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芝居をテーマにした幻想短編集。
単行本は1990年、前回の文庫版(集英社文庫)が1993年と、かなり前のことになるのだが、今読んでもまるで古さは感じられない。
芝居の裏側という、部外者にはちょっと想像し辛い場所を主な舞台としており、じわじわと現実を浸食するようなストーリーが展開する。最後のどんでん返しがどれも素晴らしい。
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“舞台”に纏わる7短編。帯にも裏表紙にも“ミステリー”と銘打っているけど、こういうのもミステリーと言うのかな?確かに最後に『あっ!』と思わせるのが多いけど。とは言えどの作品も幻想的で満足です。特に【紅地獄】が印象的でした。“情念”というと、つい女性のそれをイメージしてしまいますが、この男性の情念ったら女性を上回る凄まじさを感じます。ストーリーの表には全く出て来ないで裏面で息づく執念ったらすごい。でも全然忌まわしさを感じさせないのが凄過ぎです。
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短編集 7編収録
ミステリと言うか、ホラーと言うか
皆川さんは独特の世界観を持った方ですね。アタシが読んだ長編は濃厚でしたが、本書は短編ですし読みやすい思いました。それでもアタシは夜中に読了してから、違う本を何冊か読み、また本書を読みやっと今レビューを書く気になりました。本書は怖いです。色々な意味で怖い。なのにまた読んでしまう。アタシも囚われたようです。
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演劇をテーマにした短編集。
演劇と皆川博子なんて、相性が良すぎる。
この人の作品はいつも息が詰まる、いい意味で。
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芝居をめぐる、惹かれ期待する関係の短篇集。いじらしくて、ねじまがって、フェティッシュで、古臭くて。
短編の寄せ集めではなく撚り集めで物語が出来る。
決して「恋愛」ではないし、情愛が支配するわけではない。
欲望と怠惰と執着と希求。
純粋さよりも湛える深淵を愛す。
各編ごとに見ても仕方ないって途中までやって分かった。
各々登場人物の設定とかかれる内容は少しずれている気がする。勿論意味はあって必要な設定なんだけど、〇〇→△△となる記号ではなくて、〇〇からその人の印象と人生を推測しないと読みにくい。AパートとBパートの距離が遠い。
登場人物は等しく大きい得体のしれない(歴史を持つ)ものへの畏れを持ち取り憑かれた人たち。変わらないそれらに寄り添う(反抗しながらも?)しかない。
「化鳥」の杏二を彼はそうしたかったのだろう。「女でありながら女を超えたもの。人でありながら人を超えたもの。存在することに拠って観客を異界にひきいれるもの。」人でもなく神に近く、周囲すら巻き込んでしまう。ここにいる動けない「私」をつれだしてくれる何者か。なにか。
それに魅せられ続けた。
「薔薇忌」
祈り。自分の思いを次こそは次こそは・・・・叶わないで欲しい、かなって欲しい。自分を捉えて話さないものから必死に逃げようとし、しかし捉えられ続けたい。そんな感じ。
それをたんたんと。ひょうひょうとした女性がそんな執着を語るからいじらしい。
「祷鬼」
薔薇忌につづいて祈りについて。この流れはずるいと思った。祈ることの矛盾や無意味さ、その意味がみえる。
「紅地獄」
幼い好きと女性としてみてしまった。この合致はほんとうに怖いし、あり得ることだなあと思った。芝居や(続いてきた伝統ある)道具への畏れが書かれる。
「桔梗合戦」
得体のしれない母とそれを超える私。
多分違いはなにを失おうとしたか。
「化粧坂」
なまめかしい。ここに女装、女形への幼い思い出が残される。この体験を持って次編も読んでしまう、と罠だなと思う。
子供らしさと大人の世界。どちらもの貌をもつ彼。
「化鳥」
これか「化粧坂」が一番好き。
鳥は鳥のままでは、人は人のままでは、ただの凡夫なのだ。
芝居や舞台、身体表現に拠る芸術のある種の完成への遠さが現れている。
人は、やはり人である、と思う。
「翡翠忌」
「化鳥」とは一転。化け物が出てくる。と言っても年齢の話だが。彼女はひとを超えたことがあるのではないだろうか。
皆川博子、何冊か挫折してるけど、これは大丈夫だった。現代モノを何個かあさってみようかな。
ある意味で酷く、読みやすかった。
悪く言えば芳醇さは低い気もする。
そうとも思った。
情愛ではないと前に書いたけど、執着と言った感じには思わなかったし、すごく感情的でない印象を受けた。
すごく俯瞰された主人公が多かった。
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2/21 読了。
劇場は生と死のあわいにある場所なのかもしれない。役者はひとたび役の一生を生き、舞台上で死に絶えても、すぐに起きあがって楽屋口から現実の生へ戻っていく。生より濃い生と、死の幻想を、繰り返し垣間見ることのできる場所。それが劇場なのだとすれば、そこに人の情念が憑き、死してなお棲み続けてしまうのも当然だろう。
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初めましての作家さん。
90年代に出版されたものの復刻版のようです。
舞台に携わる者たちの妖しい短編集。
ミステリというよりは、幻想譚といった感じです。
でも短編集なのに、どれもこれもヤバイ。
舞台に携わる者達の話だから、どうしても妖しくなる。
だけど文章の持って行き方がヤバイ。
起承転結を当てはめるとするなら
起承~~~~転?結!!工エエェ(゚〇゚ ;)ェエエ工
って感じかなぁ~
最後の1ページで、一気に幻想に変化するというか・・・
こういうのは初体験です。
ヤバイです。面白かった。
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演劇に携わる人々を描いた短編集。内容は「演劇の話」と聞いて想像するものの斜め上を行く、皆川博子テイストの効いた独特なものばかり。役者だけでなく、プロデューサーや小道具製作者などの裏方にもスポットを当てている。面白かった!
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舞台に携わる人々を描いた短編7編。どれも妖しくて美しい幻想的な話ばかり。現代の話なのに、芝居を扱っているせいか、どこか時代がかった雰囲気をもつ不思議な世界観。
少し硬めの文体なので、慣れるまでは入り込みにくいとこもあるけれど、それが却って幻想的な雰囲気を際立たせている。
皆川作品は『開かせていただき光栄です』とその続編しか読んでないけど、この作品といい、気になってる『少年十字軍』といい、ジャンルの幅広さに驚く。
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舞台に秘められた男女の謎-妖しく華やかな幻想ミステリー。
舞台に関わる人々を描いた7つの短編集です。
ん・・・悪くないけど、良さもよくわからず。
服部まゆみ先生の作品が好きで、その帯などでよく目にするので、似ている世界観を期待して読んでみたのですが、似ていなくもないんだけど、ん・・・。よくわからない。
という曖昧な感想になってしまった。
つまらにってこともないのですが・・・どこか煮え切れない感じで、そこが良いのかな?
他の作品も読んでみようかと思います。
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七つの短編を収録した短編集。共通するのは舞台芸能。生と死の境が曖昧で、読んでいると地に足が着かないような、心許なくもあり、心地好くもある、まさに皆川作品といった感じ。情念を感じるのも好きです。楽しく読みました。
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舞台にまつわる人々の短編エピソード。死人が出てきて普通に会話していることが、舞台という特殊な空間とも相まって、現実離れした世界観の演出にもなっている。
舞台に魅入られて、いつまでもそこに留まり続けている人々の魂を眺めているのは、演劇や映画を観終わった後もしばらくその場から離れたくないような感覚に似ていて妙な放心感に包まれる。
いつしか自分も舞台の上で繰り広げられる物語に心を奪われて、そのまま永遠に引き摺り込まれてしまいそうな、そんな恐ろしさを秘めた作品。
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舞台にまつわる幻想短編集。全編通じて感じるのは、ぞわぞわと這い上がる恐怖といじらしいほどの美しさ。ラストに幻想小説ならではの強烈な結末が待っていたりするのも魂を揺さぶられます。一話ごとにどっぷりつかって、一編読み終わるごとに読み返したりして、読了まで何日もかけてしまいました。好みは「紅地獄」。紅の剥げがあんなにエロチックとは!「化粧坂」「化鳥」も後を引きます。自分が自分でないものになる舞台の世界は別の世界と重なっていてもおかしくないのかもしれません。皆川さんの耽美な世界を堪能しました。
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初めて読んだ皆川作品。衝撃を受けたが、著者の他作品を読んでいくうち、かなりライトなほうだと知った。皆川博子入門にいいかも。過激さは抑え目でただただ美しく、幻想的。
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面白かったです。
きらびやかですがその分影も多い、舞台芸能の世界。暗く、愛憎入り交じる濃密なお話たちでした。
特に「桔梗合戦」「化鳥」が好きでした。
「化鳥」はバンギャ心が疼きます…この気持ち、わかる。。嘗て心酔していた人の凋落を目の当たりにしたら……。
裏方さんに光が当たっている作品が多いのも面白かったです。こんなお仕事があったのだな。
舞台と幻想。堪能しました。