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【現代最高の知識人の最新作。日本オリジナル版】ソ連崩壊から英国のEU離脱まで、数々の「予言」を的中させた歴史家が、その独自の分析の秘訣を明かし、混迷する世界の未来を語る。
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ウクライナ問題やトランプ現象等、昨今の大国は「グローバル」から「ネイション」へ回帰しつつある。言うなれば「ソフトナショナリズム」とでも言おうか。かりにそこまで大げさじゃなくとも、主権を守るためにEU離脱を決断した英国の姿勢はなんら不思議ではない。むしろ連合という名のドイツ支配圏と化してしまっているEUこそ危うく、国家的アイデンティティの見えない構成国こそ危険であると著者は説く。人口学という視点からソ連崩壊、リーマン・ショック等を予言し的中してきたからこそ、その説得力に鳥肌がたつ。だが一方で、ナショナリズムが善というわけではなく、むしろ暴走の危険をはらむことを忘れてはならない。そして著者がこのタイトルから本当に言いたかったのはおそらく「問題はISではない、フランスなのだ」。他人を侮辱することと報道の自由とを履き違えるフランスはいま、経済危機と宗教の空白を同時に迎えている。これはナチス台頭を許したかつてのドイツとオーバーラップする。そしてアジアでは中国による挑発行為の連続。ふたたび全体主義が台頭する暗黒の時代がやってくるのだろうか?
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最近、著作がいろいろ出たり、雑誌に書いていたりするのは知っていたが読むのは初めて。家族のあり方と国家を結びつけるというおもしろいアプローチ。それで、ソ連崩壊とかアラブの春とかを予言し、今回のイギリスのEU離脱も。多少難しく書かれている部分もあるが、インタビューの採録などはわかりやすい。いろいろと考えさせられる一冊。
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前作に続いて独自の視点で欧州を中心とする世界の動向を解説している。
ただ簡単な本ではないと感じた。欧州のことについての基礎知識を積み上げてから、再び読んでみたい。
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グローバリゼーションの崩壊から未来世界について、人口動態、家族形態、教育、宗教観など多彩な指標からデータを分析して解説すると共に、著者自身の学問的背景についても語り、世界を経済だけではなく広い視野で観る重要性を説きます。
地域に根付く家族構造によって、共産主義になったり、教育水準が高くなったりするなどとても興味深い考察が詰まっている好著です。
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新たな歴史的転換をどう見るか?
人口論からの解析、トッド氏の独自の言説をまとめた本でした。
1 なぜ英国はEU離脱を選んだのか?
2 「グローバリゼーション・ファティーグ」と英国の
「目覚め」
3 トッドの歴史の方法――「予言」はいかにして可能
なのか?
歴史家トッドはいかにして誕生したか?
国家を再評価せよ
国家の崩壊としての中東危機
4 人口学から見た2030年の世界
――安定化する米・露と不安定化する欧・中
5 中国の未来を「予言」する――幻想の大国を恐れるな
6 パリ同時多発テロについて――世界の敵はイスラム
恐怖症だ
7 宗教的危機とヨーロッパの近代史
――自己解説『シャルリとは何か?』
という内容ですが、経済学的解析の限界性があり、人口論からのアプローチは、説得力があります。
フランス人でありながら、フランス国内では評価されないトッドさん、日本との親和性はいいようであります。
彼の言っていることには、賛同できる部分が多々ありまして、楽しく読むことができました。
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歴史人口学者エマニュエル・トッド氏の来日公演の内容等を本にまとめたもの。
グローバリゼーションをけん引してきた張本人である英米が逆方向へ舵を切ろうとしている昨今の国際情勢を、社会科学と歴史的考察で分析しています。
ここ数年、マスメディアといわゆる知識人の思考パターンは、リベラリズム、グローバリゼーション、ポリティカルコレクトネス等を「絶対正」として繰り広げられてきました。
しかし、歴史や文化、教育、芸術、宗教の観点がごっそりぬけおちているのです。
トッドは、Brexitはマスコミが言うような大衆の気まぐれな失敗などではなく、これまでも歴史を切り開いてきた英国の目覚めであるとしている。
また「私はシャルリ」は、下位の社会階級の人々に対して利己的な態度をとる中・上位階級の人々による無自覚な差別主義の発露であるとしている。
ドイツ率いるEUの行き先は?
先の見えない歴史的転換点で、はたして日本はどうすればいいのか。
マスコミ等が拡散させている言説では何かしっくりこないモヤモヤを感じてしまう人は、ぜひ読むべき本であると言えます。
※ちなみに、トッド氏はフランス人です
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最近読みはじめたトッド本、3冊目。前の本より手前味噌感がなくもないが、明快な主張は良い。イギリスとドイツ、アメリカ(ついでに日本も)を中心に、イギリスEU脱退直前の状況を分析する。
現在、まさに脱退後の混乱状態にあるので、続書が出るはず。これをぜひ読み、比べたい。
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20170106〜0118 アラブの春、ユーロ危機といった事象を予言していったエマニュエル.トッド氏の時事論集。ドイツの頑なな財成規律主義が、他のユーロ諸国を危機に陥らせていること、氏の母国フランスは中央部と周縁部の二つに分かれていること、などが示されている。この議論を読むと、日本人は実に宗教的な国民なのだと考えさせられた。
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トッド氏の著作3作目にして一番わかりやすく
あっという間に読むことが出来た。
個人的な難易度としては
本作<「ドイツ帝国」が…<シャルリとは…
トッド氏の著作は毎度だが
客観的な数字、統計を基にしており
大変説得力があった。
盲信することというのは危険だと思うが
トッド氏の言っていることは非常に確からしいことと思う。
予言していた!などという帯に違和感はあるが
まぁ手に取るためのふれこみとしては仕方ないのかしら。
とにかくまぁ面白かったし為になった。
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グローバリゼーションの崩壊から、
『多様性の共生』へ。
人類学的見地からの、家族構成、家族システムによる相違を言及した視点は、非常に感心させられた。
コチラの本は、これまでのと違って、非常に読みやすく、個人的にはほぼ納得がいくものであった。
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短編や講演をまとめた為か、体系だった論点というより、気付きをもらえる本。
自由を強制される西洋に対し、自由に限界があると認識している日本の方が内面的に自由でいられるというのは、欧米はポリティカル・コレクトネスが行き過ぎてしまった、とも重なるのだろうか。
大家族主義の国家で共産主義が発達し、各家族主義の国家では発達しなかった、というのは結果論では納得できるし、EUの移民許容度を内婚率(イトコと結婚率)で説明するも興味深いが、その論点だけの説明は、危険なプロパガンダと感じた。(すべて、それが原因なの?)
本人の主義にのっとり、多様化した視点を聞きたい。
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リベラルと言われる人々の主張に、うんざりする今日この頃ではあるが、じゃあそのうんざりする気分というものは、どんな背景から湧き上がってきて、どう言語化できるものなのか、ということをはっきりさせておきたく、読んでみた。
なんだか分かるような、わからぬような…
スッキリ、とはいかなかった。
もう少し考えてみたいと思う。
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■問題はポピュリズムではなく、エリートの無責任さ
英国EU離脱に象徴される大衆の抵抗を「ポピュリズム」という表現で説明しようとする向きもありますが、私はむしろ「エリートの無責任さ」こそが問題を理解するキーワードだと考えています
どんな社会でもエリートは特権を持っています。しかし、同時に社会に対して責任を負うべき立場にあります。ところが、最近では指導者たちが自分の利益のみを追求するようになっている。ポピュリズムよりも、そうしたエリートの無責任さこそが問題です。
注目に値するのは、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長に代表されるエリート層の一部が民衆側とともに離脱を叫んだ点です。
イートン校、オックスフォード大学出身のジョンソンは、英国王室にも連なる血筋の持ち主で、紛れもないエスタブリッシュメントの一員です。そんな彼がエリート層の少数派として民衆側についた。政権与党である保守党議員の半分くらいがEU離脱派に名を連ねた。だからこそ、イギリスはポピュリズムから免れつつあるのです。
これが、私が羨望してやまない、国家の自己改革のために登場するリーダーの姿です。イギリスには、常にウィンストン・チャーチル、あるいはボリス・ジョンソンのような政治家が体制内にいます。フランスにとって問題なのは、エスタブリッシュメントの中から、大衆の利益をあえて引き受けるエリート少数派が出てこないことです。
フランス国立行政学院などのグランゼコールは、たしかに優秀ではあるけれども、尊大で他人を見下すようなエリートをコンスタントに輩出しています。現代のフランスが、今後イギリスのようなリーダーを生み出せるのかどうか、私には自信がありません。
■英国の「目覚め」に続け!
イングランドから始まった産業革命は、欧州全体を経済的に一変させました。そして、1688年には名誉革命によって議会主義の君主制が確立されました。欧州各国で採用されている、近代的な民主主義の出発点はイギリスにあったのです。1789年のフランス革命の夢と目的は、政治的近代化のモデルである英国に追いつくことにありました。そのイギリスが、自ら先鞭をつけたグローバリゼーションの流れからいち早く抜けようとしている。イギリスの国民国家への回帰は、歴史的にも最重要の段階であると言えます。
私は長期的には楽観主義者ですから、近代国家の再台頭というモデルについて、いかなる疑いも持っていません。イギリスに続く「目覚め」がフランス、そして欧州各国で起こることで、ドイツによる強圧的な経済支配から「諸国民のヨーロッパ」を取り戻せるはずです。それこそが欧州に平和をもたらす、妥当だと言う意味で理性的な解決策であると私は確信しています。
■歴史を動かすのは中産階級
中産階級とは、所得や教育水準がある程度高く、階層として一定の規模を持った集団です。この階層が歴史の変動を左右しているのであって、この階層を考察しなければ歴史の現実は見えてきません。中産階級に比べれば、上層の貴族層も、下層の庶民層も、現実社会への影響という点ではさほど重要ではありませ��。現在のフランス社会が閉塞状況にあるのも、中産階級に原因があるのです。
「1%の支配」という超富裕層とそれ以外との格差の問題は、確かに存在します。まったく不公正な格差です。しかし、このことを指摘したからといって、「西洋先進社会は閉塞状況に陥っているのに、なぜみずから方向を変えられないのか?」という問題の説明にはならないのです。この問題を解くには中産階級の分析が不可欠です。つまり、1%の超富裕層の存在を許し、庶民層の生活水準の低下を放置しているのは、中産階級だからです。
「中産階級こそが歴史の鍵を握っている」ということは、歴史を眺めて確認できます。ナチズムは中産階級の現象でした。フランス革命も同様です。日本の明治維新も中産階級に主導されたものだったはずです。上級武士ではなく、下級武士という中間層が中心的役割を担ったわけですか。
■核家族と国家
「核家族」は、それぞれバラバラに存在するのではなく、ある大きな社会構造の中に存在している。これはいつの時代にも言えることです。
イギリスは、最も早く産業化し、最も早く貧者救済施設を創設した国ですが、それが、絶対的核家族がそれだけでは存続できないことを当時の人々も理解していたことの証しです。公的・社会的な援助を受ける独居老人の比率が高いのが、当時のイギリス社会の特徴でした。
たとえば、直系家族の社会は、核家族の社会ほどには国家を必要としません。なぜなら直系家族自体が、いわば国家の機能を内部に含んでいるからです。家族としての団結そのものが「ミニ国家」的です。その分だけ、通常の意味での国家の必要性は弱まります。
核家族は個人を解放するシステム、個人が個人として生きていくことを促すシステムですが、そうした個人の自立は、何らかの社会的な、あるいは公的な援助制度なしにはあり得ません。より大きな社会構造があって初めて個人の自立は可能になります。「個人」とより大きな「社会構造」には、相互補完関係があるのです。
■ネオリベラリズムの根本的矛盾 - 「個人主義」は「国家」を必要とする
絶対核家族のアメリカは、大恐慌以降のニューディール政策から第二次世界大戦にかけて、黄金時代を迎えました。ちょうど国家が積極的に社会に介入した時代です。各国から移民が大量に流入した時代ですが、その移民たちがそれぞれの移民コミュニティから離れ、個人として自立するのを助けたのは国家なのです。1935年、ルーズベルト大統領が社会保障制度を導入します。それがその後のアメリカ繁栄の礎となりました。
しばしば、「個人」と「国家」は対立させられますが、国家が大きな役割を果たすことと、核家族システムのなかで個人が個人として生きることは、矛盾するどころか、実は相互補完的なのです。この点を、ネオリベラリズムの信奉者はまったく理解していません。
ネオリベラル革命がもたらした逆説的結果の一つは、核家族の進展、つまり個人の自立を妨げたことです。
この文脈では、核家族を、(1) 古いタイプの核家族と、(2)純化された絶対家族とに分けて考えると良いかもしれません。(1)が「パパ・ママ・子供の世帯」であるのに対して、(2)は、独身者、独居老人などといった「一人世帯」です。ネオリベラル革命は、ここでいう(2)のような世帯を否定するのです。
大人になれば、家を出て自立するのが、個人の自立を尊重する絶対核家族のアングロサクソン社会の特徴です。ところが、ネオリベラル革命の皮肉な結果として、成人になっても経済的に親元を離れられない子供が急増しました。ネオリベラリズムは、個人主義であると言われていながら、実際には個人の自立を、つまり個人主義を妨げているのです。
いま世界で真の脅威になっているのは、「国家の過剰」ではなく、むしろ「国家の崩壊」です。
いま喫緊に必要なのは、ネオリベラリズムに対抗する思考です。要するに、国家の再評価です。国家が果たすべき役割を一つずつリストアップすることです。
■サウジアラビア崩壊という悪夢
フランスの石油会社トタルの要請で、「サウジアラビアのリスク」という報告をしたことがあります。そこでとくに強調したのは出生率の激減です。1990年頃に6だった出生率が、現在、3を割っています。
サウジアラビアは昔ながらの部族社会で、一見、何も動かない世界のように見えます。保守的で、惰性的で、停滞している世界だと言われます。ところが、出生率の急減が示しているように、深層では大きな地殻変動が起きているのです。社会全体が不安定化しつつあります。
サウジアラビアは、西洋世界にとって、中東における重要拠点です。仮にサウジアラビアが崩壊すれば、その影響は計り知れません。ただでさえ国家建設がほとんど不可能か、極めて困難なこの地域に、さらに広大な「国家なき空白地帯」が生まれることになるからです。
これまで、アメリカとサウジアラビアは特別な関係を築いてきました。それはなぜなのか?
中東の原油を押さえるためだという説明がよくなされます。しかし、実はもともとアメリカは中東の原油にまったく依存していません!それも、近年、米国内のシェールガスの開発でエネルギー自給率を高めたからではなく、以前からそうだったのです。アメリカが中東の原油をコントロールするのはむしろ、ヨーロッパと日本をコントロールするためなのですよ。
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本書は書下ろしではなく、7編の時事論集である。すべてBrexitやパリ多発テロなど2015-16年頃のものなので、当然ながら似ている内容が多い。また、ほとんどが日本で収録または日本で発表されたものということで、日本に言及した部分も多い。
ヨーロッパを主にした世界情勢論、家族形態の歴史に基づく文明論、などが展開されているが、いかに日本人向けにアレンジされて読みやすくなっているとはいえ、決して理解が容易な内容ではない。編をまたいて繰り返されることで、辛うじてぼんやりと分かったような気にさせてくれるが、それは本書の主張を支持するものである。
氏の論調は自国では批判が多いようだが、世界は難しい問題に溢れていることだけは確かなようだ。