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下心が招く経済政策の破綻
2016/06/21 08:16
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:菜摘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
安倍政権の経済政策には卑しい政治的下心が動力源として潜んでいる。安倍晋三という政治家としては屈指の名門出の男が大日本帝国を古き良きものとして捉えた結果、安倍政権の経済政策が目指す目標は「強い経済」「成長する経済」「世界一の経済」という大体において昭和後期のモーレツに働き、バブルの膨張に浮かれ、高速道路網やテーマパークの建設で国土の眺めを一変させてゆく、そういった時代の再現狙いとなってしまっているのではないのだろうか? 著者浜矩子氏が懸念するのは、昭和後期の日本は戦後の荒廃から立ち上がるための必然が生み出したモーレツがあり、民間企業の活力が強い成長力を生み出し、結果的に世界一の経済力を達成するに至ったのだが、現在の日本はなんだかんだ言っても世界の中では豊かさを享受していると言わざるを得ず、貧困から出発した当時の日本を再現するのにはかなり無理があるのではないかということだ。為政者の間違った思い込みのため政策を歪めてしまうこと、それを浜氏は政治的下心の作用と表現している。
さてこの辺で浜氏が勇敢にも安倍首相に捧げた愉快な名前アホノミクスを僕も使わせていただこう。かつてレーガノミクスと呼ばれたアメリカの経済政策があった。あれは巨大で無駄の多い政府組織を合理的に簡素化し「小さな政府」を作ろうという明確で革新的な目標があった。ところでアホノミクスにはそのような明確な目標はあるのだろうか? 浜氏によるとアホノミクスは江戸時代の悪代官と悪徳商人越後屋が悪だくみの談合をし、それの達成に向けて庶民に安い給料で重労働を強いる、そういった類の経済政策であるというのだ。
さしづめ日経連クラスのメンバーに入っている大企業が越後谷さんといったところであろうか? 悪代官の経済政策はとりあえず越後谷さんを喜ばすために法人税を次々と引き下げてゆく。一方、庶民が払う消費税には増税をしようとしている。
最近これの延期を言い出したが、悪代官にとっては国の財政よりも人気取りが大事なので(悪役としては何とも中途半端だ)目先のことで国の進路を誤らせることなんぞは意に介さない。悪代官の本性がここにはより鮮明に表れたと言えるだろう。
なお当時の民主党岡田代表が先手を打ったつもりなのか、消費税増税の先送りを言い出したが、悪代官を討つべき桃太郎侍になるには間が抜けすぎていて話にならない。悪代官アホノミクスは得たりとばかりに「その話に乗って遣わすぞ」と言い出す始末なのである。
実はバカ侍岡田の登場は本書の発行時期の関係で書かれていないことなのだが、ことほど左様に日本の財政悪化は深刻な状態になっている。浜氏は日本国債の破綻に怯える金融機関の反乱がおこる可能性を指摘しているが、三菱UFJ銀行が国債買い入れに関する特権を返上したのはつい数日前のことだ。特権を与えられることと引き換えに国債を買わされる義務を負うことを嫌ったのだ。(6月10日前後だったと記憶している)まさに浜氏の予測が的中した。海外格付け機関による日本国債の格下げ報道も今後相次ぎそうな雲行きだ。
為替市場では目先的に円が買われているが、円安を喜び円高には渋い顔をしていればよかった呑気な日々はいつまでも続くものではない。アホノミクスの下請け機関に成り下がった日本銀行が毎年80兆円もの買い増しを続けている日本国債の保有残高は2018年には日本のGDPを上回ることになるという。浜氏はその時こそアホノミクスの破綻が決定的となるのかもしれないと予測している。
どうなる
2016/06/24 16:35
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あくあ9いっぱい - この投稿者のレビュー一覧を見る
イギリスがEUを脱退してしまいました。やはりギリシャみたいな怠け者のために働くのがばからしくなったのかもしれませんね。移民もじゃんじゃん入ってくるし。ドイツはイギリスより移民も受け入れてるし所得も一位です。さあどうなる。この本を読んでみればわかります。
どう備えたらいいの?
2016/10/26 16:39
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワタヤン - この投稿者のレビュー一覧を見る
浜氏の主張は一貫していて気持ちいい。アベノミクスはなぜアホノミクスなのかがよくわかるように説明している。専門的な内容が一般の人にもわかるようになっている。しかし、この手の本は総じてそうなのであるが、「一般の人たちが政府の悪政に対してどう対処したらよいのか」がよくわからない。恐慌やハイパーインフレに備えて、農業を始めて自給自足の体制をとるか、極端な円安に備えてドル紙幣を家庭用金庫に貯めるくらいしか思いつかない。方策を具体的に教えていただきたいものだ。
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