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辛口の経済学者として著名な浜矩子さんの最新刊。複雑怪奇な経済を読み解くために、歴史を探訪しエッセンスを引き出しながら現代につなげていくという展開。集中講義形式をとりながら、ミステリー小説のように現象と本質を明らかにしていく様は、読者を飽きさせないという点でも入門的な本としてもとても優れていると思いました。
最終講義で、筆者は日本経済を俯瞰した時に、まず目に飛び込んでくるのは「歪み」と指摘します。「豊かさの中での貧困」が進行する中、均衡回復と弱者救済が重要だが、しかし、強いものを優遇する今の施策は、さながら「富国強兵マシーン」のようと警鐘をならします。自己浄化できるかどうかは、一人ひとりが問題の本質を認識することと社会をそういう方向に向けていかなければならないとの提起は、その通りだと思いました。
経済関係の本はあまり読んでこなかったのですが、勉強せなあかんなと反省しました。おすすめの一冊です。
【目次】
・はじめに
・第1講義 オリエンテーション 経済の謎はどう解く?
・第2講義 経済学のはじまり
・第3講義 経済探偵の絵解き術
・第4講義 通貨(1) 通貨に命を吹き込むものは?
・第5講義 通貨(2) せめぎ合う通貨と通貨
・第6講義 通商(1) TPPの正体見れば
・第7講義 通商(2) 分断と排除の世界に引き戻されないために
・第8講義 租税(1) 政府は市場の「外付け装置」
・第9講義 租税(2) 税の体系に求められる哲学とは
・第10講義 財政(1) 財政赤字転落への道
・第11講義 財政(2) 社会保障費は「敵城の本丸」か?
・第12講義 金融政策(1) 移り変わる金融政策の常識
・第13講義 金融政策(2) 中央銀行は「政府の銀行」にあらず
・第14講義 日本経済の今日的風景