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大事だよね謙虚さって。自分がちょっと調子のいいときは、ついつい大きな声を出してしまいがち。そんなときに客観的・俯瞰的に自分を見れるかどうか。この本を読んでふとそう思った。
フェルメールの絵は凛として静謐。フェルメール絵画の「静けさ・静謐さ」にスポットをあてた新書。主にピーク期の絵中心。青衣の女あたり。
著者はアートライターらしいけど、自分みたいなミーハーにわかファン目線で書いてくれているから、とても面白く読めた。新書としての役割は十分まっとうしている。
今年はマウリッツハイス展もあるから、フェルメール関連本いっぱい発売されそうな予感。
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フェルメールの絵は何度か観にいったことがあったけど
こんな見方もあったとは!
「牛乳を注ぐ女」の窓はほんの少し割れている。
これが一番印象に残りました。
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先日、フェルメール・センター銀座の「フェルメール光の王国展」に行き、「真珠の首飾りの少女」しか知らなかった私ですが、すっかりフェルメールの絵に魅せられてしまいました。
もっとフェルメールについて知りたいと思い、手にした本。
『フェルメールの静けさの謎を解く』
彼には”静謐の画家”という異名が冠せられていますが、「なぜフェルメールの絵が静かなのか」という問題に真正面から語られた本は今までなかったそうです。本書はいろいろな切り口から、そこを紐解いていきます。
筆者は「フェルメール美術館」というウェブサイトを運営している藤田令伊氏です。
・フェルメールブルー
当時、身近な自然に存在しない青は高い精神性を表すものとされ、「神々の色」「天空の色」「無限の色」として特別視されていた。
新技術により、希少な鉱物、アズライトやラピスラズリから青の顔料が実現されることとなるが、特にラピスラズリを用いたものはウルトラマリンブルーと呼ばれ、マカライトなどを用いたものの100倍の値段がつき、金とほぼ同等の贅沢な素材であった。
それゆえ、ウルトラマリンブルーはもっぱら聖母マリアにしか使われなかったが、フェルメールはウルトラマリンブルーに異常なまでの執着を持ち、「青衣の女」などの普通の人の服はおろか、椅子などのモノにまで用いていた。
青という色は今でこそ、色彩心理学においては「平静」「永遠」「孤独」「郷愁」といった概念に関連深く「静けさ」そのものであるが、フェルメールは後年の研究を知っていたわけではなく、経験的直感で青の性質を理解していたと考えられる。
しかし、なぜフェルメールはこのような超貴重な材料をまるで暴挙の如く使うことができたのかについてはひとつの謎である。
当初フェルメールは借金をしてまでウルトラマリンブルーを贅沢に使っていたが、その後は恐らく裕福な妻の実家に婿入りすることにより、経済的な援助を受けられるようになったのではないかと、筆者は推理している。
・「多色のなかの青」から「少色のなかの青」へ
作品が描かれた順に「牛乳を注ぐ女」では8色、「窓辺で水差しを持つ女」では4色、「青衣の女」では3色の色が使われているが、色数を減らした中で青を使うことで、青の力を引き出し、「静けさ」を出していたのだろう。
最初の4~5年の絵は多色で青もなく、これはフェルメールの試行錯誤の結果とも推測される。
・塗りつぶし、削除された素材
X線調査により「窓辺で手紙を読む女」のカーテン部分には当初、テーブルに大きなガラス器が置かれており、フェルメールによって最終的に塗りつぶされていることがわかっている。素材を減らすことにより、より「静謐感」を引き出したのであろう。
・「静の中の静」
フェルメールは女性の佇まいにおいても静けさを演出している。「手紙を読む」や「牛乳を注ぐ」などの静かな動作に加え、「うつむき加減」の「伏し目」、「ニュートラルな表情」が静けさを演出している。
文字数の関係上全ては書けませんが、その他、レンブ��ントなどとは対局の「穏やかな光」「霞む空気」で静けさを演出するフェルメールですが、彼の現実は14人の子供を持ちとても静かとは言えない状況だったとのこと。その現実が彼に「静謐な絵画」を羨望させたのかも知れませんね。
大変わかり易く、面白い本でしたので、フェルメールに興味をお持ちの方は是非。わたしも他のものも読んでみたいと思います。
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フェルメールの絵の魅力を、文字通り分析して伝える。著者がフェルメールの特別な部分として「静謐」や「青」を語るとき、自分がフェルメールの絵に惹かれるのがまさにそこにあることを気がつかせてくれる。
「真珠の首飾りの少女」の耳飾りの真珠がその位置では光らないことを実験で確かめたのは篠山紀信氏だそうだが、言われてみれはその通りだ。「牛乳を注ぐ女」を照らすために、窓ガラスを割っている厳密さと、対照的な行動である。真珠を光らせるために少女の顔の向きや光線の照射線を動かして思い通りの絵を作ろうとする試行錯誤や、最後に有り得ない光の反射を書き込むかどうかの葛藤など、描いている画家の心の動きに思いを馳せる事ができる。
普段絵を見る機会も少なく、また絵の解説なども読まない私は、著者の趣味の研究成果を楽しんで読む事ができたし、絵の見方を広げる事ができた。
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フェルメールの特徴を「静けさ」という観点から述べている一冊。フェルメールの絵の魅力の秘密が分かりやすくまとめてあるので、フェルメールに興味のある人は読んでみたらいかがだろうか。個人的にはデ・ホーホとテル・ボルフの絵画を一度見てみたいと思った。
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[ 内容 ]
レンブラントやゴッホと並び、いまやオランダを代表する画家になったフェルメール。
彼には“静謐の画家”という異名が冠せられている。
しかし、「なぜフェルメールの絵が静かなのか」という問題が真正面から語られたことはなく、専門書にもその理由は記されていない。
本書は、フェルメールの絵における色彩や構図、モチーフ、光などへの考察をはじめ、一七世紀オランダの時代背景や精神文化に至るまでを分析し、フェルメールの静けさの謎に迫る。
[ 目次 ]
第1章 フェルメールブルー
第2章 構図と素材の秘密
第3章 女たちの姿態
第4章 剥奪される意味
第5章 穏やかな光、霞む空気
第6章 静けさを描くことの理由
第7章 静かでないフェルメール
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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フェルメールはなぜ"静謐の画家"と呼ばれるのか。
分析の対象として
《窓辺で手紙を読む女》
《牛乳を注ぐ女》
《窓辺で水差しを持つ女》
《青衣の女》
《真珠の耳飾りの少女》
《天秤を持つ女》
《真珠の首飾り》
といった作品がメインで取り上げられています。
フェルメールの絵画が静かに見えるということについて、色、構図、描かれた女性、意味(寓意)、光を手掛かりにしながら、著者なりの仮説が提示されます。
様々な要素からの解説は、フェルメールにとどまらず、あらゆる絵画を見る時の参考になるものもあり、鑑賞の一助となる本かと思います。
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(2016.02.11読了)(2014.07.18購入)
1月に、「フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展」でフェルメールの「水差しを持つ女」(メトロポリタン美術館)を見たので、手元にあったこの本を読んでみました。展覧会場に展示してあるフェルメールの絵は、「水差しを持つ女」ただ1点のみです。
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フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展
主催:朝日新聞社
場所:森アーツセンターギャラリー
会期:2016年1月14日~3月31日
観覧料:¥1,600
本展覧会では、60点の作品を通して、オランダ黄金時代と当時活躍した画家たちを紹介します。フェルメール、レンブラント、フランス・ハルスなど、黄金時代を彩った巨匠たちの作品によって、当時の文化と人々の生活がよみがえります。
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フェルメールの絵画は、わかる範囲で、振り返ると、下記のような展覧会で、少しずつ見てきました。10数点見ているようです。
1984年「マウリッツハイス王立美術館展」国立西洋美術館
③ディアナとニンフたち(1655〜1656年頃)マウリッツハイス美術館
22真珠の耳飾の少女(青いターバンの少女)(1665年頃) - マウリッツハイス美術館
2000年「レンブラント、フェルメールとその時代展」国立西洋美術館
31恋文(1669〜1670年頃)アムステルダム国立美術館
2004年「栄光のオランダ・フランドル絵画展」東京都美術館
25絵画芸術(1666-1667頃) -ウィーン 美術史美術館
2005年「ドレスデン美術館展 世界を映す鏡」国立西洋美術館
⑥窓辺で手紙を読む女(1657年頃)-アルテ・マイスター絵画館
2007年「フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展」国立新美術館
⑨牛乳を注ぐ女(1658-1660年頃) - アムステルダム国立美術館
2008年「フェルメール展 -光の天才画家とデルフトの巨匠たち-」東京都美術館
①マリアとマルタの家のキリスト(1654-1655頃) - スコットランド国立美術館
③ディアナとニンフたち(1655〜1656年頃)マウリッツハイス美術館
⑦小路(1658年頃) - アムステルダム国立美術館
⑪ワイングラスを持つ娘(1659〜1660年頃)ヘルツォーク・アントン・ウルリッヒ美術館
⑱リュートを調弦する女(1664年頃) - メトロポリタン美術館
33手紙を書く婦人と召使(1670年) - アイルランド国立絵画館
37ヴァージナルの前に座る若い女(1670年)個人蔵
2009年「ルーヴル美術館展 -17世紀ヨーロッパ絵画-」国立西洋美術館
30レースを編む女(1669-1670年頃) - ルーヴル美術館
2011年「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」 Bunkamuraザ・ミュージアム
29地理学者(1669年頃) - シュテーデル美術館
2012年「フェルメールからのラブレター展」Bunkamuraザ・ミュージアム
⑮手紙を読む青衣の女(1663〜1664年頃)アムステルダム国立美術館
⑳手紙を書く女(1665-1666年頃) - ワシントン・ナショナル・ギャラリー
33手紙を書く婦人と召使(1670年) - アイルランド国立絵画館
2016年「フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展」森アーツセンターギャラリー
���水差しを持つ女(1664〜1665年頃)メトロポリタン美術館
一番印象に残るのは、「真珠の耳飾の少女(青いターバンの少女)」でしょうね。今後みたいのは、「デルフト眺望」です。
この本のテーマは、題名通りで、フェルメールの代表作とされる作品から受ける印象が、「静けさ」であるのは、なぜなのか? という理由を解明しようというものです。
その代表作は、カラーの口絵として、掲載されています。その他のフェルメールの作品とされているものは、モノクロ写真ではありますが、収録されていますので、フェルメールの作品の図録代わりとしても利用できます。
【目次】
はじめに
第一章 フェルメールブルー
第二章 構図と素材の秘密
第三章 女たちの姿態
第四章 剥奪される意味
第五章 穏やかな光、霞む空気
第六章 静けさを描くことの理由
第七章 静かでないフェルメール
あとがき
参考文献・引用文献一覧
●ラピスラズリ(26頁)
かつてヨーロッパで使われたラピスラズリはアフガニスタン産だったと考えられている。ラピスとは「石」を表すラテン語、ラズリとは「空」を意味するペルシア語だったのはそのためで、したがって、ラピスラズリとはまさしく「天空の石」なのである。天空の石ラピスラズリの輸送にはもっぱら地球海航路が使われた。それでラピスラズリから得られた青い顔料はウルトラマリンブルー、すなわち「海を越えてくる青」と名づけられた。
●先行する画家(60頁)
フェルメールが、部屋の中で一人あるいは少数の人物がひそやかに何かをしている静かな風俗画を描くようになったのは、まったくのオリジナルではないと考えられている。先行する画家がいて、いわば、その真似をしているわけだが、その先行していた画家、すなわちフェルメールが倣った画家にヘーラルト・テル・ボルフとピーテル・デ・ホーホがいる。
テル・ボルフはフェルメールより15歳年上で、デ・ホーホは三つ上であった
●現実を忠実に(72頁)
テル・ボルフやデ・ホーホには、主題は別として描き方においては、できるだけ現実を忠実に再現描写しようとする意図が見受けられる。
●静謐感(78頁)
フェルメールは一つの作品を描くにあたって素材を削除する修整をたびたび施したが、時系列的に見ても素材が削除あるいは整理されて行っていることがわかる。これは、前章で取り上げた色の変化と同じ過程を思わせる。初期には多くの色が使われていたのに、≪青衣の女≫にいたるとわずか数色に減ったのと同じように、素材の数も時間が経つにつれて少なくなっている。つまり、色も素材も減っているのだ。そうなれば静謐感が高まるのは理の当然である。
●創造画家へ(87頁)
フェルメールは、マーケットの将来性を見越して宗教がかから風俗画化へ転身していったとはよくいわれるところだが、筆者には、ただ単に題材を変えジャンルを変えたというだけではなく、より深い部分では現実の再現描写に飽き足らない、独自の「絵画世界」創造へと歩みだしたということが転身の核心であり、それとともに、いわば、〝写実画家〟から〝創造画家〟へと変貌していったというのがことの本質に思える。
●ミニマルアート(123頁)
ミニマルアートの本来の意義は、どこまで意味性を削ぎ落してアートとして成立可能かを極限まで追求する点にある。
他の何ものにも頼らずアートそれ自体で成り立つ純粋なアートへの求道である。
●フェルメールの子ども(184頁)
フェルメールと妻カタリーナのあいだには多くの子どもが生まれている。フェルメールには14人の子どもがいたといわれている。子どものうち4人は乳幼児のあいだに死亡し、あとは育ったらしい。
☆関連図書(既読)
「フェルメール」黒江光彦著、新潮美術文庫、1975.04.25
「フェルメール光の王国」福岡伸一著、木楽舎、2011.08.01
「繁栄と衰退と」岡崎久彦著、文芸春秋、1991.06.30
「絵画を読む」若桑みどり著、日本放送出版協会、1992.10.01
(2016年2月12日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
レンブラントやゴッホと並び、いまやオランダを代表する画家になったフェルメール。彼には“静謐の画家”という異名が冠せられている。しかし、「なぜフェルメールの絵が静かなのか」という問題が真正面から語られたことはなく、専門書にもその理由は記されていない。本書は、フェルメールの絵における色彩や構図、モチーフ、光などへの考察をはじめ、一七世紀オランダの時代背景や精神文化に至るまでを分析し、フェルメールの静けさの謎に迫る。
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何でもそうですが、絵画鑑賞には周辺知識が必須。それが絶対的に不足していると痛感しましたわ。
それにしてもデルフト眺望はmasterpieceと呼ぶに相応しい。
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今や日本人のとっても好きな画家のトップクラスに入るフェルメール作品について、「静かさ」という切り口で問いかけていく、中々に面白い企画である。
使用された素材(アズライトよりも鮮やかなラピスラズリ(ウルトラマリンブルー)、構図、削除・抑制のよる描き方、光そのものの捉え方、その光が当時のオランダ特有といえるような光であるなどなど非常に興味深い。
それにしても筆者は勿論調べているのであろうが、フェルメール作品の静謐さのピークというのを『青衣の女』と捉えているように思える。
フェルメール作品を全て見たことはないが、成程その静謐さが凋落していく作品にあって、フェルメールの置かれた環境や体調など大いに影響があるに違いないものと納得してしまう。
そういうことならば、画家という者は常に描いていないといけないということを、いや画家に限らず芸術に関わる者は、そのものに対して真摯に向き合わなければならないということを想像させられる。
この著書でフェルメール作品自身が、まるで一つのあるべき芸術へと昇華されるに至る、静謐な光明を辿っているみたいであり、それは儚く脆いものであること、しかしその先にある現代作品の革新的で普遍的な表現であることを思わせられる。