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古くて新しい三浦しをん流、昔話の誕生です。
2011/02/24 22:13
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジーナフウガ - この投稿者のレビュー一覧を見る
限りなく壮大な試みに挑戦した作品集である。昔話を現代社会に採り入れて作品を展開させたら、
語り手や聴き手は果たしてどの様な存在になるのが相応しいかというテーマに真正面から取り組んでいる。
決して安易なパロディーに走らず、今の社会の取り立てて大きくはない日常から非日常性が立ち上がるのを
目を凝らして観察した結果が、収録されている七つの中・短編小説として昇華されているのではないかと思う。
冒頭に記された言葉も頁を捲るに連れ、加速度的に印象が強くなる。ここに引用したい。
『わたしを記憶するひとはだれもいない。わたし自身さえ、わたしのことを忘れてしまった。
胸のうちに、語り伝えよという声のみが響く。これはたぶん、思い出のようなもの。
あとはただ、ゆっくりと忘れ去られていくだけの。』
現在が過去に、それより遥かに時が経ち、風化して、我々現代人も
『むかしむかし』と語られるような日が来るのだろうか?想像してみると、
なんだかじんわり楽しいではないか…。改めて、書き手としての三浦しをんさんの手腕には脱帽する。
更に中盤に収録されている【入江は緑】から、当初は一つ、一つの小説が個別に独立しているかの様に
思わせられていた、作品同士が、実は微妙な相互関係の下繋がっていた事に気付かされ、とても驚いた!
『地球は三ヶ月後に衝突する隕石によって滅亡する。だから木星までロケットに乗って脱出する人類を、
都合、一千万人抽選する。当選者番号は随時ニュースで発表される。』特にヤラレタ!と
思ったのは冴えない空き巣が刑事相手の調書に応えているだけだと思っていた、【ロケットの思い出】と、
【たどりつくまで】に登場する、怪しげなタクシーの乗客との接点に気付いた瞬間だ。
これ以上いうとネタバレになるから言わないが、この伏線の回収以外にも様々な仕掛けが用意されているので
是非とも探される事をオススメする。それにしても。一千万人を木星に運ぶのには何回ロケットを
飛ばさなくちゃいけないのだろう?なんて事を本編中唯一の中編
【懐かしき川べりの町の物語せよ】を読みながら思った。作中の主人公で伝説の不良モモちゃんは、
あっさりとロケットに乗ろうとするあがきは捨て『死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか』と
滅亡する運命に従ったのだ。だが。モモちゃんとの、ある夏の日は語り手が居る以上、
永遠の物語りとして聴き手に受け継がれてゆく。三浦しをん作の、傑作昔話の誕生だ。
小さな頃、【桃太郎】や【浦島太郎】を語り聴かされた時の様な胸のときめきを持って読んでもらいたい。
最良の読書時間をお約束致します。
素晴らしい本です
2024/10/31 16:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
むかしむかし、あるところに。って今現在の話も 語り継がれていくのでしょう。日々、色んな事が起こります。そこから学ぶこともたくさんあるんだと思います。
未来の昔の話
2021/03/30 03:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:UrusaiTwins - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔話に絡めた未来の話。でも風景は現代という不思議な設定。あと3カ月後に地球に隕石がぶつかるとしたら、人は何をして過ごすだろう。きっと日本人て何事もなくいつも通りの生活をする人が大半なんだろうな。この話の中の登場人物たちのように。何気ない日常に異常な設定が加わっても、やっぱり日常は変わらない。それぞれの話が微妙にリンクして、最後に最初の話がつながってくる。
昔話をモチーフに
2022/11/02 09:22
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
連作短編としてまとめ上げた手腕に驚きです。隕石衝突の危機でパニックになった人たちがロケットで逃げるエピソードは、芥川龍之介の短編にも繋がるものを感じます。
未来のむかしばなし
2020/01/21 13:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
おとぎ話を題材にした連作短編集。
滅亡確実な地球で繰り広げられる悲喜劇も時間が経つにつれ脱出した人々の中で形を変えておとぎ話になっていくのだろう。
今があるから昔がある! 単純なようでいて見過ごしがちなお話。
2010/10/12 21:47
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
お友だちの中で評価の高い作家ではあるのだけれど、わたしにとっては苦手なしをんさん。一作読むごとに「もういいや」と思うのだけれど、しをん作品をのレビューを拝読するとついついまた手を伸ばしてしまう。
すごく苦手、というわけではない。でも…なんだか合わないのだ。構成?テーマ?それとも文章そのものか…うまく言えないのだけれど、感覚的に何かが合わない、そんな作家だ。
裏表紙を読んで、しをん流にオマージュした「昔話」の短編集だと思い込んでいたのだけれど、違った。各話の初めに「昔話」のあらすじが記載されているので、読み始めてもまだその「思い込み」が間違っていることに気付かくことができなかった。
本書で描かれているのは「昔話」ではなくタイトル通り「昔の話」だ。むかしばなし、とむかし「の」はなし、たった一文字の違いだけれど、その意味するところは大きく異なる。
ここで著者が描きたかったのはきっと、「今があるから昔を語ることができる」ということだろう。あまりにも普遍的であるため見過ごしがちだけれど、改めて考えてみるとこれってすごいことかもしれない。「昔」がなければ「今」はないわけだけれど、「今」がなければ「昔」はないのだ。
各話に対してはそれほど思うことも感じることもなかった。しかし作品全体を通して見て初めて気付かされる「むかしのはなし」というテーマはすごくよかった(興味深かった)。
テーマは非常に面白かった。しかしそれでもやはり、今回も「なにか」合わなかった。
昔話の枠を使って
2020/06/19 13:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
話し上手の三浦しをんさんが昔話の枠を使って少し不気味な夜話をする といった雰囲気の本。
昔話の使われ方は本当に枠だけで内容は作者に完全に入れ替えられている。
生死を扱う重い話が多い割には、しん とした雰囲気が漂っているのは作者の狙い通りなのか?
時をおいて もう一度読んでみたい
2016/05/03 19:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yu_kotikita - この投稿者のレビュー一覧を見る
大好きな三浦しをんさん。
この作品は、読んだ瞬間はよくわからない感覚でした。
伝えられているむかし話を現代の物語とリンクさせています。
また読んでみる時には新たな発見があるかもしれないと思い、その時のためにとっておこうと思います。