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「場という物理の考え方は、もっと簡単に学習できるものだ。少しは気楽に構えて、場の理論を学んでみてはどうだろうか?(中略)大学の物理学コースでは、まず学部1・2年で古典場を習い、続いて量子力学を学ぶ。その後でようやく量子場へと習い進むのが通例だけれども、それは4年生か大学院生になってからのことになる。この順番が原因で、大学卒業までの間に『量子場の理論まで到達できなかった』という人も多い。順番を全部ひっくり返して、学部1年生から『量子場の理論』に慣れ親しんでもらうことは不可能だろうか?いや、最初から量子場の理論を学ぶ方が、誤解を招く危険が少ない。この点を理解してもらう目的でこの本をまとめた。(まえがきより)」
量子力学を学んだ後で量子場の理論に進むのが「表の道」だとすれば、最初から場の理論を導入する「裏の道」を目指すのが本書である。僕は既に量子力学を学んでいるので、正直なところ、この「裏の道」が学習の順序として優れているのかどうかはよく分からない。しかし、本書のように量子力学の深い知識を必要とせずとも場の理論に到達できるならそれは素晴らしいことと思うし、また、「表の道」に沿って歩いてきた人にとっても、本書を読むことで第二量子化のエッセンスを掴む大きな助けになるのは間違いない。
第5章で導入した、粒子を一つ隣の格子点に移す演算子から、量子力学でよく見るハミルトニアンの運動エネルギー項が導き出されたのには驚いたのだが、よく考えるとこれは自然なことである。つまり、自由粒子が等速直線運動しているという現象を、場の理論の観点から見ると、位置xにあった粒子が「消滅」し、位置x+dx=x+(p/m)dt に「生成」されるという描像になるわけである。いまの場合、エネルギー固有状態は運動量が確定している状態であるから、不確定性原理より位置の不確定さは無限大で、実際5章で与えたエネルギー固有状態が(位相は違うが)すべての格子点も同じ重みで重ね合わせた状態=平面波になっていることもやはり自然である。他の教科書(まぁイギカワイなのだが)で、ハミルトニアンの第二量子化における表示に生成演算子の微分が現れているのを見たが、その意味をようやく理解できた気がした。
0 場は変化の舞台
1 空間を格子に切って考える
2 生成・消滅演算子への第1歩
3 ブラの導入
4 状態の時間変化
5 飛び移る粒子
6 境界条件と直交系
7 連続な空間へ
8 無限に広い連続空間
9 波束の運動と古典力学
10 同じ種類の多粒子系 ボーズとフェルミ
11 波動関数の対称性
12 フェルミ・ディラック縮退
13 ボーズ粒子の集まり
14 コヒーレント状態と調和ポテンシャル
15 クーロン相互作用
16 場の方程式