投稿元:
レビューを見る
南川外科産婦人科病院の院長である千代子の下に脅迫状が届く。差出人は阿相。
警察に届ける事を躊躇った千代子は梶に呼び出しの現場である竜ヶ崎への同行を乞う。
台風の為、足止めを食らった梶・千代子・福田女医は梶の好意で毎朝が所有する別荘へ宿泊する事となる。しかし、堤防決壊で救助を待つ最中、千代子はその濁流へと足を滑らせ、梶の必死の救出にもかかわらず命を落とした。
そして、犯人の魔の手は福田女医にも忍び寄る。
ネズミの玩具・ウチワサボテン・玄米粥は一体何を表したものなのか?
そして、犯人は…………。
最終章である「虹色の哲学」は印刷の色が違う。それだけ作者が大事にしたい結末であるし、この章はいわゆる種明かしの部分。
確かに、理にかなった解明であるが、後味がよろしくない。
こういう趣向は今まで何度も読んだが、やっぱり好きくない。なんだかなぁ……と思ってしまうな。しかし、ここまで……というか、本当に最後の最後まで読んで、初めて「水」「火」「空」は三部作だと納得する。そこら辺りの奥の深さは流石だろう。
ただ、思いのほか、キーワードの押しが弱い感じを受けた。あれほど何度も「ネズミ」「サボテン」の異常さを書いてるワリには、別にそんなの無くても……という気がする。案外、あっさりでは……?と少々物足りない。
ちょっと残念なのは、中巻で全く関係ない事件を書き上げて死体発見へと繋げるのに、肝心の阿相の殺害状況が克明でない。これは、しかたがないといえばしかたがないが……詳細を入れるには無理があるし、物語の途中に入れると完全にネタバレになるもんな。死人に口無しってのが妥当なんでしょうな。