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それは「ゲームとは何か」という問いかけから始まる。
2016/08/24 02:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジャーナリストである“わたし”による、囲碁・チェッカー・麻雀・チャトランガ(古代チェス)・将棋という盤上で行われる5つのゲームと、そのゲームにまつわる人間のエピソード集と思いきや、いつしか世界の果てをも描きだしてしまう連作短編集。
表題作『盤上の夜』は第1回創元SF短編賞・山田正紀賞受賞作。 だから最初は連作にする意識はなかったのかも。 それくらい主に語られる女性棋士の設定はぶっ飛んでいる。でもそれを淡々と書きつづる姿勢と、これが書かれたのは結構先の未来なのだろうと感じさせる雰囲気、それでいてハードSFではないというポイントにしびれる。 え、これ、直木賞候補なの? 芥川賞でもいいんじゃないの?
『人間の王』は連作にすることを意識して、“わたし”のジャーナリスト性を強調しつつ<完全解が見つかってしまった対戦ゲーム>について語られる。 実は、対談相手はその人ではないのだが、“その人”についてぐんぐん浮かび上がるすごさがあり。 多分この本の中でいちばんわかりやすい作品ではないかと。
あ、ちなみに私はボードゲームをほとんどしませんのでルールはわかりません。
それでも問題なく、この本を読めました。
『清められた卓』は麻雀が題材。 多分、ルールがわかっていたらもっと面白いんだろうけど、わからなくても心理戦の駆け引きはとても面白い。 将棋や碁と違い運に左右される麻雀というゲームは賭博性もありいろんな意味でイメージがよくない部分もあるが、そんなイメージも綺麗にひっくり返し(勿論、心理戦の過程では人間のドロドロしたところもしっかり描写されますが)、そしてラストでも思いもしない方向にひっくり返されてしまった。
次の『象を飛ばした王子』はちょっと異色で、“わたし”が直接会って話をした相手ではなく資料から掘り起こした話をまとめたものになる。 <ゲームの誕生>について語りつつ、<人間とは何か>に踏み込む。 ゲームを作ったのが人間ならば、ゲームを解くことで人間の真理に辿り着けるのか、更に人間を超えることができるのかという欲望の存在に気づかされた。
だから人はゲームに夢中になるのだろうか?
ゲームに手を出さない人は、その果てには身を滅ぼすしかなくなることを無意識のうちに感じ取っているからなのか。
私がいちばんどよめいたのはその次の『千年の虚空』だった(明らかにこれに影響を受けたっぽい夢まで見てしまった)。 これは将棋を扱いつつ<ゲームを殺すゲーム>という存在についての言及。 悪夢のようでいて、どこかイノセンスすら漂う感じにすっかりやられちゃいました。
最後の『原爆の局』は再び囲碁で、『盤上の夜』の登場人物たちのその後(『清められた卓』の登場人物の一人もゲスト出演)を描くことで連作感がさらに強まって。
狭い盤に向き合いながら世界と対峙し、それで世界を変えようとする人々の壮大さと、そんな天才たちに近づきたいと願いながらも決して同じ景色は見られないとわかっている凡人代表の“わたし”の哀しさにも胸がつまったり。 それでも、その場に立ち会えた幸運をかみしめることはできるのかもしれない。 それに凡人には<伝える>という役割がある。
だから私は読者として、“わたし”の気持ちを共有した。
本を閉じるとき、ふう、と息をはいてしまう。
なんかすごいものを読んじゃったよ、な気持ち。 大長編じゃなくて、短編集でこんなことされてしまうと手も足も出ない・・・。(2014年4月読了)
おもしろかった!
2015/08/31 00:39
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投稿者:nazu - この投稿者のレビュー一覧を見る
盤上で行われるゲームをテーマにした作品集。自分自身では、どのゲームもやったことがないけれど、臨場感があってぐいぐい引き込まれます。
当たり!
2014/09/13 02:02
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投稿者:Zero - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者は当たりです。世界観がすばらしい!
友情の連鎖を繋ぐ人々
2014/11/14 22:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
囲碁、チェッカー、麻雀、象棋、将棋、いわゆるボードゲーム、マインドスポーツ、麻雀以外は完全情報ゼロ和ゲームであり、いずれも頂点においては天才と呼ばれる人々が、人間の限界に挑むように競っているものだ。一方でそれらのゲームはコンピュータが人間に勝つという可能性も現実になりつつある。
そういう世界においてなお多くの人々が夢中になるのか、その意義はなんなのかを問い直そうという意欲を持った連作集ではないだろうか。
それぞれに頂点の座たる能力を究めた人々は、超人的な思考力を常時フル回転させながら磨いてきた。それがある限界を越えると人間的に別の欠損を生じてしまう、あるいは欠損の代償として能力を得るという設定をすることで、過酷さと超人性を表している。そしてそこまで辿り着いた者がなお求めようとするのが、そのゲームの存在価値なのだ。一人の天才にとっての価値だけでなく、知性の極限を目にしたことによって知り得ること、命を削って切り開いた境地において見える景色の中に、人類にとっての意味がそこにあるのではないかと問いかけようとしている。
「原爆の局」は、広島に原爆が投下された時に郊外で行われた本因坊戦という実際にあった出来事を題材にしており、爆風で碁盤が吹き飛んだ後も碁盤を戻して対局を続けた両対局者は、その後橋本は関西棋院を設立し、岩本は私費を投じてヨーロッパ、北米、南米と世界各地に囲碁会館を設立、両者とも囲碁の発展に生涯を捧げた。まさに盤上、番外とも鬼だったこの二人から、現代の天才棋士もその魂を受け継ごうとする。
「象を飛ばした王子」は傾向の変わった作品で、将棋やチェスの源流となったと言われるインドのゲーム、チャトランガを発明した男の物語だが、国々が戦乱におののく中でシャカの血を引く彼はその思想を違う形で表そうとしていたのだという。これはかなり大胆なフィクションだが、人間の知性が平和を志向するように働かせたいという思いが、古代から現代にまで通ずるという考えには共感できる。
現にそういったゲーム愛好者達は、為政者やマスメディアが罵り合っている状況でも、抽象的なナショナリズムやイデオロギーを尻目に、国境を越えて、あるいはネットを挟んで、友情を交わしている。それが庶民にとっての、平和というものの一つの形であり、本書に登場する天才達一人一人のドラマチックな生き様の中に、その歴史は正しく継承されている。さらに言えば才能よりも、どんな苦境にも屈しない彼らの意思こそが、一つの道を指し示しているだろう。
非常に奥が深い小説です
2017/05/19 10:01
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投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
SF大賞受賞作品でありながら、直木賞候補にもなった短編集。
一度読んだだけでは、すべてを理解しきれないくらい奥が深い作品だと思いました。
語りだそうと思えば、いくらでも語れるとは思いますが、ここにはテーマの一端を書こうと思います。
ゲームとは何か? なぜそれが生まれ、なぜ必要とされたのか? ゲーム終わりはあるのか? 盤上において発揮される人智に果てはあるのか?
これらのような野心的な問題の答えを、導き出そうとした作品なのだと思います。
将棋や囲碁の世界で、人間に匹敵する、あるいは彼らをも圧倒するAI(人工知能)が開発されだした現在において非常にタイムリーな小説だと思います。
ただ一つ残念なのは、将棋や囲碁などのテーブルゲームについてリアルに描写しています。これらのゲームに馴染みがある人には面白いと思いますが、そうではない人には読んでいてもつまらないかもしれません。
これはSF作品か?
2018/11/22 14:32
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
一見ゲーム 勝負事を扱った作品のように見えて、一種の超感覚 超能力を扱った作品。科学知識ガチガチでなくても これもSFなのだと納得してしまった。
特に表題作の盤上の夜は、起承転結が明快でなく、時系列もバラバラなエピソードの羅列であるが、文中からうすら寒いものが立ち上ってくるような印象的な作品である。
とても面白く読ませていただきました
2017/05/03 17:35
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投稿者:ゆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に面白かったですよ。お勧めです。