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世の中には、いい加減に決着をつけてはいけないことがある
2005/08/23 05:30
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『地上生活者』とは、なんとも変わった題である。最初、小林多喜二の『党生活者』を意識した作品かと、直感として感じた。
作品の前半に、小樽文学館や小林多喜二などのことが繰り返しでてくる。やはり、『党生活者』を意識した題であることは間違いないと思う。
でも内容は違う。『地上生活者』は、地下にもぐって非合法の活動をしたことを描くのではなく、地上で合法的に生きていても、理不尽な生を多くの人間が強いられたという現実を描いている。帯にこう書かれている。長いが引用する。
「日本の植民地時代、樺太・真岡町まで流転していった一朝鮮人家族。愚哲は国民学校五年生のときに皇国少年として日本の敗戦を迎えるが、ソ連の侵攻後、一家はユダヤ人の協力を得て辛くもサハリンを脱出する。一族離散この体験と歴史の非常は、愚哲少年にははかり知れぬ罪意識を植えつける。在日朝鮮人としての自己形成がうまくいかぬこの未青年者と朝鮮戦争の勃発。戦後日本の、欺瞞と忘却の中で生きる愚哲の希望とは何か」
戦後の混乱期を懸命に生きる人々。日本に侵略され「日本人」とされた朝鮮人。終戦後、「解放」というもとで朝鮮人にもどったのも束の間、朝鮮人ということを隠し「日本人」として生きることを強いられた人々。
戦争が引き起こした惨劇には、いろいろなものがある。日本のことだけを考えていてはいけない。
小説の中でこんな言葉がある。「世の中には、いい加減に決着をつけてはいけないことがある。不明なことは最後までとことん原因を追究すべきだった。それが歴史上のことであれ学校内のことであれ」
いまだに日本が起こした戦争に対して曖昧にしようとする人たちがいる。これではいけない!
愚哲少年は、これからどう生きていくのか。「在日」少年の見た戦後日本、世界はどうなのか、続きが楽しみである。
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