この本は書店のどの棚に並ぶのだろうか? ビジネス書か、漫画か?
2010/09/17 21:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る
twitter で知り合った漫画家・此花あかりさんの近著。個人的な知り合いの著書なので、ひょっとしたら少し贔屓目になっているかもしれないが、その点はご容赦いただきたい。
ホスピタリティの専門家である林田正光氏ほかの監修の下に書かれたある種の指南本なので、どうしても少し薬臭い面があるのは仕方がない。でも、僕の場合は「面白かった」というのが読み終えた時の端的な感想だった。
この本は書店のどの棚に並ぶのだろうか? ビジネス書か、漫画か?──多分ビジネス書だろう。しかし、正直言って読む前には、CS(顧客満足度)云々の御託が文章でダラダラ書かれていて、そこにちょこちょこ漫画が挿入されているだけの本だと思い込んでいたのだが、実際はまるで逆だった。これは初めのページから終わりのページまで全編漫画の本である。そして、各章の「幕間」に、この漫画の主たる登場人物のひとりであるコンサルタント・栗原まゆみの「講座」という形で文章による解説が2~3ページずつ挿入されているのである。
この手の本は往々にして、言わばマニュアル本/啓蒙書としての実用性とマンガ本としてのエンタテインメント性がせめぎ合う構造になるものである。ビジネス・マニュアルの面が強すぎると読んでいてあまり面白くないし、かと言ってマンガが強くなりすぎると論点がぼけてしまう惧れが出てくる。
その点、この本は本当に良いところで巧いバランスを取っている。いや、ご本人の談によると、あちこちと軋轢を生み、喧嘩もしながら描き上げてきたと言うだけあって、全面的に漫画が勝利している(笑)。漫画作品としての独立性が保たれて、それ単独でちゃぁんと面白いのである。もちろん、漫画家がただ描きたいようにだけ描いたのであれば、それは監修者とも出版社とも喧嘩別れになって終わりのはずだが、そうはならずに、ビジネス書として要請される点は100%実現した上で漫画としての作品性を保っているところがエライと思う。
主人公は木下若葉。とあるショッピングモールの運営会社のアラサー社員。勤続10年生である。その彼女が抜擢されてCS推進のプロジェクト・リーダーに任命され、敏腕コンサルタント・栗原まゆみの教えを受けながら、自らも学び、成長し、そして社業にも貢献して行く物語である。いろんなタイプの登場人物がうまく描き分けられており、読んでいて飽きない。特に若葉と半同棲している彼氏・藍田陽平との関係がなかなかステキである。
単発で終わるのは惜しい話だと思う。どこかで連載するような展開になってくれると嬉しいのだが。
by yama-a 賢い言葉のWeb
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素晴らしいー!!!わかりやすい。よくアルアル、こんな悩み。の対処法など、全部漫画だし。わかりやすい。
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三省堂にて物色中に発見。面白そうだったのでチェック。自分もサービス業なんですが、最近、「利益」を中心にした合理性ばかりを気にしていた気がします、CSって言葉の意味は頭で分かっていても、体験を通じて理解する、納得する、共感するといったプロセスが進んでいかないといけないんですよね。すっかり忘れてしまっていた(そして仕事で不足していた)大きな気付きが得られました。これで、うちの社長がESを考えてくれる人だったらいいんだけど、それは流石に無理だね。(笑
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テーマはCS(顧客満足)でありホスピタリティ。
最近よく聞く言葉だけど、理解できている人は
少ないのではないでしょうか?
その基本をマンガを通して説明されています。
自分ならどうするだろう?
主人公の若葉の立場に視点を置き換えてみたら?
そんな風に考えて読むと、より一層深く読めて
理解できると思います。
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う~ん、もう少しおもしろいかと思ったんだけどなぁ。べつに内容が悪いとかいうわけじゃなく、この本が想定している読者層と自分とのあいだにある隔たりが、自分が予想していたよりもずっと大きかった感じ。
おなじサービスやホスピタリティを扱った内容でも、自分はもともと接客業の現場の出身なので、現場レベルでの共感や納得ができるものがやはり好きなんだと思う。でもこの本は、現場にサービスやホスピタリティの意識を導入・浸透させたい「上の立場」の人に向けて書かれているのだろう。主人公が「現場の人」ではなく、統括的なCS推進プロジェクトのリーダーであることからも、それがわかる。
そのために、サービスやホスピタリティのとらえ方が「大きな枠組み」になっていて、それをストーリーマンガ形式1冊で扱おうとしたために、その枠組みを現場レベルへ浸透させる過程や、現場レベルでの「接客サービス業って素晴らしいと感じる気持ち」の描写まで踏み込むには、分量不足だったんだろう。結果として、あまたあるホスピタリティ本の上澄みをすくったような感じになってしまってる。
なんとなくだけどね、このコミックから「接客業・サービス業」というものへの愛情や誇りがあまり感じられないんだ。なんというか、実際に接客サービスの仕事をしたことがない人が、あるいは接客サービスの経験はあるけれどその仕事に誇りや愛情をあまり感じたことのない人が、頭だけでサービスやホスピタリティをとらえて表現しちゃったようなね、そんな印象を受けちゃった。
だからおそらく、接客サービスの仕事に誇りと愛情を持って、でもうまくいかないことも多くて毎日落ち込んだり苦しんだりしながら現役で働いている人、働いていた人には、物足りない部分が多いんじゃないかと思う。逆に、接客サービスの現場で働いたことがなかったり、働いてもあまり自分で楽しめなかったり、そもそもサービスやホスピタリティといったものに関心がないような人を啓蒙・啓発するための最初の一歩としては、悪くないかもしれない。
ただなぁ、やっぱりなぁ、タイトルに「サービス・マインド」をうたってるけど、ストーリー内での主人公の成長が「サービス・パーソン」としての成長ではなく「プロジェクト・リーダー」としての成長なんだよなぁ。その点でも直接お客様と接するサービスの現場視点ではなく、上から目線要素のほうが強く感じられるのがなぁ、自分にはもうひとつ楽しめなかったのが残念です。
おなじようにサービスをテーマに物語をつけたものなら『サービスマインドをたかめる物語』のほうが現場レベルのマインドには訴えかけるものが多いと思うし、現場へのプロジェクトの浸透といったテーマに物語をつけたものなら『幸せな売場のつくり方』のほうがマインド部分に刺さる。サービスを扱ったコミックなら主人公の佐竹城が日本に帰国したあとの『ソムリエ』のほうがサービスの持つ意味や影響力といったものを感じられると思う。