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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
荘厳な音楽が奏でられ、厳粛で神聖な雰囲気が漂う物語集。『睡蓮』はある女性画家の生涯が死から幼少時代へと逆流し語られている。概ね書簡や記録のやりとりだが、群衆が大多数の意見にいかに流れ易いかがよく分かる。彼女はあの男に抹消されたと言っても過言ではない。死んでからの評価なんて無だ。『太陽馬』は物々しい余韻が残る。私は幸運を信じる。さて『猫舌男爵』これは実に面白い。訳者ヤンくんは情熱的で破天荒。周りの人々もなんだかんだ自分勝手。まわりまわって幸せを運ぶ『猫舌男爵』だけれど、その内容を知る術はなし。気になるって!
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講談社から出ていた単行本の文庫化。講談社版の装丁も良かったが、文庫版も素晴らしい。
皆川博子らしさ全開の幻想短編集で、どれを読んでもハズレが無い。特に巻頭の『水葬楽』が好きで好きで堪らない……。
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皆川さんの作品は、よく幻想性が基調にあるように思いますが、よくもまあこれだけ無限の色調で書き分けられるものだなと驚かされます。そんな中にあって、『猫舌男爵』は異色(笑)。大真面目に遊んでいるのでしょうかw。“ハリガヴォ・ナミコ”って“ミナガワヒロコ”のアナグラムに思えてならないのですが…どうなんでしょ。
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「水葬楽」
「猫舌男爵」
「オムレツ少年の儀式」
「睡蓮」
「太陽馬」
皆川博子の幅の広さよ。
「水葬楽」「太陽馬」はどちらもひと捻りした幻想文学の手本。
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5篇の短編集。
読後に「ヤン・ジェロムスキ」の名前をググったのは私だけではないはず。
それから「エーディット・ディートリヒ」と、「ジークムント・グリューンフォーゲル」の名前も。
引用形式というスタイルで、史実や実在人物名もちょこちょこ出てくるもんだから、これははたして創作なのか? それとも史実なのか? と、訳が分からなくなってしまった人がいるに違いない。
「オムレツ少年」と「太陽馬」は歴史ものに分類できると思うのだけれど、これらも「史実」と「創作」の境目が非常に曖昧だったように思う。
特に後者の方では、ロシア・ソヴィエトの歴史を淡々と語る割と長いパートがあるのに、読後の印象としてはやっぱり幻想的なのだ。
それから「水葬楽」。読んでいるとふわふわした気持ちになって溶けて流れて行ってしまいそうな難解な幻想小説だけれど、
BackGroundPoemとしての詩句の引用が要所に挿し込まれることで、現実に引き戻されるような感覚があって、尚更頭が揺さぶられる。
この引用句が旧仮名遣いで書かれていることもあって、その所為か、時間軸も行ったり来たりさせられる感じだ。
こんなふうに、「実在と非実在の境目」、「史実と創作の境目」、「現実と幻想の境目」を曖昧にしてしまう仕掛けや効果が随所に在って、
それがこの作品集の、寧ろ皆川作品すべての特徴であり魅力なんだろうな、と思ったりした。
だからこそ、皆川作品を読んでいると、不安にもなるのだ。
物語の中のこの人は本当にいたのだろうか?
どこにいるのだろうか?
どこにあるのだろうか?
と、現実と小説の区別がつかなくなってしまうから。
そう思いながら文字を追って、彼らの後を追いかけていると、
いつの間にか自分自身が物語に迷い込んでしまって、
果たして自分は今、どこにいるのだろうか?
ということが、分からなくなってしまうのだ。
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短編集。表題作には実在する人物までもが登場し、大いに笑わせてもらいました。皆川作品で笑うのは初めてかな? 物語に酔う感覚は心地好かったです。
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「猫舌男爵」三周目。文庫化をきっかけに久しぶりに読んだ。
やっぱり「睡蓮」と「オムレツ少年の儀式」が好きすぎるんだけど、別のアンソロジーで読んだ「猫舌男爵」にどんどんはまってきた。ページが進むにつれてすべてが滑稽にとっ散らかるように感じて、けれど最後はみんな(たぶん)解放されて幸せ、みたいな。千街さんとか日下さんとか実在の人物が登場したり。あと解説ヤン・ジェロムスキって目次で見てすごくわくわくしてた。ヤン・ジェロムスキ文体そのままだった。ヤン・ジェロムスキ、架空の人物。
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初読みの皆川博子作品。なんとも濃密な短編集だった。幻想的であったり笑いがあったり…。正直難解な部分が多いが、それでも魅せられてしまう。「睡蓮」「太陽馬」が特によかった。この作家さんの、ヨーロッパを舞台にした話をもっと読んでみたいと思って早速購入!楽しみだ。
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怪しい雰囲気漂う短編集。
個人的に『水葬楽』『睡蓮』が好きでした。『水葬楽』は未来の死の概念のようなお話ですが、この先あり得るような怖さを感じました。どのお話にも時代が分からないところに感じる不安なような怖さを感じました。
表題作『猫舌男爵』は想像してなかった内容で、純粋に面白かったです。
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表題作以外の短篇は皆重苦しい雰囲気の漂う物語なのだが、ただの後味の悪い話で終わらせない、終盤に読者をハッとさせるような仕掛けを残しておくのがとても上手くてそこが素晴らしい 「オムレツ少年の儀式」や「太陽馬」のラストは情景が頭の中で映像化されるような鮮明さを持って迫り来る 「睡蓮」では作中の時代を遡りながら隠された真実が徐々に明らかにされてゆき、それに合わせて物語にのめり込んでゆくような面白さがあった 表題作の思わぬ大団円(?)に笑わされた
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何処の世界の、何処の時代の物語か見当もつかない摩訶不思議な物語5篇と解説を含めた短編集。 表題作を除けば、真面目な物語な筈なんだけれどレトリックに翻弄させられながら「読まされた」感の読後の物語集。 猫舌男爵の本当にありそうで絶対なさそうな話は秀逸。
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皆川博子は長編2冊読んでから本書を読んだけど、ほんとに巧いし面白い。重厚な背景が毎回素晴らしいから長編向きかと勝手に思っていたが、短編でもその世界観を作れ、そのうえ作風も変えられるとは。表題作はイロモノっぽいのでズルいが最高に面白いし、「水葬楽」は廃退的な空気感に埋没させるSFでいい。ほかの3篇も皆川カラーがしっかり出ている佳作だった。そして最後の解説にもひと仕掛けというニクさ。
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相変わらず素晴らしい。
『オムレツ少年の儀式』と『睡蓮』が特に好き。
表題作は皆川さんの小説としてはなかなか珍しい感じでしたが、純粋に笑えて面白かったです。
『太陽馬』はラストの情景を頭に浮かべるとなぜだか涙が出そうになりました…。
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2/13 読了。
純粋な水が注がれた密閉された箱の中で長期的安楽死を迎える技術が富裕層のあいだで常習化されている、そんな近未来SFの設定を、双子の兄妹をめぐる耽美的な悲劇に落とし込んだ「水葬楽」。ろくに日本語の読めない山田風太郎ファンのポーランド人青年が訳した、謎の日本人作家ハリガヴォ・ナミコの小説が発端となって引き起こる日波横断スラップスティック「猫舌男爵」。父を亡くして田舎から都会に出てきた母子の破滅をえがいた「オムレツ少年の儀式」。精神を病み、30年以上も精神病院に入ったまま生涯を終えた女性作家の一生を遡行していく「睡蓮」。中華風のおとぎ話と、ロシアでのコサックとボリシェヴィキの闘いがシームレスに交差する「太陽馬」。タイプの異なる短篇5篇を収めた短編集。
これ以外の結末はないにも関わらず、最後の段落でハッと胸を突かれる思いがした「オムレツ少年の儀式」が好き。いたってよくある<純粋な魂が都会に染まっていく話>なんだけど、腰にぶら下げた角笛と尾鰭の幻想を回収する手つきが見事で圧倒される。
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多彩で美しくて後味の良い短編集。扱うジャンル、文体、世界観、人物像なんかが見事に合致していて、ああ文で味わえてなんて嬉しい、とにやにやしてしまいました。