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読了:2018/7/11
タイトルから母乳礼賛系かと思ったが、意外とニュートラルだった。
同じ産院の助産師でも人によって言うことが違う、出産直後のつらい体のことを理解してもらえないままとてつもない努力を強いられる、母乳で育てたいという希望を「こだわり」と切って捨てられる、など産後にありがちな周囲の不適切な対応についてきちんと書かれていた。
あらかじめ知っておきたかった…。
母乳礼賛派はたいがい助産師絶対主義で、言う通りに努力すればなんとかできる、なんとかできないのは努力が足りない証拠、という。
完ミ派はたいがい「ミルクで育てたことで私は余裕ある適切な育児ができた」「免疫がどうとか言うけどうちの子は風邪も引かず元気(←統計学を分かってない…)」が伝家の宝刀で、母乳で育てたいという希望を持ちながらうまくいかず苦労しているひとを「母乳にこだわって赤ちゃんに余裕を持って接せられない母親失格者」と見下す。
どちらも母親を傷つけ、ひいては赤ちゃんをも傷つける言説なのに、どちらも自分は赤ちゃんのために正しいことをしていると信じている。n=1の結果を全人類に当てはまると思い他人に押し付けることの危険さを認識していない。おそらく、「自分のしてきたやり方は正しい」と信じることが彼女らのアイデンティティの拠り所となっているのだろう。
母乳とミルクは同じものではない。同じものではないからメリット・デメリットも当然異なる。それらのメリットデメリットからどれに価値をおいて選択するか、そんなのは個人の価値観次第なので、「正しい」ものなど存在しない。
だから自分のやり方に固執し、人に押し付け、他のやり方を批判し排斥しようとする人のアドバイスなど聞く必要はない。
今だったらそれが分かるけれど、マタニティブルー真っ盛りの頃は「全部私が悪い」モードだし、うつの症状で思考回路もバラバラになっていて無理だった。
わざわざ人に母乳相談するような人は真面目で努力型で何かにつけ自分が悪いのだと考えやすい人が多いだろうから、母乳礼賛派・完ミ派が上から目線でお説教しやすく、さらに彼女らがのさばる要因になっていそうだ。
この本のように「絶対に正しいやり方などない」「どのような育て方を選ぼうとも母親が悪いなどということは絶対にない」というスタンスの助産師に当時出会えていればなぁと思わずにいられない。