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    みんなのレビュー1件

    みんなの評価5.0

    評価内訳

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    現状とのリンクを嫌でも思わせる作品、必読と感じさせる作品です

    2020/08/01 05:08

    1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

    投稿者:Nagi - この投稿者のレビュー一覧を見る

    twitterで医療関係の方がこの作品の感想tweetを「いいね」されていたのを見掛けたので興味が湧いて購入。
    丁度時を同じくしてhontoさんで1巻のみ期間限定無料お試し読みのキャンペーンをしてくださっていたのですが、1巻で読み止まれず全巻ポチっとしました。

    感想を書く前に、遠いいつか「過去の出来事」としてしか現在のコロナ禍を知らない世代の人が読んでくれることを想定しつつ(そんな未来とhontoさんのサービス継続を願いつつ)、現在の状況を簡単に箇条書きさせてもらいます。

    1)未曽有のウィルスCOVID-19がパンデミックを起こし、世界各国でロックダウンも起きている(いた)
    2)このウイルスは感染ピークが潜伏期間中にあり、発露で感染に気付いた時には、もう人に感染させている可能性が高い

    そんな状況下で、医療従事者の方々が様々なメディアで危機感を伝えてくれるのですが、第三者(=受け手)になかなかうまく伝わってくれない、という現実があります(ありました)

    これを踏まえ、この作品の感想をここから書きます。

    「情報」として伝えられる上記の事柄が、この作品では、主要人物たちの視点で「思いとともに」読者へ伝えられてきます。
    患者と直接接する医師や看護師、非医療従事の職員とその家族、オーバーシュートを打開すべく研究にまい進する疫病学者、感染区域に住む一般住人に、経営にも配慮せねばならない院長の視点・・・と、挙げ始めるときりがないので、以降は割愛、是非作品でご確認ください。

    実社会では「他人事」として今一つピンと来ない部分もあった「医療の現場」が、この作品ではドキュメンタリーなのかと思わせるほど生々しく表現されています。
    報道で、ぐったりとして床に横たわって仮眠を摂る医師を見て「大変そう。お疲れ様です」と思うことしかできなかったものが、この作品で玉木医師の患者やウイルスへの想いなどに読者が触れることによって、
    「仮眠ひとつとっても、その時間すら押しむ焦りや不安、恐怖や己の非力への憤り」
    など、これらの言葉では表現し切れない感情の度合いも含めて襲い掛かってくるので、読者を当事者へ引き込んでいく展開で「ウイルス以上に人の無関心と利己観念が怖い」と痛感させられる話でした。
    私は「感染区域の住人」のモブというポジションで読んでいたからか、為政者や感染区域外の人たちの無理解や無関心や自己保身が腹立たしくて仕方がなかったです。
    だから、作品の結末としてウイルス感染の拡大はどうにか防げ、事態は収束するのですが、収束の結末を喜べない読後感になりました。

    世間や一般住人は、実際に忘れられないトラウマになるとはいえ、「忘れる」ことを許されるし、忘れる努力をしてもいい。
    でも、医療関係者は、それすら許されない。
    後世に同じ思いをさせないため、知識や経験を残して今後に生かしてもらうため、向き合い続けなくてはならないんですよね。
    自身も、仲間や家族、これまでの立場、人によっては自分自身の命まで失いながら、それでも将来を生きていく人たちのために闘い続ける…という部分は、リアルの医療関係者も同じなのだろうと思うと、「1住人」として自分ができることをしなくては、と姿勢を正させられる作品でした。

    本当に、1人でも多くの人に読んでいただきたいです。
    自分の不安を他者にぶつけず、専門家や為政者に丸投げするのではなく、「自分もできることがある」という自責の念を持って日々生きようと思わせてくれる作品でした。

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