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下巻。
一気にストーリーが進み、次々と新しい展開が待っている。
SFではあるが、終盤はパニックものの映画を見ているような怒濤の展開に圧倒された。
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下巻の展開は、上巻を読み終えた時点での想定とは大きく異なるもので、これはかなりの衝撃だった。マリアとダラムが物語の主軸を担う点は上巻同様に変わらないが、その他の登場人物の物語はそれと交わることなく、並行して進んでいく。そしてより大きな問題が順列都市に出現し、その根本を揺るがす大転換がもたらされる。この意外性こそ、この小説が他の小説とは一線を画す点なのだろう。
認識により世界が変革されるという観念が、本書終盤の鍵となる。悪貨は良貨を駆逐するとは言い過ぎかもしれないが、真実もまた相対的なのだという主張が見え隠れする。これを読んで、以前に聞いた次の話を思い出した。それは経済活動に関する新しいモデルが提唱されると、経済全体がそのモデルに従い始めるという現象があるという話だ。現実は摩訶不思議である。
解説を読み、冒頭の詩がアナグラムとなっていることに気付かされた。曰く、アナグラムこそ塵理論の本質であり、この『順列都市』という小説もまた、塵理論の実践なのだと。世界と認識との関係は、上巻の感想でも述べた形式と内容との関係に当たるだろう。だとすれば、塵理論の言わんとすることは少し理解出来たのかもしれない。
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図書館で。そういえばイーガンの作品あまり読んでないし長門有希ちゃんの消失にも出てきたし…と借りてみました。ぶっちゃけよくわかりませんでした。
というかわからない、で投げちゃえば簡単なんだけどもう少し深く考えればわかるようなでもなんか感性に合わないからそこまで深く考えたくないしもういいか、というような。たとえば電子の世界に自分の意識…というか考え方をコピーして動かすことにしたら人の形を取らなくてもいいと思うし家とか世界というハコモノを用意しなくてももっと流動的な精神活動を飛躍できそうな形を選んでも良いと思う。たとえばですけれども電子の海を飛べるなら三次元ではなくもっと領域を使えるよう二次とか一次でも良いのではないだろうか?とか。自分の意識をコピーしたところでそれは果たして自分だろうか?とか。色々と面白い問題提起だな、とは思いましたがお話自体はイマイチよくわかりませんでした。
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1994年発表、グレッグ・イーガン著。ソフトウェア化された意識〈コピー〉が一般化された世界。富豪のコピー達に、宇宙が消失しようとも永遠に生きられる方法を提示する男。N次元オートマトンを駆使した、膨張し続けるTVC宇宙(エリュシオン)内に、コピー達と彼らの住む街〈順列都市〉を作り、さらに簡略化された物理法則を持つオートヴァ―ス宇宙を作る。やがてオートヴァ―ス宇宙側(そこに住む知的生命体、ランバート人)から、TVC宇宙への浸食(より高次の万物理論の暗示)が起こり始める。
久しぶりのイーガンだったが、やはり一筋縄には理解できない。依然読んだ『ディアスポラ』以上に難しいと感じた。おそらく難解な部分そのものが、本小説の核だからだろう(『ディアスポラ』では難解さは味付けのように感じたのだが)。
コピーという概念自体は使い古されたテーマだろうが、物語前半の経済的な制約やオートヴァ―スについての実験のリアリティー、数学的知識(塵理論と発進の原理)、コンピューターやセルオートマトンなど科学的知識を駆使して独特な仮想世界を生み出すあたり、とても新鮮だった。不死の概念を塗り替える思想はおもしろいし、何より最後の方のオートヴァ―ス側からの浸食がスリリングだった。別の物理法則をもった宇宙同士がぶつかり合うという話は、我々人間の科学的進展もまたランバート人のような過程を進んでいることを暗示しているのだろう。神の不在(本作ではランバート人にとってのエリュシオン人の不在)、神すら包括されている高次の物理法則。興味深い。古くからある、普遍的なテーマだ。さらに物語の裏に流れているであろう、数学の絶対視(TVC宇宙もオートヴァ―ス宇宙も数学の基盤からは逃れてはいない。どちらも数学に比べれば不安定なのだ)。以前から個人的に考えてきたことだったので、何だかイーガンに共感できてホッとした。
本作を読むといろいろと勉強したくなってくる。数学、意識についての哲学、コンピューター工学。特にセルオートマトンについては非常に興味が湧いた。
気になった点が二つ。一つは量子力学について。前半部分で、現実に比べてオートヴァ―ス内で突然変異が起こりにくい理由として登場したので、後半に重要な役割を担うと期待していたのだが、そんなことはなかった。もう一つはN次元オートマトンの作り方。本小説における一番の重要な装置だと思うのだが(これがないと宇宙が作れない)、ただ開発されたというだけで何の説明もない。もう少し詳しく説明してほしかった。
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途中内容を理解するのに諦めるシーンも多い難解な内容だったが、奥深く壮大なスケールで描かれる宇宙創世の話はさすがイーガンといったところ。
エピローグで描かれた現実世界のマリアの姿の物悲しさが後を引いた……
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分かりにくいがその世界に入れば第一部はなかなかいい
表紙 5点小阪 淳 山岸 真訳
展開 7点1994年著作
文章 6点
内容 725点
合計 743点
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1994年に書かれた作品
この作者の作品は多くがそうなのだけれど
なかでもまっすぐに題材が大掛かりなものであるだけに
既に古典殿堂の趣き
あるいはクラシックという日本語であらわされるようなそれは
サイエンスでファンタジーなフィクション
カガクで想像豊かな物語として奥深い
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宇宙や生物を取り扱いつつ、話の軸はあくまで電脳であり、その大風呂敷の上で命を説くような文句なしのSF超大作だった。
物語の終盤は夢中になって一気読みできた。
マリアが長い眠りから目覚めてからの没入感がすごかった。エシュリオン vs ランバートの構図はさながらアクションサスペンス映画のようだった。
人間である自分にとって、ランバート人の理解できないほどの合理性はかなりエイリアン感があって良かった。
でも、やっぱりすごく難解だった…。
塵理論って結局なんだったんだろう。ハードSFを読むと数学や物理学をきちんと勉強したくなるw
トマスやビーとケイトのパートはよく分からないままさらりと読んでしまったな。。。
それでも白熱して楽しめてしまうのがグレッグ・イーガンの凄いところと言えば凄いところなんだけど。
もし再読することがあるなら、解説サイト?等を参照しながら読みたい。
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単純セルで形成された秩序と法則が、仮想世界の生き物によって乱され崩壊していく。
正直23回失敗したとか失敗と分かっている世界だの、言っている意味と理屈がよく理解できなかった。
ピーとケイトの数千年に1回の計算、外界から切り離され保たれる主観と流れていく「実世界時間」。圧倒的なスケールでこの中で1番好きなカップル。
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オートヴァースをはじめ、話が難解で理解しきれない部分も多かったが、塵理論などはわからないなりに(解釈が間違ってそうだが)面白かった。塵のように散らばる要素を認識したものが世界であり、時間というものも、人間の勝手な認識の仕方に過ぎない、という感じ...?
終盤の、ランバート人が独自に納得のいく歴史を作りそれが真実になる、というあたりが特に面白かった。人類が今正しいと信じている歴史も、捏造かもしれないと仄めかすようでもある。
同じイーガンだと、「宇宙消失」のほうがとっつきやすく熱中して読めたので、その意味で⭐️3にした。
読みながら、デッド・チャンの「あなたの人生の物語」やリングシリーズの「ループ」を連想した。
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現在の統計的な手法で物事を類推していくAIではなくて、完全に自律思考ができるAIが生まれたらどうなるのか、想像するのが恐ろしくなる作品。特にラストの辺りは…。読んだのは5年くらい前でしたが、今読み直すとまた別の感想を持つだろうなと思います。この本の初版が1994年というのにも、とてもびっくりです。
コピーの話を見ていると自己とは何だろうかとも思いました。
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2022-08-08
読んでいたと思ってたけど、なぜか読み逃してた。23年積んでた(笑)
ソフトウェア知性について「ディアスポラ」に比べると否定的な文脈が強い感じ。そこは「ゼンデギ」に近いか。ファーストコンタクトの相手の描写は非常に限定的。エイリアンの側を描くとどうしても擬人化せざるを得ないからか。
そして、結局はアイデンティティの物語。ほぼ全編その、思弁に費やされていると言ってもいいくらい。
なんだかすぐに再読したくなる。
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SF的アイデアの宝庫。
科学的というよりは形而上学的に難解であり、登場人物の感覚や推論を理解しながら読むのが困難。
人間の意識をコンピューター上にコピーするという、ありふれた出発点からは想像もつかないような展開と着地。