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山岳小説のひとつのヴァリエーション
2016/10/22 22:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
新田次郎の山岳小説なのだが、内容は男女間の不倫を描く小説である。あくまで本論はそこにある。その合間あるいは登場人物に共通の趣味として山行が出てくるというものである。いつも新田の小説には時代を感じさせられる。本書もそうである。しかし、前回の『チンネの裁き』とは異なる。本書の方が時代感覚はより現代に近い。小説としても練れているような気がする。
男女の不倫を扱う小説など、今どき全く珍しくはない。その登場する男女が登山をする方が珍しい。これがアルプスやヒマラヤというのでは、あまり親近感を覚えることはない。本書では読者サービスなのか、新田は関東近辺の人気の山を取り上げている。
乾徳山、丹沢四十八瀬川遡行、谷川岳・茂倉岳、三浦半島鷹取山の岩場などが登場する。茂倉岳登山では遭難しかけたりする。ただし、本書のテーマは男女間のもつれを扱うことに主眼を置いている。したがって、『チンネの裁き』のように殺人事件が起きたりはしない。
しかし、登山の経験者にとっては新田の小説を読んでいると、小説に登場する山に行きたくなるから不思議である。時代性がないと言ったが、今はそういうことはしないという例としては、夜行列車を利用して登山口まで行くということであろうか。本書でも乾徳山へ行くのに、新宿から中央線の夜行に乗って塩山まで行くというシーンがあった。また、夜行列車の席を確保するために列を作り、出発まで延々と待つ風景などが描写されている。
これらはやはり昭和の風景といってもよいであろう。もちろん、現在もそうして夜行列車を利用する登山者はいるであろうが、あまり見なくなったことは確かである。いずれにしても、新田の小説の楽しみ方は読者が自分でその楽しさを発見することであるが、上記の山行を促す効果は愛好家ならば、皆が感じることであろうと思う。
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