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この世界に溢れる少年犯罪の原因を探ることから始まった。「誇大自己症候群」と聞いて、「ただ自分を大きく見せたい痛い奴のことなのかな」くらいにしか思えなかったが、読み進めていくうちに、「これはそんな簡単な問題ではないぞ」と思うようになった。
自分が学生だった時のことを振り返ってみると、自分を大きく見せようとしている人や、とんでもないビックマウスの人がいたことを思い出す。その人たちの家庭の話を聞くと、「親が家にいなかった」「祖父母に育てられた」といった人が多かった印象を持っていた。当時なんとなくそういうことと関係があるのかなと思っていたが、その関係性について確信を得ることができた。結局は、人は一人では生きていくことができず、適切な愛情を受けながら成長していかなければならないということなのだと思う。愛情を受けずに大人になると、愛着障害がきっかけとなり、誇大自己に拍車がかかってしまう。これが野生動物であったら、自然界に適応できたということで、うまく生き残っていけるのかもしれないが、人間社会ではそうはいかない。やはり人間社会に適応していかなければ人間として生きていくことは厳しいだろうし、周りの人間も被害を受けることになる。
この本を読むことによって、自分の中に隠れていた「誇大自己」に気づくことができた。多かれ少なかれ人間の心の中には誇大自己が潜んでいるのだろうが、その誇大自己を認識できるかどうかが運命の分かれ道になることもあるのかもしれない。そういった意味で、多くの人に一読してほしいと思った。