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投稿者:本好きなおっさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
SFの中で、やはり、この本は外せないと思います。
特に、今回の完訳版は、すばらしい。
よりリアルな未知との遭遇
2015/11/14 02:18
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投稿者:さぼてん - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画から知ったけど映画は未鑑賞というていたらく
冒頭からサイコサスペンス的な展開で、読んでいてぞわぞわした。断絶した他者と相対することはSFとか超えて普遍のテーマで、断絶していても理解しようとするところに静かな感動があった。作者としては原作からかけ離れているとしているけれど、映画も観てみたい。
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投稿者:のきなみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
買ったのは映画版の表紙だったのでその内買い換えたいなぁーと思ってたら出てたんですね。
雰囲気の良い表紙なので買ってしまいました。
レムを初めて読んだのがこの話で今まで自分がイメージしていたSFとはまったく違ってて衝撃を受けたことを思い出します。今読み返しても消化できてない感が大きくて抜け出せない沼みたいですね、レムは。
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ポーランド語オリジナルからの新訳版。既訳はロシア語からの重訳で、ポーランド語→ロシア語の翻訳の際、削除された部分があったそうだ。
『ソラリスの陽のもとに』と『ソラリス』を比較してみると、既訳で強く感じた叙情性が薄れ、思考実験を強く指向していたことが解る。ファーストコンタクトものと言うと、友好的かどうかを問わず、意思の疎通が出来ることを前提としているSFが多い中、全くそれが不可能なである『海』という存在の大きさには矢張り圧倒される。
個人的には新訳の方が好みだが、エンタテイメント性は既訳の方が強いと思われる。
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新訳で再読。内容はそれほど変わらないが、表紙や文体、追加部分を考慮して新訳の方がやや硬質な印象か。いずれにせよ、人間が理解することも意思の疎通も不可能な完全なる他者、ソラリスの海を巡る本作の素晴らしさは揺るがない。ソラリスが示すのは所詮人間の持つ愛というのは自分の理解できる範囲にしか届かない自己愛でしかないのでは?という問いであり、例え宇宙の彼方へ届こうとも自らの弱さからは決して逃れられないという事実である。他者を理解しようと試みること、その到達不可能な困難さと向き合い続ける中でしか本当の愛は生まれない。
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昔々にソラリスを読み、LD(レーザーディスク)まで買ってタルコフスキー版映画を見たソラリス。そのソラリスを新訳かつ完訳(って言うのかな?)で読む時がくるとはね…。
旧訳の記憶は、タルコフスキー版「ソラリス」で上書きされているので大きなこと言えないけど、今回の『ソラリス』は事細かく「ソラリスとは何か?」に書かれている印象があります。完訳だからかもしれないけど。
この新訳を読んでいる時に頭に浮かぶイメージはタルコフスキー版「ソラリス」の絵なんで、それはそれで困ったな。
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意志を持つ海に覆われた謎の惑星ソラリス。ステーションに派遣された心理学者ケルヴィン。謎の死をとげたギバリャン。ステーションに駐在する科学者スナウトとサリトリウス。ステーション内で起きる不思議な現象。黒人の女を目撃してからケルヴィンの周囲にも不思議な現象が。10年前に死んだ妻のハリー。ある日目覚めるとベッドの脇にいたハリー。ソラリスの海とのコンタクト。
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2015/06/13 購入。例のポーランド語原典からの完全翻訳版。後ろの30ページ以上もある訳者本人の解説が面白い。
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新訳が気になりつつ、国書刊行会版はちょっと高いので手が出なかったのだけど、おお、文庫になってる!ありがたや。
「ソラリスの陽のもとに」は、ずーっと文庫棚の一番上に並べてある。初めて読んだ時のインパクトをよく覚えている。SFって何かというのは難しい問題だと思うが、私は世界認識の変容を迫ってくるものが一番SFらしい気がする。そういう意味で「ソラリスの陽のもとに」はまことに名作。
旧訳版には原作からカットされた部分があったとは知らなかった。その新たに訳出された箇所の中で、特に「怪物たち」の章の描写が異様な迫力で圧倒された。ストーリーにはほぼ無関係な異星の海の姿が、これでもかというほど執拗に描かれている。ソラリスの海が作り出す想像を絶する形成物「ミモイド」。何のために、またどうやって、それを作り出すのか人間には全く理解できない、その生成と消滅のありさまが、何ページにもわたって延々と描かれる。それはひどく「リアル」で、しんしんと胸に迫ってくる。すごい。
「ソラリス」は実に様々な解釈がされる作品だ。解説で紹介されているその一端を読むだけでも、あまりに多方面からの読み方があって、目眩がしそうになる。これだけ色々語られるSFもあまりないだろう。私は今回も、旧版を読んだ時と同じく、「生命」や「知性」、「人間」について新たな光を当てる卓抜したファーストコンタクトものとして読んだ。最後にいらんことを付け加えると、これは「ロマンス」じゃないと思うよ。
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映画でも観たが、映画で訳が分からない箇所が記述されていて良く分かった。こういう感じの作品は無いように思う。
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原書名:SOLARIS
ポーランド語からの直訳で完訳。
海によって送り込まれた過去の恋人とのラブロマンスと思っていたら大違い。人によって様々な読みが可能なハードSFです。
特に膨大な量のソラリス学の振り返りが印象的、思わず読むのがおっくうになりそうな箇所だけど、なぜこの記述がこんなに多いのかを考えることによって、この小説の深みに触れることができると思います。
異星人なえぬ異星生物である海は敵なのか味方なのか?なぜ過去の人物を送り込むのか?それは攻撃なのかプレゼントなのか。海は何の反応も示さず意図もわからない。
星空間の物語と言えば異星人との戦いか友情か、といったステレオタイプを排除し、未知との生物とのコンタクトという問題に取り組んだ一冊です。
個人的には、作者の祖国の当時の支配体制である社会主義との関係を考えたくなりました。
著者:スタニスワフ・レム(Lem, Stanisław, 1921-2006、ウクライナ、小説家)
訳者:沼野充義(1954-、大田区、スラヴ文学)
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意思を持った海に覆われた惑星”ソラリス”。そこに派遣された心理学者のケルヴィンはそこで変り果てた研究者たち、そして出会うはずのない人と出会う。
ホラー的な幕開けから始まり、そこから恋愛のロマンスが展開され、さらにファーストコンタクトのハードSFとなり、そして観念的、哲学的な問いかけと共に閉じられる。およそ380ページの小説にこれだけのものが詰めこまれています。そしてそれぞれの展開で読ませるのがこの小説のすごいところ! さすがオールタイムベストに選ばれる作品だけあります。
訳者あとがきによると、旧版の翻訳では、ソラリスの海の活動を記録した章が大きくカットされていたそうです。「この章があるかどうかで読み方が大きく変わるのでは」と訳者の方が書かれているのですが、それには大いに同意しました。この章がなければたぶん僕は、この本のロマンスの部分が一番強く印象に残ったのではないかと思います。
ソラリスの活動の記録の書き込みはかなり詳細で独特の表現もあり、段落分けも少なく正直読むのはかなり苦戦したのですが、この章があるからこそ、理解不能な知性としての「ソラリス」の存在が確かに感じられると思います。そして理解不能な知性に対し、あまりに無力な人間の姿も。
あとがきに収録された著者のインタビューなんかを読んでいるとこの本の本当の主題は、おそらくそうしたところにあるのではないかと思われます。
そうした問いかけに対し、直接的な回答があるわけではないのですが、最後の文章を読んでいると決して著者はそうしたテーマに対し、絶望だけを抱いているわけではなかったのだな、と感じました。
宇宙開発が進むうちにいつかこの小説のような、人間とは全く違う知性と出会う時がくるのかなあ。それが何をもたらすのか、怖くもあり、でもどこかで楽しみでもあり、そんなことを思わせてくれるSFでした。
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タイトルが有名な本なので手に取ってみたが、かなり読みづらい本だった。特にソラリスという惑星特有の現象を文字から想像するのはかなり難しかった。この本のメインテーマが、理解できない他者とのコンタクトなので、そのような難解さがあるのではないかと想像した。さらにソラリスとのコンタクトだけでなく、ラブロマンスや恐怖小説てきな要素もあるため(解説より)、読みながら本筋を捉えることが出来なかった。
難解ではあったが、これまで主にアメリカのSFしか読んだことが無かったので、東側のSFは毛色が違っていて面白かった。たしかに、この作品と比べるとアメリカのSFは人間中心的な感じがする。地球外の生命体と交渉するということは、実はかなり楽観的な考え方、人間の性質を普遍的に適用しているということに気付かされた。深読みをすれば宇宙規模での民主化、アメリカニゼーションの表れともとることができる。
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ストーリーとしては極めて静的で、ほぼ全ての出来事がある惑星上の小さなステーションの密室の中で展開する。それも、主人公のごく限られた視点でのみ語られるため、全体像は読者の想像に委ねられる。
静かな心理戦とも言えるサスペンス調のストーリーの軸とは別に、主人公が愛読する「ソラリス学」文献の記述が目を引く。わけのわからない謎の惑星生物に対する科学者たちの実証と仮説の数々が積み上げられていく様子が、年代記の形で執拗ともいえるページ数を割いて紹介される。惑星に起こる(人間にとっては一切無意味な)謎現象の詳述も圧巻である。一部、起こっていることが複雑すぎて文章から読解するのを諦めざるを得ない(作者もわかってないんじゃないの)ところすらある。著者はこうした無意味な叙述にこそ快楽を見出す人なのだろう。
そして、その無意味さ、空虚さ、ナンセンスは、そのまま未知の生物とのなんらかのコンタクトを成功させんとする主人公との先達の科学者たちに立ちはだかる大きな大きな壁となる…。
ストーリーラインではなかなか感情移入しづらい作品だが、それはむしろ掲げられている大きなテーマ、未知の存在とのコンタクトを捉えるうえでは好都合だ。クライマックスの「神」をめぐる対話など、人間的感情論をさし挟むことで誤読を招く恐れさえある。
3人の乗組員たちは、この地獄の密室から逃げようと思えばいつでも逃げ出せたのである(主人公のみ事情が異なるが)。このあたり、ストーリーラインだけを追っていると不可解にも思える。それでも惑星に留まり続けたのは、やはり奇跡のコンタクトへの希望を捨てきれなかったからではないか。
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・アメリカのソダーバーグ監督版映画では”ラブロマンス”が主題となっていたが、原作ではそれは部分的要素に過ぎず、”ハードSF”の王道と言える重厚硬派な作品だった。訳者あとがきにもあったが、ソ連共産主義的SF(=人類の進化や未来ユートピア到達の美談)でも、アメリカ的SF(=映画のお決まりパターンに倣う展開)でもない。
・人間中心主義や人間形態主義(anthropomorphism)的に、「未知なるもの」「他者」を自分たちの観念に当てはめて理解/拡大解釈しよう(出来る)とする態度への懐疑を投げかけている。ここでいう「他者」は、作中ソラリスの海に限らず、我々の現実では例えば未来のAIやロボットにしても当てはまりそうだ。
・ソラリスの海の物理学的な解析や観察など生態詳説な描写がストーリー進行描写(登場人物同士の会話やシーケンス)以上に多く感じられた。作中内の架空の文献の披露ーこれまでのソラリス研究の系譜ーがかなりの頁に渡って語られる入れ子構造は”メタ・サイエンス・フィクション”の様相。頁いっぱいにぎっしりつめ込まれたこうした描写は読みづらさもあるが、この作品の世界にリアリティを与えている。