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読んでいる最中、頭の中で「ゴゴゴゴゴゴッ」と音が鳴ってました。
2017/01/01 18:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テトラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
もはやキングの代名詞とも云える本書。スタンリー・キューブリックで映画化され、世界中で大ヒットしたのはもう誰もが知っている事実だろう。
とにかく読み終えた今、思わず大きな息を吐いてしまった。何とも息詰まる恐怖の物語であった。これぞキング!と思わず云わずにいられないほどの濃密な読書体験だった。
物語は訪れるべきカタストロフィへ徐々に向かうよう、恐怖の片鱗を覗かせながら進むが、冒頭からいきなりキングは“その兆候”を仄めかす。
誰もが『シャイニング』という題名を観て連想するのは狂えるジャック・ニコルスンが斧で扉を叩き割り、その隙間から狂人の顔を差し入れ「ハロー」と呟くシーンだろう。とうとうジャックは悪霊たちに支配され、ダニーを手に入れるのに障害となるウェンディへと襲い掛かる。それがまさにあの有名なシーンであった。従ってこの緊迫した恐ろしい一部始終では頭の中にキューブリックの映画が渦巻いていた。そして本書を私の脳裏に映像として浮かび上がらせたキューブリックの映画もまた観たいと思った。この恐ろしい怪奇譚がどのように味付けされているのか非常に興味深い。キング本人はその出来栄えに不満があるようだが、それを判った上で観るのもまた一興だろう。
映画ではジャックの武器は斧だったが原作ではロークという球技に使われる木槌である。またウィキペディアによれば映画はかなり原作の改編が成されているとも書かれている。
≪オーバールック≫という忌まわしい歴史を持つ、屋敷それ自体が何らかの意思を持ってトランス一家の精神を脅かす。それもじわりじわりと。特に禁断の間217号室でジャックが第3者の存在を暴こうとする件は既視感を覚えた。この得体のしれない何かを探ろうとする感覚はそう、荒木飛呂彦のマンガを、『ジョジョの奇妙な冒険』を読んでいるような感覚だ。頭の中で何度「ゴゴゴゴゴゴッ」というあの擬音が鳴っていたことか。荒木飛呂彦氏は自著でキングのファンでキングの影響を受けていると述べているが、まさにこの『シャイニング』は荒木氏のスタイルを決定づけた作品であると云えるだろう。
幽霊屋敷と超能力者とホラーとしては実に典型的で普遍的なテーマを扱いながらそれを見事に現代風にアレンジしているキング。本書もまた癇癪もちで大酒呑みの性癖を持つ父親という現代的なテーマを絡めて単なる幽霊屋敷の物語にしていない。怪物は屋敷の中のみならず人の心にもいる、そんな恐怖感を煽るのが実に上手い。つまり誰もが“怪物”を抱えていると知らしめることで空想物語を読者の身近な恐怖にしているところがキングの素晴らしさだろう。
本書が怖いのは古いホテルに住まう悪霊たちではない。父親という家族の一員が突然憑りつかれて狂気の殺人鬼となるのが怖いのだ。
それまではちょっとお酒にだらしなく、時々癇癪も起こすけど、それでも大好きな父親が、大好きな夫だった存在が一転して狂人と化し、凶器を持って家族を殺そうとする存在に変わってしまう。そのことが本書における最大の恐怖なのだ。
やはりキングのもたらす怖さというのは読者にいつ起きてもおかしくない恐怖を描いているところだろう。上下巻合わせて830ページは決して長く感じない。それだけの物語が、恐怖が本書には詰まっている。
思っていたよりも展開がゆったり
2021/08/30 10:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のび太君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
キューブリック監督による映画版では、ホテルに行ってすぐに大変なことがあるが原作では徐々に悪い状態になってくる。映画ではジャックの過去がほぼ明かされないが、この本ではそれが豊富に描かれているが、ややしつこく感じた。
溢れかえりそうな不穏さ
2020/02/25 20:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界的に最も有名な作家の最も有名な作品の一つである本作。
ホラー小説の金字塔と呼ばれる本作。
本作含めスティーブンキングの作品は、映画で鑑賞したことは多々ある。
しかし今まで一度もスティーブンキングの小説を読んだことはなかった。
満を持してやっとスティーブンキングの作品を読むことが出来た。
本作を読み驚いた部分が何点かある。
まず一つは映画版との違いだ。
映画版ではジャック・ニコルソン演じるジャックが母親と子供を襲うシーンを主軸としたホラー映画となっている。
破壊されたドアの隙間から覗くかの有名なシーンなど、オーバールックの幽霊屋敷という怖さよりもジャック本人の怖さが際立ったサイコ・ホラー作品である。
対して原作ではまず、ジャックがオーバールックの管理人として雇われることになった経緯やトランス一家が抱える問題などの背景を丁寧に描写していた。
個人的にはジャックとウェンディの緊張感をはらんだ関係性の描写が上手だと思った。
ダニーがジャックになついている様子を見て嫉妬するウェンディや、ウェンディが自分に向ける不信感に苛立ちを隠せないジャックなどの事細かな描写が良かった。
トランス一家の背景を描いた後には、ダニーの持つ「かがやき」と呼ばれる不思議な力がフォーカスされる。
映画版ではダニーの特殊能力はそこまで重視されていなかったが、小説ではこの「かがやき」が物語の鍵となってくる。
ダニーと同じ特殊能力を持つハローランのキャラクターがとても良い。
年齢の違いなど一向に意に介さず、対等な関係をダニーと築こうとする彼は本作で最もお気に入りキャラクターだ。
二つ目に驚いた点は展開の遅さだ。
オーバールックに到着後すぐに事件が起こるわけではない。
個人的には展開の早い作品のほうが好みだが、本作の展開の遅さは魅力の一つではないだろうか。
何かが起こるであろう不穏な雰囲気や、水面下では既に何かが起こっているのではないかという不安感がジワジワとやってくる。
その不安感、不信感が溢れた瞬間上巻は幕を閉じる。
物語は始まったばかりなので、下巻を最も効果的にするための上巻だと思った