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文庫になったので購入してしまいました。
旅先で。
しかし、高橋源一郎のあとがきがいただけない。
折角の本なのに 代表する作家をあげるが、果たしてそれが「代表」などと少なくとも私世代は思わないだろう。
かなりぶれている人の 印象が否めない。
本が良いだけに、このあとがきは残念だ。
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画家というのは変わった人が多く、それ故に数奇な生涯を送る人が多い。
昔、ゴヤを主人公にした映画を見たことがあるが、内容をほとんど覚えていない。ただ、その生涯に興味を持って、小説にした人がいるのは事実のようだ。
著者は、ゴヤという人物の背景にあるスペインを描く。
当時、スペインという国はヨーロッパでは後進国だったようだ。国家とは呼べない単なる地域だったかもしれない。貧しい地域だったことは間違いない。
著者が描くゴヤという人物もあまり付き合いたくない人物だ。身勝手で、現生の出世欲が強い人物だ。こういう人物を著者が描いてみようと思った理由がよく分からない。その理由は、次巻以降で解き明かされるかもしれない。しかし、次巻を読むのは少し後にしたい。
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一巻では、なかなかゴヤは仕事をしてくれません 。
なので、ゴヤ自身よりもスペインやヨーロッパに関する論考に紙幅を割いています。
スペインって……おもしろいなぁ。
二巻購入は……考え中。今読んでるのが終わってからかな。
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たまたまこの夏、NHKの「あの人に会いたい」という短い番組で、堀田善衛の肉声を聞く機会があったのですが、1998年に80歳で亡くなったはずですから、本来は高校生のころにあんなにいろんな講演会や座談会や討論会を聞きに回った私が、彼の声を知らないはずがないのですが、まったく記憶にありません。
気になるいま現在生きて活動する作家や思想家には、なるべく会って話を聞いておくこと。遠く離れたところからでもいいけれど、出来れば面と向かって質問なり質疑応答をして、彼や彼女の肉声から発せられた言葉をその内実に取り込んでより鮮明なものにすること。そうすれば、自分の頓珍漢な頭にも、少しは偉大な思慮の万分の一でも沁み通るかもしれない。
そんなことを勝手に思い込むようになったのは、父の高校生のときの友人の話を聞いてからです。
その人は、学業全般は成績も悪く頭のよくない劣等生という感じだったそうですが、何故か、こと数学となると現代数学の最新理論とかも独学で勉強していて、よく授業中などは先生を煙に巻いていたそうです。
ただ、どちらかというと厭世的で父などはいつ自殺するかわからないといって心配していたそうですが、あるとき思い立って、当時まだご存命だった数学者の岡潔に会いにいって話をしようということを提案したそうです。
このままでは落第もしかねなく、一生在野で趣味の数学をこねくり回すには惜しい人物とでも思ったのでしょう。その頃、数学だけではなく仏教にも造詣が深い現代の知性といわれる岡潔に会うことで、何らかの影響を受け身の回りの変化があるかも知れないと考えたのは確かなようです。
驚くことに、なんとその友人は岡潔の専門の多変数解析函数論や彼の考案した不定域イデアルも知っていて、父の策略などそっちのけで、一も二もなく喜んで会いに行ったそうです。
その結果は、見事に当たりました。ほとんどオール1の成績では大学進学もままならないことを知り、一年に満たない猛勉強の末に京大理学部に進学し数学者の道を歩んだそうです。
ほら、書物だけで著者に接しているのと違って、会うと何かが変わってくるでしょう。・・・少し短絡的ですが。
それはともかく、堀田善衛が1977年に書いたこの本は、単にゴヤだけでなく、ゴヤを通してスペインいやヨーロッパ全体を、キリスト教文化の奥底までを透徹した眼で凝視して描いた問題作です。
確かに信じられるのは、塩野七生のややプラグマティックな(本質的なものは違いますが、そういう傾向に喧伝されすぎているきらいがあります)視点と異なる、もっとより根源的な歴史を見据えた成熟した眼差しです。
この本を読み返すことで、私たちは未だ解決できないでいる、人間の関係性それに個人のこころの問題の糸口をつかめるかもしれません。
いやいや、そんなふうな参考書めいた読み方じゃなく、心底ゴヤという画家の、情熱的なドラマティックな人生を垣間見ることに熱中することだけで、喜びを感じる本かもしれません。
それからくれぐれも念のため、うちの妹のように、パッと見てホッタヨシエという名のお料理研究家が出した、「ゴーヤ」に関するお料理ブックと間違わないように、お願いしま~す。
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昨年友達がスペインのアルハンブラ宮殿を訪れて、
その素晴らしい写真を見てから、テレビでイザベル女王の特集番組を見て、
いままで映画や本やオペラで見知った断片がつながり始めて、
スペイン・ハプスブルグ家の歴史を絵画の本で知って…
と、流れ流れてこのゴヤの生涯を書いた本に出会った。
作者の粘着気質気味の文章に最初はとまどった。
その分、当時の風俗や政治について詳しく書かれているけれども。
ゴヤがとにかく押しの強い上昇志向の強い男であることに驚く。
全四巻の本作で、一巻目は宮廷画家になったところまでしか書かれていない。
これからが楽しみ。
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裸のマハの上野来日にあわせたゴヤフェスに併せて買った本。大分時間が経っているのに、未だ四部作の2作目の途中。話自体は教養深くて非常に面白い。漠然と持っていたスペインに対するイメージが覆され、かつ興味がわき立てられる。でも読書はなかなか捗らず。高尚すぎるのがいけないのかな?
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第1巻は、ゴヤがまさにゴヤになるまでを描く。 ゴヤが仮にここまでで没していたなら、あるいはプラド美術館に飾られることはなかったかも知れない。 作家はゴヤを生んだスペインを、とりわけその内陸部に位置するサラゴーサ(アラゴン)と、マドリッド(カスティーリャ)の風土と歴史の中にゴヤを描いていく。 しかも、そこで語られる歴史は単に事件や政変だけではなく、あたかもアナール学派のそれのように、ただし作家としての想像を交えながら語られる。そして、その歴史と風土の中からゴヤが立ちあがってくるのである。
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ゴヤと彼を取り巻く18世紀のスペイン社会の記述に圧倒された。
他の紀行と同じく、
彼の海外に対する見方は独特なものがあったと思う。
絵は見たことがあるけれども、
画家本人についてはなかなか知ろうとすることは少ない。
だが絵を描いた本人、そして取り巻く歴史を知ることで
絵を見ることがより一層面白くなる。
まさにそのことを教えてくれる本だと感じた。
非常に面白く興味深いのだが、なかなかページが進まなかった。
それくらい内容が濃いのだろう。
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20180207蔵書
20170903読了
1974年発行。単行本。図書館にて。ゴヤという男は自己顕示欲や出世欲の強い、かなりギラギラした奴だったみたい。●ゴヤの人生をなぞる前に、スペインという国がどのような歴史の下に成り立っているのか説明される初めの章「スペイン・光と影」がとても興味深い。地理的条件、イスラム教とキリスト教が共存していた時代、文化のない社会上層部等々・・・。●あとに続くのは「フエンデトードス村」「マドリード」「ローマへ」「ふたたびサラゴーサへ」「王立サンタ・バルバラ・タピスリー工場」「いわゆるベラスケスの”発見”について」「アカデミイ会員=ゴヤ」「内閣総理大臣フロリダブランカ伯爵」「自画像」
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読んでいる途中の感想だけれど、からだごとその場所にもっていって書く。そういう、身体性というか、現場主義というか、実感から生まれてくる描写。ポストモダンは、実感主義と否定したのかもしれないが、堂々たるモダニスト、近代主義者。40年ぶりの再読の快楽。こんなに面白かったことに気づけなかった浅はかさを、若さというのだろうか?
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「スペイン断章」や「スペインの沈黙」で語られた、荒々しい自然環境に歴史が剥き出しのまま晒されている、スペイン。そこから語り始め、アラゴン地方、フエンデトードス村にフォーカスしてゆくうちに、読者はゴヤという男がここに生まれたからには、ただお上手で穏やかな絵なんか描くわけがないことを思い知らされるのです。
比類なき才能と野望、十八世紀という時代の宮廷と画家の現実、まさにスペインそのもののような伝記の「起」です。