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覇権に関する議論をまとめている。
米中どちらが覇権をとるかということについて、多くの証拠をもとに述べられている点が、特に優れた点であると思われる。
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戦後のブレトンウッズ体制確立からリーマンショックに至るまでの世界経済史を、アメリカの覇権とそれに挑戦する側のせめぎ合いを軸に読み解いていく。ここまでは非常に読み応えがある。しかしその上で今後の経済覇権の行方と日本の進路を論ずる・・・はずなのだが、結論があまりに凡庸(日本は技術立国を目指せ、等)である上、それまでの議論を殆ど踏まえない唐突なもので肩透かし感が否めない。ここまで精緻に戦後の各種レジームを俯瞰したのだから、例えば今後中国の覇権が米国のそれに比肩するにつれ予想される軋轢を、いくつかのシナリオを想定しながら考察するなどしても良かったのでは。経済史の入門書としても、同じ中公新書の「戦後世界経済史」(猪木武徳)を超えるところは無いように思える。
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経済覇権と軍事覇権は同じ国が持っており、つながっている。
覇権安定論とは端的にいえば、国際経済秩序の安定には覇権が必要であるという説。
戦後アメリカが多くの国にとって最大の輸出国だったことからGATTはアメリカの覇権の産物。
中国の大国意識と表裏一体にあるのがナショナリズム。特に日本とアメリカに向けられやすい。
アメリカは当分、共同統治の体裁を整えつつ、関与政策と封じ込めを併用しながら、中国の台頭を抑え込もうとしていく。
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2013年刊。著者は東京大学大学院法学政治学研究科教授。
軍事・外交という面で使われそうな「覇権」という言葉。しかし、軍事・政治・外交において経済という側面を切り離せないとしたら…。
本書はWWⅡ以降、国際経済に関する主要国の動向をテーマ毎に解析し、21世紀中葉にかけての世界経済と国際社会内での日本経済の道筋を解読しようとする書である。
著者の見解全てを是とはし難いが、丁寧な叙述を基軸に据えた国際経済史における著者の新奇な視座に唸り、現代(特に21C)のバブル崩壊論・金融システム保全論の理解不足に呆然とさせられた書である。
殊に、
① 戦後金融・通貨、通商体制の構築にあたっての、米英間との相克と対立。
具体的には、英国(英連邦)の特恵関税国体制の解体を狙う米国に対し、恒常的赤字国の負担軽減を狙う英国。
② 金融・通貨と通商とを分別解読すべき視座。
③ 通商より金融に重きを置く米国。これは戦後から一貫している。その典型例が、日本又は中国主導のアジア通貨基金体制への米国の猛反発とその潰し。
④ ユーロ圏の政治性(仏の対独封じ込め政策の側面≒独の東西統一の引換としてのマルク放棄)。
⑤ 21C中葉における中国台頭の頭打ちと限界は、人口増加の鈍化と人口構成の歪さに由来。
が、これらの無知な故、不明点も多々。
⑴ 金融業の米国内GDPの押上げ要因とは何?。海外展開(多国籍金融機関)による投資・保険引受に伴う、海外からの金員徴求による利益?。
⑵ シェール革命の過大評価。販売価格の低下は利益増をもたらすとは限らず。利益減なら頁岩採掘に支障を来すだろう。
⑶ 日本の生産人口減を過小評価。
日本の世界経済でのシェアと影響力の低下は急激な生産人口減に由来するが、著者の処方箋はそういう側面とは異質(方法論は妥当だが、影響力低減は所与かも)。
⑷ 中国やイスラム圏の対欧米暴発の問題は余り触れない。特にイスラム。彼らが経済主要プレイヤーでないから?。とも考えられるが、オイルマネーを考えると果たして妥当か。
⑸ 旗振り役を務める米国のTPPの真の意図はどこにあるのか?。米国のどの国益に合致し、それは日本が受容可能なレベルか。ひょっとして、米銀以外の各地の金融業(つまり銀行・保険業・証券業)潰しではないのか?。
一方、日本が享受するマイナス面を超える利益があるのか。それはどの分野か。どのようにその利益を実現できるか。具体的な政策マターはどういうものか。⑹ 21Cの欧州は、人口減傾向の独よりも人口増に転じた仏の時代?と評し得るか。