平安時代のあれやこれ
2017/09/07 10:10
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
紫式部が紫式部と呼ばれる前の物語。一条天皇の后の定子が出産のために宮中を下がった時に連れたいた猫が姿を消す。
その行方を、当時の世相を映しながら、探り出す。
また、「かかやく日の宮」が書かれたはずなのに、何故消えてしまったのか、その謎と経緯。
貴族社会のまどろこしさと、印刷技術の無い頃の物語の流布の仕方が描かれる。
スピード感や爽快感が欲しい方には向きません。
血縁や、仕事の人間関係で身動きが取れない、しかし、ささやかながら反抗する意地が面白い。
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
紫式部が探偵として事件や謎を解いていきます。
平安時代の女性といえば自由性が少ない印象ですが、持ち前の頭脳で謎に挑みます。
『源氏物語』の裏話的な話もあって「おぉありえるかもぉ」って楽しめます。
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投稿者:名無し - この投稿者のレビュー一覧を見る
源氏物語の血の通った人物になった作者と女童による探偵物語。枕草子の裏に隠れた当時の様子も上手く練り込んでいて歴史の復習にもなるし、古典を読んだ人には覚えのある人達も出てクスリとなる。が、内容としてはやや期待外れ。仕方ないのだろうけど清少納言の書き方も残念。
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分厚い本なんですが、中身は三部に分かれています。
主人公の「あてぎ(阿手木)」の御主である紫式部を探偵役に据えて、話が進んでいきます。
推理小説として、トリックは別段目新しいものではないんですが、小説としては面白いと思いました。
源氏物語は、原作は古文で読んだだけで(笑)、それでも気になるから、瀬戸内寂聴とかが現代語訳したものを一応は読んではいるんですが、いまだなぜこの物語がこんなに長い間残っているのか、分からない(笑)。もののあわれが分からないってことだろうか?(笑)
まあ、そんなことはともかく、物語作者としての業とか、予想外のことが描かれていて、読み始めると、そう時間もかからず読んでしまいました。
このあたりの時代って、平安時代の中でも豪華絢爛な時代で、「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」なんて句を藤原道長が詠んだような時代です。
この作品は、三部作らしく、あと二冊は出版されるらしいです。
どう紐解いていくのか、ちょっと楽しみです。
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「日常の謎」を解きながら『源氏物語』の謎にも迫るという一冊で2度おいしい極上ミステリ。
舞台は平安、藤原道長の照り輝く時代。
時代小説としても楽しめるし、フツーにミステリとしてもよくできているし登場人物たちの個性がしっかりしてて面白い。
なかでも探偵役の紫式部の切れ味の鋭さには舌を巻きます。
そうだよね、なんたって『源氏物語』書いた人だもん。
人は死なないし、紫式部主従たちの頭はいいけどほんわかしててかわいいし
なんかこのふたり知ってる・・・と考え出したら
『なんて素敵にジャパネスク』の瑠璃姫&小萩を思い出し、楽しく読みきってしまいました。
3部作らしいので次回作の文庫化が待ち遠しいです
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源氏物語を執筆する紫式部が、お伴のあてきとともに謎を解明するミステリ。どうして「かかやく日の宮」は失われたのか? というひとつの回答が明示されています。
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なぜ源氏物語に欠損があるのか?
という疑問に平安時代への愛と夢がたっぷり詰まった小説です。
平安時代小説というと史実をなぞらえたり陰陽師が出てきたりするものが多いのですが、これは上手いこと創作を絡めていて楽しく読めました。
実資の役割に思わず笑ってしまいました。
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帝ご寵愛の猫はどこに消えた?
源氏物語、そして、猫なのである。
私の想像する紫式部よりも、ずっと聡明で慎み深い人であったけれど、そういうのもいいかも。
ライトな平安ミステリであり、源氏物語自体の謎にも迫ってしまう。
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「源氏物語」をはじめて読んだのは、高校1年のときです。なんで、時期まではっきり覚えているかというと、夏休みに勉強の合宿があって、そのときに渡された本が、「源氏物語」の現代語訳の抄本だったのです。
で、あんまり、いい印象がなかった。主人公が、好きじゃなかったですからねぇ。昔から、意味もなくもてる男には、反感が(笑)まぁでも、女の子のキャラがたっているのは、とても印象的でした。
で、その後、大学の古典で「源氏物語」を勉強する様になって、その前後で、「あさきゆめみし」を読んだら、けっこうおもしろくて、しかも、古典の授業が、今までになく良くわかる(笑)ということがあって、何回か、自分のなかで「源氏物語」ブームがおきて、現在にいたります。
ということで、この「千年の黙」も、去年読んでいた井沢 元彦の「GEN 『源氏物語』秘録」も、そういう自分のなかの「源氏物語」マニアな部分で読んでいる1冊です。
今回の「千年の黙」は、現代から「源氏物語」の成立を推理していくお話ではなくて、「源氏物語」が書かれた時代そのものを舞台として、どうしてそれが、その時代すでに、今の様なかたちになったのかという謎に迫っていきます。
それも、名探偵・紫式部が(笑)
これは、けっこう、惹かれるシチュエーションでした。
3つのお話ができていて、1話は、「枕草子」にも書いてある猫騒動のお話。2話目、3話目が、源氏物語の成立についてのお話です。
マニアとしては、2話目、3話目が、刺激的で好きです。雰囲気は、1話目がいい感じです。
読む前は、もっと軽いお話を想像していたのですが、けっこう読むのに時間がかかりました。
でも、この人の人物評価は、けっこう、わたしには納得のいくものでした。
そう、やっぱり、そんな大往生は、ゆるされないですよねぇ。
あと、これを読んでいて思ったのは、なんか、「源氏物語」の成立…というか、書かれ方とか、読まれ方って、今の同人誌とかともしかしたらよく似ているのかも……と思った。
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源氏物語をまさに書いている最中の紫式部を中心に、式部に仕える「あてき」や、元子女御に仕える小侍従を主役(?)にしたミステリー。源氏物語は一帖欠けている、という説をベースとしてその謎を追います。あてきや小侍従が女の童から女房に成長するのも楽しめるし、あてきの恋もありつつ、源氏物語の世界観と一緒に、まさにそのとき起きている帝や女御様、左大臣の権力争いやら恋(?)模様やら、効果的に使われていてよかったです。
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道長から定子入内を支える女房として出仕を促されている紫式部(藤原香子)が女童のあてきと共に、その洞察力で周辺で起った謎を解き明かすミステリ。藤原道長、藤原実資、中宮定子、彰子、清少納言、藤原宣孝、賢子、定子などが出てますが、どの人物も活き活きと描かれてます。
3編の短編から構成されていて、第一部では定子が飼っていた猫の行方を推理するもの。推理しつつ人間関係の紹介、みたいなお話。香子と宣孝の円満な夫婦仲(才気煥発な妻を自慢する宣孝とか)、あてきの初恋、利発なまだ幼い定子、野望あふれる道長の動向、帝の一の人と称されながらも政治的に微妙な彰子の立場(でも定子はこの年上の美しく賢い従姉妹にあこがれている)が描かれてます。出仕経験のない自分には宮中の配置など分からなくて、それを指摘されて悩む香子など、創作秘話っぽい話もあって面白いです。決まりごととか確かに取材もなしではきっついでしょうねぇ、特に貴族の女性にとっては。
で、本命は2編目「かかやく日の宮」。
藤原定家が題名のみを伝える、源氏物語の二巻「かかやく日の宮」が本当に存在したと仮定し、紛失した謎が明かされます。本居宣長や丸山才一、瀬戸内寂聴も「書かないはずがない」と言及していて、実際補う作品を創作してしまったような源氏と藤壺の初めての逢瀬の場面はなぜ消えたのか?この巻については、現在の桐壺の巻の異名だとか、現在の桐壺の巻の後半部分がかつては別の巻であったころの巻名だとか、桐壺の巻のあとにかつて存在したが失われてしまったとされる巻だとか諸説ありますが、この小説では第三の説に基づいて描かれてます。ああーさもあらん、という感じ。道長様・・辻井喬っぽい。
第三部は「雲隠」。題名のみ伝わる源氏の死を描いた巻は存在したのか?
とりあえず読み終わってから、「歌恋ひ1」を読み返したり、平安朝に浸ってみました。さて次は2巻!
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ものすごーーーくおもしろかったーー! 紫式部が探偵役のミステリ。わたしは特に、源氏物語から抜け落ちた帖の謎を解くところがすごく興味深く、おもしろく読んだ。普段、ミステリ読んでも謎解きはどうでもいいや、って思ってるのに、前に戻って場面を確認したりするほど。よくできてる、と思った。説得力があって、この作品で描かれていることが実際あったに違いにない!と思えてきて。あと、光源氏が死ぬ場面をああいうふうに処理にするまでのいきさつもすごく興味深くて、なんだかぞくぞくするほどだった。それと、藤原道長の描かれ方も印象的だった。政権を握ることしか頭にない策略家みたいにいわれるけれど、本当は文学や風流を愛し、本を読んでのんびり暮らせたらどんなにいいだろうと思っていて、紫式部とあれこれ文学の話をしたい、とか考えているところが。子どものころ読んだ児童向けの伝記「紫式部」で、清少納言は才女だけどでしゃばり、それに比べて式部は才能をひけらかさず控えめ、と刷り込まれ、ずっと式部ファンだったけれど、この作品に描かれている紫式部はわたしのイメージどおりだったなー。
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源氏物語実は清少納言は書いてない っていう内容の本をそういえば昔読んだことがあったなというようなことを思い出しました。
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自分が書いたものが広まっていく怖さ。物語の内容に迷う姿。紫式部が本当にこんなふうに源氏物語を描いていたのかもとうれしくなる。
「後の世のことは、神仏でもない身にはわからないもの。ただね、自分の心はいつわらないようにしよう。あとは自分に子供が生まれたら、その子にだけは誇ってもらえるようにしよう、と。」
たわいないような事件が絡み合って、道長の人柄や彰子の人柄がくっきりしてくる。そして、実は!源氏物語に欠巻が?という大事件。
こんな疑惑を知らなかったので、かなりショック!
私、源氏やったはずなんだけど。。。こま切れな読み方だったから?
登場人物が魅力的であっと言う間に読める。あてきの恋。元子女御の恋。それぞれ個性的な女性たち。
なんとなくもう少し恋バナが濃くてもいいかなー。源氏だしーという気もする。でも、それがないからこそ、式部の事件がくっきりするのかなあ。
式部が地味にかっこいい。
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源氏物語の作者紫式部に仕える女房安手木を主人公に据えた源氏ミステリ。
まずこれが作者森谷明子さんのデビュー作であることに驚く。
実に良く出来たミステリです。
私は馬鹿読者なので最後の最後まで犯人の使いをさせられた女童が誰なのか全くわからないまま読み進めていたのでラストには文字通り「あっ!」と言わされましたw
いやぁ、ほんとうによく出来たミステリでした、楽しい読書になりました。
しかし、これは源氏物語入門書にはなりえません。
源氏物語にそれなりに精通していて始めて楽しめる本です。
まずは王朝文化や風習を知っていないとこの本を半分も楽しめない。
源氏物語にちょっとも触れずにこの本にたどり着く方はそんなに多くは無いとは思いますが、もしまだ一度も源氏物語を読んでいないと言う方がいらしたら入門書として私が最適だと思う田辺源氏をまず先に読まれることをお薦めします。
本書巻末の解説文によるとこの物語は「逸文紫式部日記」として全三部作となる模様。
今からその第二部「白の祝宴」を読むのですが久々に読む前からわくわくしています。
文庫化されたら絶対買います。
源氏ファンにはたまらないシリーズだと断言しちゃいますw