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パラダイムシフトを繰り返し進んで行く科学の思考法・世界観の方向性とブッダの創始した仏教の思考法・世界観とが相似形であるということを論じた一書。ブッダの本だというのに、全302頁中、ブッダが本格的に登場するのが233頁。だからつまらないかというと、そんなことはなく、筆者の博覧強記ぶり、さまざまな学問分野の歴史のエッセンスをぎゅっとつかみ、分かりやすく読者に提示する手つきが素晴らしい。こういう類いの本(特に歴史書など)は学問的にちゃんとしようとするあまり、学問的には正確な記述なんだろうけど、「結局何がどうなの?」となることが多いが、実に本質を分かりやすく伝えてくれる。そして、上座部仏教の方がブッダの創始した本来的な仏教に近いものであり、僕らに馴染みのある大乗仏教は後にブッダの教えから離れ多様化した仏教のあり方だということがとても良く理解出来た。しかし、といって、上座部仏教こそが真の仏教であり、大乗はダメというのではなく、大乗仏教の価値を認めているところに、筆者の知性を感じる、読んでよかった!