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20180304朝日新聞掲載
おかしなやつにならないと周りの人は気にも留めてくれない
、グサッときた。
最後の一文がどう続いていくのか
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数時間で一気に読了。
70年代、インドから米国に移民してきた家族。そろりそろりと現地の生活に馴染みはじめてきたころ、両親の期待の星だった兄が不幸な事故に見舞われる…。
作家自身の体験が色濃く映し出された、自伝的小説。
移民として暮らすということは、家の中と外とまったく異なる文化のふたつの世界で暮らす、ということだ。子どもだって家を出れば七人の敵がいる。移民であれば、なおさらだ。
それなのに、主人公のアジェは家でももはや安らぎを得ることはできない。変わっていってしまう父と母、子どもの目を通して描き出されるその姿で、読むわたしたち(大人)は両親の重い苦労と燃えるような苦悩を感じる。
とはいえ、これは一人の少年の成長の物語でもある。家の中にも外にも居場所を見つけられないアジェはあるときから読書に没頭することで現実世界を離れることを覚え、やがて「書く」ことに自浄作用があると気づく。悲しさと寂しさはあっても、若いひとが少しずつ成長していくさまを読むのは、やはり心楽しく救われる。
作者は、この本を書くのに13年という歳月を費やしたそうである。それを、ものの数時間で読んでしまっていいのか、と思わないでもないけれど、作者は喜んでくれる気がする。
訳者あとがきは必読。あとがきも含めて、この本は一冊の作品となっている。
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帯を読むと、兄の事故、そして介護生活が少年にもたらした苦悩を書いた物語と解釈されてしまいそう。
けれど実際は、おもしろ両親やガールフレンドの事、子供時代にありがちな体験を淡々と語る温もりある作品。
私も10代の頃に彼と同じような境遇になったからか、共感できる場所を探そうという思いが読み始める前からあったのだと思う。個人的に変な期待をかけてしまった作品。
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胸が苦しくなった。著者の実体験に基くとわかっているからなおさら。後書きを読んで、著者も翻訳者も私と同い年であることを知り、さらに苦しくなった。ここに描かれていることが、私が生きてきたのと同じ時に起こった真実の出来事であるということ。何の前触れもなく、その日、その時が来てしまい、そこから一家の人生が暗転してしまったこと。毎朝、新たな一日を迎えても、絶望的な状況が変わらないこと。それを負っているのは、特別ではない一家だということ。この作品を書き起こすこと自体にも、どれほどの心の痛みが伴ったのだろうと思う。今年一番心に響く本に出会ってしまったかもしれない。
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たかが3分。されど3分。その3分で少年の生活は
一変してしまう。
1970年代に家族でインドからアメリカにわたり
生活が軌道に乗り兄が有名な高校に合格した後に
兄は悲劇に見舞われ、一家はその兄の介護に
奔走することになる。
異国の地で差別を受けながらきょうだい児として
育っていく著者、崩壊するギリギリのところで
踏みとどまる家族、ガールフレンドとのやり取り。
なぜか一家を訪れるたくさんの人々
著者を成長させてくれるヘミングウェイの書物。
淡々と進んでしまう人生。
私も淡々とした中で強くありたいと思いました。
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同じようなありふれた不幸を経験したものとしては、心から共感できるものだった。
子どもに突然訪れた不幸は、もちろん人生を変えるが、その変わり方は親ときょうだいでは違う。親はとことん悲しみ、必死に状況を良くしようと努力する。生きることの中心が不幸な子どものことになる。が、きょうだいはどこか客観的に見てしまう。学校に行ってその不幸を一瞬忘れ、楽しく感じたりもする。親がすがるまじない師を滑稽だと思ってしまう。しかし、いつも100%楽しめるということはないし、自分が普通に生きることについての違和感を抱えながら生きることになる。
そのあたりが、本当にリアルに描かれている。
物語にカタルシスを求める人には薦められないが、きっとたくさんの似た経験をした人(訳者もそうだ)には、同じ後ろめたさを感じている人がいることは、救いになるのではないかと思う。
幸いにしてこういう経験はしないで大人になった読者は(あんまりこういう本を読みたくならないような気もするが)、こういう人も自分の身近にきっといる、学校でなんだか嫌なことばっかり言ってた嫌われ者にも、もしかしたら深いわけがあったのかもしれない、と考えてくれたらいいな。
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兄の事故が起こってから人生が一変してしまった家族のお話。移民が題材の本が割と好き。
きっ母国語ではない英語で書かれた本だから
簡潔な文章で分かりやすいのだろう。
それでいて美しく瑞々しい。
訳も素晴らしい。
そう言う要素が集まって作品が上質なものになってる。
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インドから移民としてアメリカに渡った家族は素晴らしい生活が待っていると期待していた。しかしプールで怪我をし脳に損傷を受けて寝たきりになってしまった頭の良い長男を家族全員で介護することになる。しかしそのストレスはものすごいもので、父はアル中になり、母は息子だけでなくそんな夫にもストレスをため夫婦はけんかが絶えない。主人公は寂しさや孤独を感じながらも成績が優秀だったためプリンストン大学へと進み、そんな家族から離れた生活を始める。彼は大人になりお金を稼ぎ、両親と兄を助ける。作家の自伝的小説である。
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自分も娘を家族を介護しているので、毎日の介護の途方もなさ、淡々と過ぎる日常の描写を親近感を持って読むことができた。
作者がモデルである主人公のアジェが作家として目覚めるくだりがスリリングでリアルだった。寝たきりの兄を入浴させている父のパジャマが濡れて、下着が透けて見えるようになる様子がを見つめ、自分たちの苦しみが文章になるのだということを発見するアジェ。
視点がグルリと変わる瞬間を捉えた場面だった。
図書館で手に取り、最初の数ページでこれはいいかも、と思って読んだのだが、思わぬ拾い物をしたな。
あとで気づいたけど、翻訳が、小野正嗣ではないの。
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貧しさ、移民生活、障害者、依存性、怒り、嫉妬、自己否定、他者否定、、、
人生で起こる出来事を、どう捉えるのか。
苦しみの中で、生きる家族。
目を背けるわけではないけど、読んでいて気持ちが落ちていく感じ。