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いろんな「さきちゃん」たちが、それぞれのこれまでを抱えながら、それぞれのこれからを歩き出すまでの物語たち。
どの「さきちゃん」もみんなちがう「さきちゃん」だけど、心の片隅にきっと一生消えることなく在り続ける「優しさ」のようなものが似ている。
きっとこれがよしもとばななさんの優しさなんだろうなと思った。
よしもとばななさんはあとがきに「基本的にはきつい時代をなるべく軽々と生き抜こうとするさきちゃんたちに優しい気持ちを託して・・・」と書いていたけれど、この世界に描かれている「時代」はきついと感じられない。
悪い意味で言っているのではなくて、それこそまさに「さきちゃん」たちがこの時代を真面目に軽々と生きているからなのだと、最後のあとがきを読んで感じた。
キーポイントは、世界を大きくとらえることなのだ、きっと。
せせこましい自分の世界だけで起きていることを眺めるのではなくて、大きな世界の中に起きていることと自分をおいて、それで少し遠くから眺めること。
「さきちゃん」たちに教えてもらったのは、そういう生き方のような気がする。
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5人のさきが登場する短編小説。
(最後の作品には2人のさきが登場するので実際には6人)
どのさきも素直でいい子。
行方不明になった昔の男友達の部屋を訪ね、部屋にあったギリシャ土産の海綿からその行方を透視する早紀。
嫌われ者の叔母さんが亡くなり、持ち物処分のために家に行ったらおばさん制作の鬼の置物だらけ。しかしその生活ぶりと置手紙から、実は愛にあふれた人だったことに気づく紗季。
父母の離婚後も父方の祖父母と一緒に住み、近所の人たちに無料で豆スープを提供するのを手伝う咲。祖父母がスープを作れなくなった後は母が受け継ぎ、父も時々手伝いに来る。父には新しい奥さんがいるが、祖母似のとても感じのいい人。登場人物はみんないい人で、小川糸の小説を彷彿させるまったり小説。
病気のため子供を産めない体になってしまった沙季。子供が好きなので孤児院で働いている。そんな彼女を天使と思い、大事に思ってくれるバツイチ男に夢の中で救われる。(彼の元妻は鬼嫁だけどね。)
仲の良かった双子の兄が亡くなりしばらくして、10歳になるその娘さきが家出のようにしてうちにやって来た。母親に反発して「埼」という同じ名前の叔母を頼ってきたのだ。祖母が作るエビピラフを食べ、将来はふたりでエビピラフ屋さんを開こうなどと勝手なことを言っている。ばかなことをと言いながら、埼もまんざらでもないらしい。
すべての作品に猫村さんでおなじみ、ほしよりこさんのイラストが挿画されている。ちょっぴり寂し気な女性の姿が印象的。
嫁に行った娘さきが、部屋に残していった本です。
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0022
いろんな「さきちゃん」の話。癒しの豆のスープと表題作が好き。
同じ名前の友達って何人もいるけど、性格とかがそれぞれ違う。その名前の音の響きや世間的なイメージもある。
でも全部その子らしい名前になってるんだよな〜。
色んな同名の子を思い出す話でした。
あと、ほしよりこさんのイラストが素敵です。
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さきちゃん、題名だけで惹かれた。私の名前もさき。しかも平仮名で。見たことない私以外で。それなのにこの小説ではさきがいる。読んでみると、咲、早紀、崎、なと色んなサキがいた。皆んな大きな目立った人生では無いけど、今を生きてる。それぞれかけがえのないひと時を大切な人と過ごしている。なんかいいなと思った。最後のさきは私とは全然境遇は違うけどなんとなく共感できるところがあった。もし、名前が違かったら共感しなかったかもしれない。名前が同じってだけで勝手に親近感が湧いた。一気に読めて、いい本に出会えた。
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喪失を埋める物語が多いイメージがあったけれどなんとなく希望があるのがいい。
優しい夜といった感じ。
皆違う"さきちゃん"なのに皆女神みたいに崇めたくなる特別な感じがして好きだ。
ほしよりこさんのイラストがその雰囲気を決定付けているような気がする。
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「さきちゃん」が主人公の短編集。世知辛い世の中だけれど、この物語を読むと、ほっと気持ちをほぐして貰ったような気がしました。すこしの不思議な奇跡と、人との繋がりなど、自然と前を向けるお話。
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けっこうきつくても面倒くさくても、人間って生きていけるものだなと思った。とても優しい気持ちになれる、また読みたい。
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天使とさきちゃんたちの夜がすき。
沙季さんは僕の天使でした。
なんて、言っちゃう鈴木さんかわいすぎる。
スキップも。
エビピラフ食べたいな。
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『癒しの豆スープ』が特に好きでした。
心情描写の繊細さに驚く。吉本ばななは心の輪郭を知っているのか、と思うくらい。
優しさの中に隠された鋭さにハッとさせられる一冊。
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大好きな短編集!さまざまな家族の形、愛の形を感じる。
『鬼っ子』を読んで
どうしても宮崎の青島に行ってみたくなり旅行した。鬼の洗濯板は本当に不思議な削れ方をした岩で不思議だった。「蘇鉄には必ず小鬼がいる」のかなと思いながらじっくり見つめた。
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とってもとっても、とってもよかった。
ばななさんの文章、表現、言葉の1つ1つは
どうしてこんなにもスーッと入ってくるんだろう。
自分の大事にしたい部分、いま向き合っている壁や
消化しきれない何かが反応するように
あっという間に包み込まれてしまう。
優しさだけじゃなくて、時には厳しい目線もあるからこそ安心できる。
物事の表と裏、人間の美しさと醜さとか
そういうものはいつだって隣り合わせで
これからどうなるかなんてわからないし
その時に自分がどんな感情を抱くのかもわからない。
日々いつも思う。人間って、生きるって大変だし面倒なことも多いなぁって。
そんな世の中に立ち向かうチカラがこの作品には
たくさん込められていて
明日からまたがんばろうって、無理することなく自然体で心からそう思えた。
どの話も好きなんだけど
「さきちゃんたちの夜」の崎に
自分を重ねて読んだ。
わたしも、長年の自分のペースが
確立されているからそれが乱れようものなら
動揺したりもする。
だけど、その乱れには新しい風を運んできてくれる心地よいものだってあることを思い出した。
日々たまっていく疲れと重み。
そんな今、この時にこの作品を読めたこと。
なんだかそれだけで、これからすべてがうまく回り始める予感すらしてくる。
ばななさんの言葉1つ1つには
そんな不思議ななにかがきっとある。
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とても素敵な文章だったが、話の内容がイマイチだった。
「たまには人生が咲にとって甘くないと、やっていられないよね。」
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「とりあえず、一回気持ちをそらして楽しいこと考えよう。」私は言った。「お菓子やジュースでも買って帰って、好きなDVDでも観て、楽しく過ごそう。」「大人になったら、そういう小さな楽しみが大きな悩みを消してくれるの?」さきはまっすぐに私を見て言った。本気で聞いていることがわかったので、いやみを言われているとは感じなかった。
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色んなさきがいた
やはりばななの作品は現実味があまり感じずファンタジーかなと思えてしまう
自分と同じさきがいないか探すと、まさかのあとがきに同じさきが登場して嬉しかった
表紙がほしのよりこっていうのもいい
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登場するいろんなさきちゃん達みたいに、
いろんな〇〇ちゃんがいて、私もきっとその1人で、みんなそれぞれ自分の人生を生きているし、
いろいろあってもとにかく生きていかないといけないのだと感じました。
どんなに辛くても本気で死にたいと思うことは無いし、落ち込みながらも割とポジティブに生きてる方だけど、それでもやっぱり落ち込んだり、どうしようも無い気持ちになった時にまた読み返そうと思える作品、
そう思いながら読了した数日後に、人生で1番理解できない不幸な知らせがあり、不思議なタイミングで読み終えていたのだと今では感じる。
保育園から30歳になる現在までずっと一緒に生きてきた親友が亡くなり、2人だけで共有している思い出が多すぎたので、ずっと血を流しながら生きてしまっている感覚で過ごしていました。
心に刺さる本や言葉がいくらあったとて、それらは現実を解決したり救ったりしてはくれないなと、正直思いながらも、それでも読んでいてよかったとも思いました。
吉本ばななさんを好きになったきっかけの、キッチンと同じく。
正面から向き合うことだけを美化した言葉ばかりではなく、生きるために、自分のために、逃げ道だったり、とりあえず…という考え方は時として大切で、自分や自分の大切な人を救うと思いました。
素直な表現が良かったです。
ーー本文からーー
一個でも楽しいことを増やしておけば、逃げ場を増やしておけば、たいていのことがかわせると思うから。
全てが面倒くさい。でも、つまりはそれが生きていくってことなんだ、それがわかるといっそうめんどくさい。
兄の分まで生きるなんて私には決して思えない。
ただ、面倒だなと思いながら自分の人生をひたすら生きるだけだ。
面倒の海を意外な方法で乗り越えながら、一見超平凡に、時に大胆に
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私ごと含めての記録。
先の自分のために。
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