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結局何が車輪の下敷きだったのか。
2007/09/20 23:00
13人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hachi - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヘルマン・ヘッセの自伝的小説とも言われている「車輪の下」。
ハンスが神学校の試験を志すところから、不遇の最期
を遂げるまでが描かれている。
「車輪の下敷きになってはいけない。」という言葉が非常に印象的だ。
何気ない台詞のようにも思えるが、作品のタイトルにもなって
いるように、実は重要な言葉である。
ハンスは純粋で正直すぎる子供で、また天才だった。
ギーベンラート氏含め、周りの大人たちはハンスに勉強
することを進めた。ハンスは期待に応じようとせっせと勉強
するが、疲れていくばかり。大人たちは休む暇もくれない。
神学校に入れば、ハイルナーという親友ができるものの、
結局その友情も大人によって引き離されてしまう。
やがてハンスは疲れきり、世間についてゆけなくなってしまう。
一見すると不幸な少年の物語、で終わってしまいそうだが、
「普通の人にはわからない天才の生きる苦悩」というものが
所々垣間見られる。年齢の近い友達がほとんどいないハンス。
周りの人間と衝突し、神学校から脱走するハイルナー。
飛びぬけた才能というものは、なかなか理解できるものではない。
この二人の天才も本当ならば、自分を理解してくれる人を
欲していたに違いない。だから2人は親友になれたのだろう。
もし、あの世界にあの二人の少年しか存在しなかったら、
二人は引き裂かれることなく、親友でいられただろう。
天才と世間とは相反する言葉なのかもしれない。
この物語で一番の車輪の下敷きになったのは、ハンス自身
ではなく、むしろこの二人の友情なのではないだろうか。
振り回される人生も、ころがる人生も、周っている。
2008/06/28 13:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヘッセ自身の経験をもとに書かれた小説ではあるが、時代の背景や場所は別にしても現代の日本にも十分に通じるものがあるのではないかと思う。
天性の頭脳と努力の結果、神学校という頭脳集団に選抜された少年たちが集められ、将来の大学教授、役人、牧師というエリートコースを歩むことになる。その登竜門ともいうべき神学校に入学した主人公ハンス・ギーベンラートの心の葛藤を描いたのがこの作品だが、それはヘルマン・ヘッセ自身の心情をそのまま映し出しているといっても過言ではない。
本人の意向よりも神学校の教師、少年たちの親や関係者という大人たちの名誉のために過酷な勉学を少年たちに強いていくが、それは「お前の将来のため」とうそぶく。
そして、詰め込み教育の最中、わずかな疑問を心に抱いた少年たちの中から一人、二人と落伍者が出てくるが、ハンス・ギーベンラートも抜群の成績優秀者であったにもかかわらず、その一人に加わってしまう。現代においては「うつ病」は市民権を得た病のように思われているが、すでにこの時代においても症例があり、主人公もその範疇に加えられ強制的に帰郷させられている。
少年の一時期、社会の底辺に生きる人々を軽蔑の目で見過ごすことがあるが、神学校を放り出され、社会のお荷物として故郷に戻ってきてからのハンス・ギーベンラートのそれらの人々を見つめる視線に変化が生じている場面は現代社会のどこにでもある光景と重なっている。
そして、思春期の少年らしく、異性に対する心の葛藤も。
「車輪の下」という題名と内容との共通項をさぐると、大人たちが敷いたレールの上を進む主人公を車輪になぞらえたというべきだろうか。もしくは、仏教に詳しかったヘッセが輪廻転生の象徴ともいうべき「法輪」にも重ね合わせたのか。
いずれにしても、晩年になって落ち着きを得たものの、ヘッセ自身、悩み苦しみ、波乱の生涯だったことを思うと、彼の人生行路の原点がここにあるということになる。
ちなみに、巻末の解説を読んでいて、ヘッセが初めて見た日本人が新島襄であったということに驚いた。
年代を超えて何度読んでも同じだけ感動する
2004/08/18 13:50
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yan - この投稿者のレビュー一覧を見る
新潮文庫の100冊
ヘッセの少年時代をハンスとヘルマンという二人の少年を
借りて描いた作品
初めて読んだのは中学生のとき
そのあと何度も読んでいるが
久しぶりに読んでみて新しい感動があった。
親の期待を一身に受けて神学校を受験し、2番で合格。
しかし、神学校の息の詰まるような規則や
友人関係に疲れ、悪友の感化によって脱落していく少年。
故郷に戻っても彼の居場所はなかった。
行き着くところは死。
そういう筋書きはいつ読んでも同じなのに
若いころに読んだときは、周囲の好奇の目
過剰な期待に押しつぶされて彼は死んだと思って憤りを感じた。
その間にながれるヘッセ独特の詩的な描写に気付かなかったのは
どうしてだろう。故郷の川、森、花、神学校の湖…
そういうものが生きて流れているのだ。
彼はなぜ故郷で自分を見つめることなく死んでしまったか。
絶望して泣き崩れる彼の心が痛いほど伝わってくる。
若いころ、自殺だとばかり思っていたが今では
そうではなかったように思える。
ほんの少しの休息を川に求めて、そのまま落ちてしまった。
事故なのだ。本当はヘッセはここで生き方を考えていたはずだ。
だからこそ風景描写がすばらしいのだと思う。
Yanの花畑
名作
2016/02/02 11:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:onew - この投稿者のレビュー一覧を見る
「車輪の下」はヘッセの自伝小説。「車輪の下」というタイトルがなんともいえない寂しい気持ちにさせます。
これは"たとえば"の話だけど
2015/09/12 13:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けy - この投稿者のレビュー一覧を見る
少年ハンスの物語。正直言ってしまえばただただかわいそうな少年の話。だが、この作品は作者ヘッセの言いたいことがとても伝わってくる。この作品はヘッセの体験が元になっているが、事実と決定的に違うのはヘッセはハイルナーの立場であったこと。この話はあくまでifなのだ。大人の言うことに従うのが必ずしも正しいことではない、自分で選択することの大切さなどを描きながら、事実で言いたいことを補完する。それが単なる自伝や小説ではない完成度に引き上げている。
レールに乗って
2024/10/14 10:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
神童ともてはやされ、周囲の期待に応えようとし、
苦しみ疲れ、レールから外れていく。
いや、外れようとしても、もう手遅れで逃げられなかったのかもしれない。
レールに乗っている間も、周りには美しい風景は広がっていたのに、それに気づくこともできず。
要・コミュニティノート
2024/06/01 11:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:石川誠壱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
米米CLUBの『車輪の上』という本なら読んだことがありましたが、『車輪の下』があったとは知りませんでした。続きがあったんですね。『車輪の中』や『車輪の完結篇』もあるんじゃないのか、確認してみます。
ヘッセ自身の青春
2021/09/18 12:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はヘッセの自叙伝のようなものということで、精神的な葛藤が本作を産んだのでしょう。登場人物の心理描写が卓越していて、読んでいて感情移入します。主人公の栄光からの挫折、そしてどん底から登る姿は、山あり谷ありの人生そのものです。主人公のラストシーンがあっさりと書かれているのが印象的でした。
中高生に
2021/07/17 18:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ミチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
若い頃読んでいれば、少し変わるところがあると思いました。ヘッセ作品を他のも読みたいと思いました。クヌルプが気になる。
車輪の下敷きは結局…
2020/01/02 20:31
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ノッポ - この投稿者のレビュー一覧を見る
村で一番賢かったハンス・ギーベンラートは神学校にうかり通うことになります。
しかし、学校でも様々な事故が起きます。
湖におぼれて亡くなったりハンスの友達が学校から逃げて行ったりハンスは友達がいなくなってしまい結局学校をやめてしまうことになります。
最後にハンスは機械工に働くことになります。結局ハンスは川におぼれて・・・
救いのない話だけど、好き
2019/01/28 14:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
神学校を中退し、見習い工として再出発しようとしていたハンスの突然の事故死。やりきれないラストである。田舎育ちで自然に囲まれてきた彼は当然のように毎日自然児となって少年期を過ごすのだが、「頭がいいから、おまえなら神学校にも行けるよ」と無責任な大人たちは期待をかけまくる。これが子供にはつらい。そんな大人たちに限って、子供が失敗した時の手のひら返しがすごい。ハンスをおだてていた連中は彼から離れていく。なんだか、高校受験に失敗した時の苦い経験をこの作品で思い出してしまった、やっと吹っ切れた矢先の事故死、まわりでは自殺を疑う人もでてくるだろう、そうかつて、彼をおだてていた連中とか
ヘッセの代表作!子どもの気持ちと生活と描いた自伝的小説!
2016/06/30 09:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ヘルマン・ヘッセの代表作です。主人公の少年ハンスは周囲の大人たちの期待に応えようと一生懸命勉学に励み、神学校に進学します。しかし、そこで彼を待ち受けたものは決して彼が期待していたものとは違い、規則づくめの自由を制限された生活でした。そこで、彼は思い切って神学校を退学し、見習い工として働き始めます。果たしてハンスはどのように考え、どのように変化していくのでしょうか?ヘッセの自伝的小説とおも呼ばれる良書です。
学問以外のことの学び方は、
2022/07/24 07:50
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投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
その機会を求めようと思うまでに時間がかかる。だって、そんなやり方、そんなできごとがあるって知らないから。知らないことは誰に聞いたらいいのか、聞いていいのか、どうやって知るのかもわからない。勉強に力を入れてきたハンスにとって最初の規格外な人に出会えたことが幸運だったか、不運だったか。恋をして、仕事仲間とやりがいを見出した最中、これからの人生を経験してほしかった。
とにかく救いのない話
2021/09/16 03:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たべっこどうぶつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
とにかく救いのない話です。
規則に従って真面目に勉強してきた主人公が、辛い方向へどんどん変化していく。もう最後の方なんて見てるのも辛い。胸が痛くなる作品。救いは無いです。
希望ある作品を好まれる方は見ない方がいいです。
読んだ後の無気力感は半端ないです。心空っぽになります。
そういうのが好きだって言う方にはおすすめの作品。
息苦しい少年
2020/07/14 12:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
周囲の過剰な期待や、がんじがらめの規則に押し潰されていく主人公ハンスが痛々しいです。機械工として平凡でも、幸せな人生を送ってほしかったです。