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このエッセイ集は、12,3才位の思春期前期の子どもらが読むといいな、というのが第一感。
白血病を罹病し迫りくる死と向き合いつつ病中臥床に著者が、淡々とよしなし想いごとを述ぶるその語り口は、信仰の深さが底に流れ、どこまでも清らで真摯だ。
とくに印象深かったのは、巻末『お返事集』の最後の一編。
6年も大陸で行き方知れずだったクリスチャン看護婦から無事の便りを得て、それへの往信だが…。
終戦後ほぼ1年を経て、満州からの日本人送還が始まった頃、彼女にも
乗船の順番がきて船待ちをしていたところへ、中共軍が攻め寄せてきて、看護婦数名を救護隊として差し出せと要求してきた。そのとき彼女は、別の子連れの看護婦に乗船を譲ってやり、大陸に残ったのだった。
以後ずっと、彼女は中共軍救護隊の一員として、大陸の各地を転戦し廻ったのだろう。
彼女からの無事を知らせる便りは、広東省の山深い地からのものだった。
読後、はて、この女性のその後の行く末はどうであったのか、ひとときあらぬ想いに捉われた。