法月探偵ファン必読
2001/02/14 00:18
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投稿者:松内ききょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
やはりこの作品はある程度著者のその他の作品を読んでからでないと、読めないでしょう。それも『冒険』や『新冒険』ではなく、『頼子のために』は必読ですが『雪密室』や『誰彼』も読んでいるとより味わい深いはずです。すべてを読んでいる方には、もちろんおすすめす。法月探偵ファンとして、これだけ読み飛ばすという手はないでしょう。私は全部読んでいます。もちろん最後までとことんおつきあいします。
悩める名探偵=作者
2002/04/14 08:56
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投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「密閉教室」「雪密室」「誰彼」「頼子のために」と、賛否両論ありながらも良質なミステリを書きつづけてきた法月綸太郎が、ミステリについて深〜く悩み始めた最初のころの作品。アイドル業界で起きた謎の殺人事件に巻き込まれた法月親子が、試行錯誤しながら少しずつ真相に近づいていくという話なのだが、とにかく作者が苦悩して書いている姿が目に浮かぶようで、素直に読めない。この作者は優れた批評家でもあるわけなんだけど、この作品では、その批評家の顔が前面に出ているようで、ミステリとしては面白いとは言い難い。どう考えても必要のない(読者にとって)ところがいくつかある。主人公の名前が作者の名前と同じだからってこともあるんだけど、後半は、作中の「法月綸太郎」が、作者に同一化して見えた。ラストなんて作者自身のために書かれている。もちろん作者は知っててやってるんだろうけど……
それにしてもこの「文庫版あとがき」を読むと、作者がこの時期かなりの深みにはまっていたことがよくわかる。かなりアブない文章になっている。「雪密室」「頼子のために」みたいな、読者が純粋に楽しめるような作品は、もう読めないんだろうか。
新本格って何だろう?
2002/03/08 04:48
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投稿者:菅野 - この投稿者のレビュー一覧を見る
法月綸太郎シリーズを新本格というのはどういうことなんだろう。他の新本格はどうか知らないけど、「これが本格?」と思ってしまう。ああ、ここで勘違いして欲しくないのは、今言っているのは、本格か否かってことで、作品の良否じゃないからね。で、この「ふたたび赤い悪夢」も面白いんだけど、本格の定義がどういうものなのかわからんけど、つまり、これを新本格とかって言ってしまうと「どこのカテゴリーにも入らないものを新本格ということにならないのかなぁ」と思ったりしちゃったりするんですけど、どうでしょう。いいんだけどね。新本格っていうものの成り立ちをよく知らないのだけど、島田荘司によって見出された京大ミステリ研究会に関わった新人作家群ということなんでしょうか。というか、そーいう分類はどーでもよかったりするからね。我孫子武丸と法月綸太郎は読むけど、有栖川有栖は読まないしね。
言いたいのは、本当に、単なるレッテルの問題だけ。これが新本格と呼ばれなくても面白いんだから。って、やっぱり売る方の都合かな(笑)。売る方の都合があるのは分かるんだけど、そういうのが透けて見えちゃうのは興ざめだよね。
なんてことは、「ふたたび赤い悪夢」で書かれていたアイドルのマネージメントに関わることでも同じか。
とにかく面白かったよ。推理よりも、心理描写がよかった。そーいうこと。
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凄かった。話もそうだけど名探偵としての法月綸太郎の悩みとか苦しみとかが盛りだくさん。推理部分も面白かったけどこういう部分もかなり面白かった。ここから法月綸太郎はどういう方向に進んでいくのだろうか。二の悲劇が楽しみ。あ、ちなみに解説でクイーンの「九尾の猫」と「十日間の不思議」のネタバレしてる。頼むよ笠井さん…。
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綸太郎が悩んでいる。
「頼子のために」でのことが
原因らしいのだが
さっぱり分からない。
で、「頼子のために」を引っ張り出して
斜め読みを始める。
しばらくすると
畠中有里奈という人物の本名が
中山美和子という名前で
「月蝕荘」での事件で出てきたという。
「月蝕荘」って何だ?
とまた法月綸太郎の本を引っ張り出して
ようやく「雪密室」での話だと分かる。
話の背景をつかむだけで
もうぐったり・・・
そしてクイーンの「九尾の猫」や
マルコ福音書や
ラジオ局の局内のようすだとか
80年代アイドル論・・・
といった薀蓄でさらにぐったり・・・
良かったのは、綸太郎と湯浅景子が
美和子のマンションで出くわし
腹の探りあいをする場面。
ここはかなりハッとさせられた。
あと、中山雅之が
弟の利則を自殺に追い込む場面。
この2つはとても良かった。
やっぱり法月綸太郎は
ハードボイルドに向いているのかなぁ
と思ったりする。
それで肝心のトリックは
仕組まれたものではなく、
勘違いからうまれたものであったし、
例によって例のごとく
○○の親は実は○○だった・・・
のパターンもでてくるし・・・
まぁそれはそれでいいのだが
さすがに同じパターンのものが
こう多くあるとさすがにうんざりという感じも。
で、なにやら最終的には
綸太郎の悩みが吹っ切れて
めでたし、めでたし、で終わっている。
なんのこっちゃ、という印象ではあるが
これだけ分厚い本であるし、
しかも改行も少なく、
文字がたくさん詰まっているし、
お腹一杯になったので
「まぁええわ」という感じですな。
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綺麗にオチのつく良くできたミステリだった。引きが弱く感じたところがあり、ページをめくる手が止まらないという感じにはならなかったけど、解決編で次々と明らかになっていく真実はすごく練り込まれていて読みごたえがあり、また感動的な内容だった。
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≪内容覚書≫
法月綸太郎シリーズ。
人に刺されたと思っていた少女は無傷。
そして刺してきた男の死体が発見され、事態は混乱を極める。
探偵と言う自分の存在に苦悩している綸太郎は、
真実を探し出し少女を助けることができるのか。
≪感想≫
適当に選んだせいで、
綸太郎の苦悩の発端となる話がとんでしまった。
失敗。3部作のようなので、前2作を先に読むべきだった。
綸太郎が、探偵としての成長過程にいるのかもしれないが、
うじうじと後ろ向きで、
読んでいてちょっと面倒なこともあった。
同シリーズの別作品レビューでも書いた記憶があるが、
ヒーローのような探偵役を求めて読むとつらい。
私は、トリックをじっくり考えて読むタイプではないが、
きちんと騙してもらえてよかった。
最終的に、「悪」が犯人になってくれた点もホッとした。
「悪」が、多少短絡的で、あまりにも「悪」すぎる気もする。
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西村頼子の事件以来、出口の見えないスランプに陥っていた
作家の法月綸太郎のもとに、深夜かかってきた電話は、
アイドル歌手畠中有里奈からの救いを求める電話だった。
ラジオ局の一室で刺されたはずの有里奈は無事で、
彼女を刺したはずの男が死体で発見されるという奇妙な状況。
しかし、有里奈は、ただ不思議な体験をしたというだけで
混乱し、恐怖に追い詰められたわけではなかった。
彼女の精神を極限まで追い込んでいるものは、
有里奈の双子の兄と、有里奈の父を惨殺し
自殺を遂げたという実の母親の影だった。
自分の中にも、やはり人殺しの血が流れていたのだ――。
そう思いつめ、心を閉ざしてしまった有里奈を救うべく
綸太郎は父親の法月警視とともに、事件の謎に挑んでいく。
法月綸太郎シリーズの第5作。
今まで読んだ法月綸太郎の作品の中では一番の大長編だった。
読むのになかなか時間がかかったが、
ストーリーが最後までだれることもなく、楽しめた。
目次の前のページにあるいささか異質の献辞や、
冒頭の数ページを読めばすぐにわかることだが、
本作は、「頼子のために」の内容を受けての作品となっている。
どうやら、「頼子のために」でとある形で問題提起された、
作者のほうの法月綸太郎が頭を悩ませている
「後期クイーン問題」とやらに関しての、
ひとつの決着が描かれている作品であるらしい。
それくらいはなんとか読み取れるのだが、
いかんせん「後期クイーン問題」とか
神がどうのこうのといった話には詳しくないため、
作者がどんな主張を物語に込めたのか、
そのほとんどは理解できずじまいだった。
ただ、「探偵という立場」というものに関しては
京極夏彦の諸作品の中で中禅寺が語っていたり、
西尾維新の戯言シリーズの中で言及されていたりしたので
それに似たようなことを言っているのかな、
などと想像したりはした。
だが、普通に楽しく読めたので特に不満はない。
複雑なプロットと、何人もの人間の思惑を
幾重にも絡み合わせた構成はやはり見事。
それでいて、綸太郎という“名探偵”の存在をはじめとした
本格ミステリ的なガジェットのおかげで
作品全体がどことなくちっぽけに感じられるところも
やはり相変わらずなのだが、
そこがむしろ逆に、作者である法月綸太郎の
ミステリに対する偏愛を感じさせ、微笑ましいと思う。
作中の綸太郎が自嘲気味に評したところによれば、
頻出する比喩表現は「くだらない比喩」だそうだが、
人物の仕草や表情を描写するときの独特の表現は
“文章ならでは”のものであって、素晴らしいと感じた。
おそらく作者にとっての転換点になった作品なのだろう。
以降の作品も手にとるつもり。
楽しみである。
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この本は実は三部作の一部だったのだが
よく知らずに図書館で手にとってしまった。
内容的には分からない部分も出てくるが
一応は話はこの中で展開されているので読める。
三部作を読み返そうという機にはならないが
この本自体は好きな話の展開だった。
弱さが表面にでる探偵も珍しいのではないだろうか?
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すげー!とは為らないかな。
飽きない程度に展開して行くので比較的読みやすい。
トリックも犯行の背景も、良い意味でそれなり。
ハマり切らないのは文章のせいなのかな。。
生首よりは面白かったかな。
頼子のため と色々関連しているみたいなので次はそっちを読んでみよう。
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法月綸太郎シリーズ。
『雪密室』と『頼子のために』が関係した作品。
とにかく分厚い。
ちょっと冗長だなぁと思いました。
半ば以降は一気に読めたのですが、前半が。
どんでん返しは予想がつきましたが、面白かったです。
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4+
名探偵の苦悩極まれり。
著者が言うには、『頼子のために』『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』の順(刊行順)で三部作を構成するとのことだが、物語の流れとしては本作は『雪密室』と『頼子のために』の続編にあたる。『一の悲劇』は本作よりも後の話、『雪密室』と『頼子のために』は直接の関わりはない。本作のみ読んでも、過去の事件との関わりが多少わかり難いだけで、そこそこ楽しめるとは思うが、遡って読む場合には、重要な点がネタバレになってしまうのでやはり刊行順に読むのが望ましい。
ちなみに本書巻末の笠井潔の解説には前もってネタバレの注意喚起が記載されているが、クイーンの作品については予告なくネタバレしている。それは困るという向きにはいっそ解説を読まない方が良い。『頼子〜』の池上など著者の文庫は解説に恵まれない印象がある。
過去作と大きく絡んでいるせいで単独で手を出しづらいのは難点だが、この時の著者の言いたいこと、書きたいこと、書けること、を、これでもかと何とか全てひねり出したかのような真剣な姿勢が垣間見え、それが悩める探偵像と重なり、従来作にない重厚な雰囲気を醸している。そのシリアスさは物語と非常にマッチしており、個人的には、本作までに発表された長編の中では最も良い出来と思う。物語の終わりには苦悩を消化し、一定のケリをつけた探偵像が描かれ、それがどこか書ききった感のようなものにも見え実に清々しい。ただし著者自身の苦悩は本作発表後も延々と続いていくのだが。
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小説でありながら、哲学書でもある。それは作家の内なる叫びが、作品世界という自らの創造する空間に、神の視座として降臨した、一種の降誕祭なのかもしれません。んー、我ながら何言ってんだ?
本作、ワシにとって初めての法月倫太郎氏は、しかし初めて接するにはいろんな意味でイレギュラーだったのかもしれません。本作を、小説という枠で捉えることはとても難しく、小説としてはむしろ蛇足かもしれない、作者自身の思想が反映された「哲学的な」テキストが、しかし作品世界にフィードバックされているのも確かで、とても、読み解くのが難しいです。
作品は、とても読みやすい。でも、読み解くのが難しい。
たぶん、小説作品としては★4つ付けたいほど普通に面白い、本格ミステリーをきっちり堪能できる作品なのですが、その哲学の部分に、良いも悪いも判断の付かないワシは、一冊の本としては★3つとしました。
この、作品への神(作者)の干渉、というのは、じっくり考察したくなるテーマです。これまで、物語の構成は気にしつつも、物語の構造を気にしたことが余りなかったので、それを考察したいと思わせてくれた本作は、ワシにとってとても有意義な読書でした。
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本書は『雪密室』『頼子のために』の登場人物やエピソードなど重複するので、先に読んでおかないと解りにくいと思います。
事件の犯人は最初から明らかになっている様なものですし、思わず膝を打つようなトリックもないので謎解きの面白さはあまりありません。
しかし、「探偵としての苦悩」を事件に絡めたストーリーはドラマ性があり読み応えがありました。
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〈法月綸太郎シリーズ〉第5作(第5長編)。
『頼子のために』事件の後、完全なスランプ状態に陥っていた法月綸太郎。
ある日の深夜、彼のもとにかかってきた電話。助けを求めてきたのはアイドル歌手・畠中有里奈だった。
ラジオ局の一室で暴漢に襲われるも、自身は気を失い、その暴漢は後に近くの公園で死体となって発見される。
法月警視と共に彼女を匿い、事件の調査に乗り出す。
それは同時に、名探偵の視点を取り戻す旅でもあった。
畠中有里奈の本名は、中山美和子という。
彼女は『月蝕荘』事件で、法月警視に自身の出生の秘密を打ち明けていた。
自身が呪われた殺人犯の血を引いているのではないか。
彼女の母は、かつて美和子の双子の兄・実若と父・利則を殺害し、入水自殺したとされるのである。
そして今回の事件の数日後、低俗なゴシップ誌のせいで、自らの血縁に怯え自殺未遂してしまう。
その後、現在の事件の複雑な人間関係を詳らかにし、綸太郎は美和子の無実を証明することに成功する。
その裏には彼女の両親の悲劇の真実が隠されていた。
かくして「自分」で「自分の視点」を取り戻した綸太郎。
西村頼子への一周忌、墓前で傍らの美和子に頼子の面影を見出す結末は素晴らしいものだった。
ミステリ :☆☆☆
ストーリー :☆☆☆☆☆
人物 :☆☆☆☆
文章 :☆☆☆☆