ヘッセが過ごした時間がここにある
2001/06/19 20:50
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投稿者:川原 いづみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルと表紙を見るといかにも堅苦しい内容のような気がするけれど、全然そんな事はありません。短編集で、しかも薄い本なので比較的読みやすいのではないかと思います。
内容は…エッセイですね。神学校にいた頃の回想、人生で最も幸福を感じた瞬間、紛失したトランクのその顛末など。
取り上げられている事は、人生の中でも大きな出来事ではなく、ほとんどの人には忘れられてしまいそうな瞬間…会話にすると本当に10分もかからずに済んでしまいそうな事かもしれません。それが著者の手によって、時間というフィルターを通して生まれるぼんやりとしたほろ苦さと上品な甘さで微妙な部分まで描き出されていて。描写力があるというのはこういう事なんじゃないだろうか、と思ったのでした。雪が手のひらでするりと溶けていくみたいに、違和感なく一編一編を受け入れる事ができました。
<初読:99/04/25>
ヘッセのエッセイ集
2022/06/26 07:53
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投稿者:こっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヘッセの経験談や人生観が読める一冊です。ただ、さほど深く綴られたものではなく、読者の人生観に訴え得るものかというと個人的には思えませんでした。偉大な作家だから読者が付く感じです。日本人に向けて手記を寄せていただいているところには感謝です。
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【本書より】人間が生活の苦難や危険のただ中にあってもそういうものを楽しむことができるかぎり、つまり、自然や絵画の中の色彩の戯れや、あらしや海の声の中の呼びかけや、人間の作った音楽などをたのしむことができるかぎり、また、利害や困難などの表面の奥で、世界を全体として見たり感じたりすることができるかぎり、つまり、たわむれる若いねこの頭が描く曲線から、奏鳴曲の変奏演奏にいたるまで、犬の感動的なまなざしから、詩人の悲劇にいたるまで、連関があり、無数に豊富なつながり、相応、類似、反映が存在していて、絶えず流れるそのことばから、聞くものに喜びと知恵、冗談と感動の与えられる、そういう全体
として世界を見たり感じたりすることができるかぎり、────それができるかぎり、人
間は、自分というものにまつわる疑問を繰返し処理して、自分の存在に繰返し意味を認めることができるだろう。(「幸福論」)
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ゆっくりと、かみ締めるように読むことを要求されるような文章だけど、そうして読んだ時の感動は深く、心の底に広がって、他の本では得られない共感がありました。
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幸福とは相対化する対象があって初めて機能する感覚なのだろうか。
今、幸福だと感じている人はそれそのものに対して幸福を感じているのか、それとも誰かとあるいは過去の自分と比較して幸福であると感じているのだろうか。
幸福を定義づけられるほどの哲学も持ち合わせていないので、そんなものは場合によるし人それぞれですよと言ってお茶を濁すけれど、私にとって幸福とはと考えると何かと比べてみないと感じ取れないほど遠くにあるモノのように思う・・・。残念なことに・・・。
ある一瞬の状況でさえも(感動して泣いたにせよ、楽しくて笑ったにせよ)素直に幸福だと感じ取れる人間でありたいなとふと思った。
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-幸福を体験するためには、何よりも、時間に支配されないこと、同時に恐怖や希望に支配されないこと-
ノーベル文学賞受賞者、ヘルマン・ヘッセの晩年の随想・小品をヘッセと親交のあった訳者、高橋健二氏が「人生の意味をふかく具体性ゆたかにとらえているものを選んで訳出」した名冊。引用は本書タイトルにもなった「幸福論」という随想の一節。たった7枚の何気ないような話(文章)のなかに、ハッと自分の日常生活や思いと繋がる瞬間がある。
核家族化が進む中で、深く人生について語り合うことができる"おじいちゃん"を持つことは難しい・・・。ちょっと難しくても、卒業・入学祝いに、子供たちにプレゼントしたい本。
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CREAという雑誌の読書特集で、中谷美紀が「読んでいて幸せになる1冊」と書いていたのが妙に心に残り、うん十年ぶりに読み返してみました。
ヘッセを読んでいたころって中学生くらいで、文学少女を気取ってスタンダールとかトルストイとかカミュとか太宰とか芥川とか、とにかくそういう背伸びした読書がマイブームでした・・・いや、今思うとハズカシいですけど
(どこまで内容を理解していたのかは不明ですが(^^;)
すっかり忘れさっていたので、今回は新たな気持ちで読みました
まあ、どれもこれも丁寧に書かれていること!
この人は本当に一字一句、言葉を文字を大切にしているのだなぁと感心ばかりしておりました。
Glück(幸福)という言葉が、彼にとってどれほど美しく重みのあるものかという事が、切々と語られている『幸福論』を読むと、自分がいかに日々、言葉も文字もぞんざいに扱っていたかという事実を思い知らされて少し反省しました。
それからは文字を、少し気をつけて丁寧に書くように心がけるようになりました(ああ!私って本当に、影響されやすい!)
こんなに繊細な人は、生きるのが大変だっただろうなぁ。
人一倍に喜びや美しさを感じる心があるから、人一倍、苦しみや悲しみも受けざるを得なかったのでしょうけれど。
ヘッセは言葉を操る言霊師とみたり。
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あらゆるものから自由であり得た子供時代の貴重な体験を回想しながら、真の幸福とは何かを語る『幸福論』をはじめ、人間として文学者として、幾多の危機を越えてきたヘッセが、静かな晩年に日々に綴った随想と小品全14編を収録。
ヘッセの随想録ということで、彼の生活を少し垣間見ることができたかのように、とても読みやすく、おもしろい作品だった。
彼の今までの作品に込められた、人間への愛や自然との共生を解くカギが、この随想録に秘められているような気がしてならない。
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短編集。
お勧めは「幸福論」と「小がらす」。
ストイックでもなく、エゴイストでもなく、ニヒルでもなく、なんともいえないすばらしいバランスを保った生き方。
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『車輪の下』で知られる
ヘルマン・ヘッセのエッセー集。
正直とっつきにくく、何度も挫折した。
ただ、触れて行く中で、
次第に味わいが増した。
幸福を少年期のあらゆる束縛を
離れた一瞬にして永遠たる時の中に見出す。
まとめると『幸福は 時間を離れた 時の中』といったところでしょうか?
【今日の一冊11『幸福論』2016/01/09】
『車輪の下』『ガラス玉演戯』で、
知られるノーベル賞作家
ヘルマン・ヘッセのエッセイ集。
タイトルとなった「幸福論」、
宮沢賢治「永訣の朝」を彷彿させる
「マルラのために」など14編。
その中から、
「日本の私の読者に」に
ついて、少しご紹介を。
1957年にヘッセ80歳の記念に、
全集を出したいと伝えたところ、
「自分の年齢では明日
まだ生きているかどうか、
まったくわからない。
それゆえお望みの序文を
今のうちに書いておきました」
と寄せられた。
ヘッセのユーモアと
心遣いを感じさせる。
…
東方と西方との間の
真剣な実り多き理解は、
政治的社会的領域において、
私たちの時代の大きな
まだ達成されない
要求であるばかりでなく、
それは、精神と生命の
文化の領域でも、1つの要求、
緊要な問題であります。
今日では、日本人をキリスト教に、
ヨーロッパ人を仏教や道教に
改宗させるというようなことは、
もはや問題でありません。
私たちは改宗させたり、
改宗させられたり
すべきではありません。
そういうことを欲しもしません。
そうではなくて、
心を開き、広げるべきです。
そうしたいと思います。
東方と西方の知恵を、
敵意をもって抗争する
力としてではなく、
実り多き生命が揺れ合う
両極として、私たちは
認識するのです。
ヘルマン・ヘッセ
……
東方=中東、西方=欧米、
と考えれば、その間に立つ
「日本」と考えれば、
今に通じる思想におもう。
もう、60年以上前の話で、
人類の進歩と、
個の時間軸の違いに
忸怩たる思いがする。
ただ、「問題」ではなく、
「可能性」として向き合うことが、
できれば、何かを変えられる
かもしれない。
そんな風に考えている。
…
#viewpoint
#communication
#resource
#ヘルマン・ヘッセ
#幸福論
#マルラのために
#日本の私の読者のために
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幸福とは何か。没時間性とは何か。どういうときが幸福なのかをヘッセ流に書いたものです。こういう幸福論もありかなと、しばらくはかぶれながら過ごしました。一理ある幸福論です。
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☆二つなのは、翻訳作品にありがちな、小難しい日本語で読みにくいため。
内容は納得させられることが多かったです。
こんな語り合えるおじいちゃんが身近にいたら、老いていくことが楽しみになるかも。また、貴重な若い「今」を存分に味わうためのアドバイスをもらえそう。
ヘッセの名前はもちろん知っていたけど、作品には初めて触れました。
過去に書いた作品の背景などが多々書かれているので、他の作品に触れた後の方が味わい深いかもしれないです。
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心温まる話の小品集でした。でも老人の視点から人生観を描いてるので、むしろ人生これから!!って考えてるわたしには共感できない部分がたくさんあって難しかったような気がします。小品集の中では題名にもなってる幸福論が一番好きでした。
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読んだ印象は日常のささやかなことを綴るエッセイ。
真面目だけどちょっとお茶目なおじいちゃんと話しているような気分になります。
結構スキ。でも若い子には退屈かも知れない。
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読んで幸せになれるような本ではないけれど、孤独な人の本だろう。
ぼんやりと瞑想にふけるような気持ちにさせてくれる本だ。
本は気分を変えてくれるが、気分が本を探してくれるということもあるんだと思った。ヘッセの作品はそういうものが多い