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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
冷戦の真っ最中の東ドイツです。いまは、ドイツは一つになってかなり経ちますから、若い人たちは、にしどいと東ドイツといっても分からない人も沢山いるでしょうね。そのドイツを舞台に……というお話。音楽に関心無しの人もぜひ
期待が大きかった作品です。
2022/12/04 18:21
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投稿者:クッキーパパ - この投稿者のレビュー一覧を見る
旧東ドイツを舞台に、自分の好きなクラシックを題材にした力作だと思いますが、期待が大き過ぎたのか、少し残念な読後感です。グッと読ませる箇所は随所にあるのですが、なぜか集中できませんでした。もう少しコンパクトにしてスピード感を出した方が良かったのではないか、登場人物ももう少し絞って、その分、人物像を描いて欲しかったように感じました。また頭のどこかで「言語の壁はないの?」などと白けた感じが抜けきれずにいました。皆さんの評価が高いのも理解しますし、もちろん力作であることは間違いありません。
作曲家ヨーゼフ・ラインベルガーJosef Gabriel Rheinberger(1839-1901)登場のミステリに驚愕!
2021/04/30 10:38
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の音楽を求め、バブル期日本から冷戦下の東ドイツDDRに留学、ドレスデン音大でピアノを学ぶ眞山柊史。周囲には旧共産圏からの留学生ヴェンツェル、ニエット、李、そしてドイツの秀才イェンツ。お互い自分の技巧と音楽を切磋琢磨していく。時に激しくぶつかり、時に共感しながら。そこに教会で偶然出会った啓示のようなバッハを演奏する謎の美人オルガン奏者クリスタに心惹かれていく…。柊史の成長を「のだめ」真面目版で描いていくのかと思ったら、後半からベルリン壁崩壊に至るDDR国内の政治的動乱に巻き込まれていく。ヴェンツェル傷害事件、そしてクリスタの西側脱出という出来事の中で、結果的に柊史の周りは、国家保安省シュタージのスパイばかりであったことがわかるというミステリー仕立て。最後は11月9日壁崩壊で終わる。ドイツ統一前後の旧東独の苦難の歴史を我々は知っており、その後の展開は凡その想像はつく。著者がここで打ち止めは自然である。しかし、柊史は結局自分の音を見つけたどうかはわからないのだが。
参考文献から当時のドレスデンの雰囲気を再現しているようだが、その筆力は「ベルリンは晴れているか」(深緑野分、筑摩書房2018)と同じように素晴らしい。演奏される音楽を文章で表現する力にも驚かされた。
どのような作品が演奏されるか興味津々であった。J.S.バッハ、ショパンなどよく演奏されCD録音も多い作品もあったが、単純に「名曲」ばかりというわけではない。いくつか気になる作品があった。
まず、クリスタの西側脱出のため滞在したハンガリーで演奏したピアノ三重奏。メンデルスゾーンは「情熱的」とあるので第1番ニ短調Op.49であろう。シューマンは「ベートーヴェン以来、最も偉大なピアノ三重奏曲」と評した。ハイドンは「第39番」となっているが、これはHoboken作品番号の第39番(疑作とされる)ではなく、音楽学者ロビンス・ランドンの整理番号(Hob.番号では第25番)であろう。終楽章が「ハンガリー風ロンド」Rondo all'Ongareseだからである。
作曲家でオルガン奏者のヨーゼフ・ラインベルガー(1839-1901)のオルガン作品の選曲には驚いた。クリスタの心象風景を表す音楽であり、J.Sバッハとともに重要な役割を果たす。ミュンヘンに没したとはいえ、彼はリヒテンシュタイン出身でドレスデンとの縁もない。私のディスコグラフィーにはピアノとオルガンの作品があるが、現在はどちらかというとマイナーな扱いをされている。柊史が最初にクリスタを知ったときに演奏された曲は20曲あるオルガン・ソナタ第11番ニ短調Op.148第2楽章「カンティレーナ」Cantilene抒情的な歌うような旋律である。彼女と決別した演奏会でヴェンツエルと演奏されたのもラインベルガー。柊史にとって大きな転機となるときに登場する作曲家である。二番目の作品は「ヴァイオリンとオルガンのソナタ」としか示されていないが、ラインベルガーには2曲のヴァイオリンとオルガンのための作品がある。そもそもヴァイオリンとオルガンの二重奏という編成自体が珍しい。有名なのは、弦とオルガンの音色の組み合わせの絶妙な「癒しの音楽」の代表例「アルビノーニのアダージョ」。ヴェンツェルのヴァイオリン演奏を考えると、「ヴァイオリンとオルガンの為の6つの作品Op.150」であろう。この曲集には彼が宗教曲も書いた「夕べの歌」Abendliedが含まれており、教会に相応しいからである。You-tubeで聴けるが、落ち着いたオルガンの響きにヴァイオリンがよく歌い動き回る。クリスタの伴奏とヴェンツェルの技巧がかみ合った絶妙な音楽となっていただろう。何故ラインベルガーなのか、著者に訊いてみたいところだ。
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【選考委員全員絶賛! 大藪賞受賞作】バブル期の日本から東ドイツに音楽留学した青年が出会ったのは二人の天才だった。日本人音楽家の成長を描く歴史エンターテイメント。
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すばらしかった。かつてわたしが「神の棘」に出会い、手を引いてもらったように、この作品に手を引いてもらい世界に向き合える若者が増えますようにと願わずにはいられない。本書で書かれたことがたった30年ほど前のことである事実にあらためて嘆息するし、戦いが長く長く続いていたことにも切なさが募る。自由を求める無数の小さな焔は忍耐によって守られ、情熱によってさらに燃え上がった。奇跡は、それを起こさんと行動するひとびとにもたらされるのだ。そして感情の別名でもある。「焔を守れ」。なんと力強いことばであろうか。壁は、崩れた。
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1980年代後半、眞山柊史は東ドイツのドレスデンへピアノ留学へ赴いた。音楽の才能溢れる学生が世界中から集う学内で、柊史は圧倒的な音楽の才をまえに自分の音を見出せずにいた。ベルリンの壁崩壊直前の冷戦下の東ドイツを舞台に、一学生の柊史は歴史的革命の渦へと徐々に巻き込まれていく。
ピアノ、ヴァイオリン、オルガン……本書には様々な楽曲が登場するので、折角なので実際の音楽を聴きながら読みました。
序盤はドレスデンの音楽学校での人間模様が中心ですが、現地の人々との交流を通して徐々にその背景に渦巻いている東ドイツと西ドイツを隔てる大きな壁の存在が浮き彫りになっていきます。西ドイツへ想いを馳せる人々の心情、監視下に置かれる人々の存在、自由を手にするための奮闘・裏切り、ベルリンの壁崩壊直前の混乱の様子など、ストーリーを通してその土地と人の熱がありありと伝わってきました。
「この国には密告するか、しないかの二通りの人間しかいない」――比較的序盤で登場人物の一人が口にするこの言葉は、終始引っかかるものがありました。柊史はもちろん読み手自身も登場人物への不信感が拭えずに終始読み進めることになります。
数年前にベルリン~ドレスデンへ旅行へ行ったこともあり、実際に目にした地や建物が作中に多数登場していたのも個人的な魅力の一つでした。須賀しのぶさんは著者としても作品としても初見だったのですが、こんなにも重厚な作品を書かれるとは嬉しい発見です。他の作品もぜひ読んでみたい。
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初読みの作家。地に足の着いた読み応えのある作品。東西ドイツ。遠い昔の話ではなくほんの30年前の話。当事者の心境が窺えてとても感慨深かった。そして想う,今もなお分断されたままの国家。目に見えない鎖に縛られ苦境にある2500万の人々。彼らの焔はまだ消えずに残っているだろうかと。
あらすじ(背表紙より)
バブル期の日本を離れ、東ドイツに音楽留学したピアニストの眞山。個性溢れる才能たちの中、自分の音を求めてあがく眞山は、ある時、教会で啓示のようなバッハに出会う。演奏者は美貌のオルガン奏者。彼女は国家保安省の監視対象だった…。冷戦下のドイツを舞台に青年音楽家の成長を描く歴史エンターテイメント。大藪春彦賞受賞作!
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音楽ネタの小説かと期待し、その期待に違わぬ興奮で一気読み。最後の最後の落としネタももしや、と思いつつ解説でガッツポーズ(何の意味もなし)。
で、一気読みするくらいの引き込まれようだったのだが、一言でいうと「やな話」となってしまった。中々ひねくれている。そして色々な思いを馳せるここ数日となりそう。
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1人の日本人青年が音楽留学で訪れた、ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツを舞台に進んでいく。
前年には昭和が終わり、東側諸国にも自由化の波が押し寄せていた。
主人公の留学先、ドレスデンの学校にはハンガリーや北朝鮮、ベトナム、そして西ドイツなどさまざまな国からの留学生が国を背負い、日々しのぎを削っている。
そんな中での自身の立ち位置、覚悟を見出すことがなかなかできない主人公。
しかし着実に東ドイツの夜明けは近づいていく。
この作品を読んでてグッとくるのは、音楽の描写。
クラシックの曲がたくさん登場するが、時代背景などをしっかり捉えており、表現がとても美しい。
そして東ドイツ当時の様子を事細かに描写されている点。
シュタージ(秘密警察)や反体制派、民衆、街並みなど。
特にシュタージの存在については、読者も意識して読まされてしまう。
最後にはしっかりとタイトルも回収している。
実店舗ができたら、この本も棚に並べたいなぁ。
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出てくる楽曲を知らなかったり、そのためにその楽曲を表す描写に入り込めなかったり、主人公のしんねりむっつりした感じにイラついたりして、当初読みづらさを感じたけれど、後半は引き込まれてどんどん読み進めることができた。
ドイツが東西に分かれていた時代に、東のドレスデンに音楽留学した日本人青年が主人公となっているので、彼の目線を通して、あの時代を追体験しているような感覚で読めた。ベルリンの壁が崩壊したのは私が中学生だった頃で、詳しいことは理解できていなかったけれど、テレビで見た映像や、時代の転換期に居合わせているという妙な高揚感は覚えている。あの映像の前段階の時間や、映像に映っていない場所に何が起こっていたのか、人々がどんな生活を送ってベルリンの壁崩壊に繋がったのか…その閉塞感や熱狂を感じて、心が震えた。
クライマックスの「フィデリオ」、映像や録音が残っているなら観て・聴いてみたい。
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題名の「革命」がどの革命のことかも知らないまま読み始めた。
舞台は、今から30年程前で、この頃、地球の歩き方の東欧編が出版され、鉄のカーテンの向こう側にも旅行者として行けるんだ、どんなんだろう、とのんきに思っていた記憶がある。
主人公の青年は、日本からの音楽留学生として、その鉄のカーテンの向こうを見る。
「西じゃ良心的兵役拒否ってのがあるのは知ってるけど、兵役そのものがない国があるとはなあ。じゃ日本は有事の際はどうやって身を守るんだ?」という質問にちゃんと答えられないのは、今の私も同じ。
彼の目を通して、カルチャーショックを受け、自分の小ささを思い知る。
彼は、強烈な個性を持つ、才能豊かな音楽家の卵たちに出会う。
才能ある者だからこその羨望や嫉妬に加えて、それぞれのバックグランドの想像を絶するような事情、そしてその事情が各人に深く根を下ろしているため、ぬるま湯のような関係とは対極の、ひりひりするような、時に、命がけのやりとりが続く。
読み終わってから、物語の舞台になった都市をググって見たら、出てきたのは、観光客が訪れる歴史ある美しい街。この小説に出てきた、今の私たちには想像を絶するような事情やその中で生きていかざるを得なかった人たちは確かにいたはずなのに、その美しい写真からは、そんなことが全く感じられないというのは、やはり、恐ろしいことなのでしょう。
この小説に出てきた音楽家の卵達に似た人たちが、その後、幸せな人生を送っていることを願いたい。
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自分にとって読みにくい、解釈しにくい箇所があったが、それでもおもしろかった。
名前の面で混乱しやすい部分もある。
激動の時代。
たくさんのクラシック音楽。
最後の展開の素晴らしさ。
知らない曲ばかりだったが、聞いて見たいと思った。
本を読みながら、ピアノ、ヴァイオリン、オルガンの音が聞こえる。
その感覚がわかった気がします。
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東西ドイツ分裂期という設定で冒頭から本の世界観に引き込まれた。
個人的には音楽の要素や、主人公含めての音楽に対する思いの変化が多分に含まれた本だと思って手に取ったので、どちらかというとこの時代の不安定さや変化によって生まれる登場人物の心情変化がメインだったのでさらっと読めてしまった。
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初めてこの作者の本を読んだ。
あっという間に引き込まれて、読んでいくうちに圧倒された。特に後半はテンポが加速。圧巻の一言。
プライベートで合唱を少し齧っていて、本書の中によく出てくるバッハを歌ったことがある…くらいの軽い音楽的知識しかない為、気になる音楽は調べて聴きながら読み進めたり、わからない言葉は調べたり…ととにかく大事に丁寧に読みたくなる一冊だった。
なので、読了にかなりの時間を要し、疲労感があったものの、本当にこの本に出会えて良かったと思う。
こんな方がいたなんて!音楽と東西ドイツ時代の激動を本当に上手く物語にしていて、解説の朝井リョウではないけど、見てきてもいないのにどうしてこんなにリアリティに富んだ文章が書けるのか。音楽表現も素晴らしく、ジルバーマンのオルガンの音色や曲、全部聴きたくなる。
ここ最近で断トツの当たり本だった。また、こんな素晴らしい本を出して欲しいなぁ。
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2018.10.16.読了
初、須賀しのぶ作品。読みやすくありません
結末はいいやつが悪いやつだったり悪いやつがいいヤツだったり、でもってやっぱりいいやつだったり。。。
大まかに説明してしまうとこのような良くあるような結末なんです。でも小説ってそういうものですからね。
そこまでの道のりですよね
300ページ過ぎくらいまで、しょーじき退屈しました。
読み辛いしw。クラッシックのことよく分かんないし。
でも、振り返ってみるとそこがなきゃ話にならないんですよね。伏線だったり、登場人物の性格だったり、思いだったり、芸術的才能だったり、そもそも時代背景だったり。。。
でも、飽き飽きしてしまった頃ですよ
もう、なんかいいかなー、つまんないなー、やだなーこわいなーって思った頃です
もう本当にピアノで言うなら低音から高音に駆け上がっていくんですよ、指が絡まりそうなくらい。
そこでつまらなかったこと全部忘れちゃうんです。
それで結果、面白かったなー。"また桜の国で"も読もう!ってなっちゃいました