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不思議と驚きに満ちた食の世界
2008/02/27 22:55
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る
発酵・醸造学の専門家であり食文化や奇食の大家でもある著者が、独自の視点に基づき、7つの分野から食の世界遺産を選ぶ。
○ 発酵の遺産
例:フグ卵巣の毒抜き、酸茎(すぐき)、豆腐よう、熟鮨(なれずし)
○ 調理の遺産
例:日本粥と日本雑炊、握り飯、干し椎茸、沖縄の「いらぶー汁」
○ 食材の遺産
例:蘇鉄味噌、オントゥレパカム、トンブリ、海鞘料理(ほやりょうり)
○ 調味の遺産
例:山葵、山椒、ジャパニーズ・ウスターソース
○ 保存・殺菌の遺産
例:火入れ、灰干しわかめ、凍み食(しみしょく)
○ 教えの遺産
例:酒道、茶道
○ 酒の遺産
例:粕取焼酎(かすとりしょうちゅう)、灰持酒(あくもちざけ)
食べ物や食文化には、多くの不思議と驚きがある。
世の中には「いったい誰が食べようなどと考えついたのいか」と、それを見た最初の人はおよそ食材にしようとは思わなかったであろうモノがたくさんある。その何割かは、おそらく作物や獲物が不足して飢餓状態になった人たちが、なんとか食べられるものを求めて工夫をした結果といえるかもしれない。だがそうではないものもある。
この本の冒頭を飾る、本来なら猛毒の「フグ卵巣」。これを3〜4年かけて丁寧に毒抜きしてまで食べようとした人の意図は、どこにあったのか。量的にも質的にも、廃棄がもったいないとか、どうしても食べねばならない部位というわけではなさそうに思う。いっちょ食べられるかどうか試してみようという、研究心のようなものと気の長さとで、工夫が重ねられてきたのだろう。
方法が確立されるまでは、未完成品で人が命を落とすことがあったかもしれない。だがそれを乗り越えて、いまフグの卵巣は珍味として存在している。
また、P.92の「いらぶー汁」だが、これは「えらぶうみへび」の薫製をぶつ切りにして煮こんだ濃厚なスープに昆布と豚足を入れてさらに煮こんだものだそうだ。猛毒を持ち海のコブラとも呼ばれ、神からの恵みとして神聖視されてきたこのウミヘビを、人はたいせつに食してきた。
毒があるものを危険を冒してまで捕獲しスープにする。せっかくの恵みだからたいせつに食す——。毒もない楽なものをさくさくっと捕獲して食べればいいのにと考えるのは現代人、都会人の浅い考えかもしれない。本来、人は命を奪って自分の身にとりいれながら「いただきます」とつぶやいてきた。あなたの命をいただきます、そしてわたしの身にとりいれます、と。食べるということは、それほど真剣なことなのだ。
改めて日本人に生まれたことの幸せを実感できる作品でした。
2019/08/27 11:48
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
改めて日本人に生まれたことの幸せを実感できる作品でした。日本の食を、「発酵」、「調理」、「食材」、「調味」、「保存・殺菌」、「教え」、「酒」の7項目に分けて、その代表的なものを例示しつつ、「世界遺産」とすべき理由を簡潔にまとめている。よくぞこれだけ調べ上げたものだと驚くとともに、先人たちの創意・工夫の素晴らしさに感動します。日本文化が大々的に見直され、その素晴らしさが様々な分野で再認識されるなか、生活の基盤である「食」の分野でもその素晴らしさが再評価されるのは実に嬉しい限りである。特に和食ファンの私にとっては、誇りでもある。
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