れるーパトロネ
悪魔を見た主人公はその美術館で働くことにするーいけにえ
悪魔の末路が美しくて一番好きだった
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パトロネとは、フィルムが収まっているあの小さな円筒形の缶のこと、だそうで。
やっぱり藤野先生作品は世界観も何もかもが不可解なんだよなあ・・・気持ち悪いんだよな、どっかが・・・。
どこまでが正気で誰までが現実なのか・・・。
分からない・・・皮膚病怖い…。