世界の英語小説100傑にも入ったフォークナーの長編小説です!
2020/05/10 11:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、20世紀のアメリカを代表する小説家であったウィリアム・フォークナーの長篇小説です。同書では、禁酒法時代のミシシッピ州の架空の土地「ヨクナパトーファ郡ジェファソン」を舞台に、アメリカ合衆国南部の社会における人種間軋轢を掘り下げた内容でストーリーが展開されます。世界的に有名な雑誌「タイム」に「1923年から2005年の英語小説100傑」に入った一冊でもあります。同書は、アラバマからミシシッピまで4週間歩いてきたリーナの話で始まります。アラバマでリーナは20歳年の違う兄の家に住んでいたが20歳のときにルーカス・バーチと出遭い、妊娠します。その後間もなくバーチは出奔し、臨月の近くなったリーナは兄の家から抜け出して、バーチが居ると聞いたミシシッピを目指します。道中様々な人に助けられながらジェファソンまで辿りつきます。途中で教えられた製板工場に行くとバイロン・バンチと出会います。リーナはバンチの口からその製板工場で働いていたジョー・クリスマスとジョー・ブラウンという男達の名前を聞き、ブラウンの方がバーチである可能性に思い至ります。バンチはリーナに一目惚れしてしまうという最初のストーリーが展開します。続きは、ぜひ、同書をお読みください。
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訳注も親切で読み易さバツグンの黒原訳にも関わらず、難儀した。読むのに難儀したというよりも、む?どう受け止めよう?と。
昔読んだのにすっかり忘れていて、こんな話だっけ?というのと、誰の立ち位置に立てばいいんだ?という戸惑いで、終始頭の中がグチャグチャだった。
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街の中に暮らす様々な人たち。彼らはみんなどこか愚かで、どうしようもない。そのどうしようもなさが、リアルで、自分の中にもあるものとして感じられる。
閉塞感や孤独、回復できないほどの精神的傷なんて、現代社会に限るものではないんだと思った。どうやって、より良い社会を築けばいいのか、途方にくれる。
ワインズバーグ、オハイオの後に読んだのは、正解だった。
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ノーベル文学賞受賞のフォークナーの代表作。アメリカ南部の田舎町ジェファスンを舞台に、外見は白人でありながら黒人の血を引くクリスマスと天真爛漫な生粋の南部娘であるリーナの物語を主軸に(しかし交わらずに)アメリカが抱える澱みを描く。
本作品を理解するにはそもそもの時代背景を知る必要がある。北東部では新たな跳躍の希望を抱き、対する南部では依然として閉塞感と黒人差別が残り禁酒法下の鬱憤とした時代、相反する感情を伴いアメリカとして自信が揺らぎいいしれぬ怒りが漂う時代。それらを端的なメタファーを用いるでもなくカタルシスを生み出すでもなく、直接的描写をしつつも明確にはせず重奏的に物語を紡ぎ出す。
正直一度読んだだけでは理解できたとは言い難いが本作が持つ迫力と凄みが伝わってくる。少し時間をおいて再読したいと思う。
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このタイトルをつけてくれてよかった(とんでもなく暗い内容とかけ離れた爽やかさ+8月になると読んでみようかなというきっかけになった)。あらすじの予備知識でもあったら手に取っていないかもしれない。でも読み応えのある南部ゴシックで、充実の読後感。最初と最後が本作の中ではごく少数派の楽観的でおっとりとした人物達の話なのも救われた。
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はじめ、その本の分厚さにすこしひよったが、いざ読み始めてみれば淡々とした文章でとんどん読めた。2日で読了。
暴力の連続性
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リーナ・グローヴ、ジョー・クリスマス、ゲイル・ハイタワーの3名を中心に物語が展開してゆく。物語は全体としては当時の黒人差別問題も相俟って、暗く陰気な感じで覆われているが、リーナにはどこか明るい雰囲気も漂う。ルーカス・バーチを追い求めて歩き続けてきたという導入部も、行動じたいはけっしてポジティヴなものとはいえないが、いっぽうで心の片隅に希望を抱いているからこそ、あてどのない旅を続けることができるのである。また、リーナは最終的に出産し、「人間ってほんとにあちこち行けるものなのね。」というセリフで締められる。さしづめ「希望」の物語である――というのは早計で、じつは希望なんてないような気もする。いっぽうでクリスマスは、幼少期からして孤児院に捨てられ、養父に虐待されて育ち、成長すると養父を殴り倒し、また情交相手の女性を切り殺す。その後逃亡を図ったすえに射殺されてしまう。リーナが「希望」の物語なら、クリスマスは「破滅」の物語――というのもやはり違っていて、クリスマスは最初から最後まで徹頭徹尾クリスマスでしかなく、そこには希望も破滅もない。クリスマスがクリスマスの人生を歩んでいるだけである。こうなるとハイタワーの物語が示している内容も単純で、あくまでもありのままのハイタワーを描いたものでしかない。三者三様に見える人生は、その実単にあらかじめ定められた方向に進んでゆくだけである。こういった人生を描くことで、当時のアメリカ南部に漂う独特の閉塞感を表現しているのだと思う。
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翻訳作品を読むのは苦手だったが、そろそろ読み始めようかと思い挑戦。
一読ではなかなか理解出来なかった。
背が低いのは神の怒りの重み、色が黒いのは人間を縛り付け奴隷にした罪の血。あまりの理不尽なその表現を受け入れることは難しいが、それらを踏まえこの作品が大衆文学であったらしいところを理解できるよう後日再読したい。
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錯綜するそれぞれの登場人物の過去と思想。
それらはまるで繊細な毛糸のような絡み合い、解けてゆく。
シェイクスピア
ワインズバーグ、オハイオ
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フォークナーをこんなに面白く読めたのは初めて。翻訳が素晴らしい。各登場人物のこだわりが凄まじく、おかしくなるほど。執念に近い強い意志で、周囲がなんと思おうと自分の思い通りに行動する。でもその源には、祖先や両親や慣習などの影響力が働いていて、結局のところ、本当に自由には生きられない。シンプルな考えで動くリーナが一番力強くて明るい。
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白人と黒人という相反するアイデンティティを抱えてしまったクリスマスはそれぞれの属性を持つ人々を攻撃していく。彼は自分の出自に悩んでたことはもちろんだが、その悩みすら受け入れてくれない近代に馴染めなかった一匹狼の男だ。彼の不気味でこの世全てに悩めない感じはハンターハンターのジャイロを彷彿とさせていた。
登場人物の多くが過去の出来事や祖先に囚われているのも近代に馴染めないということであろう。また、その状態から救われるためにキリストに救いを求めているのだろう。
小説の描写から、南部の貧乏白人や黒人が暮らしている治安の悪い雰囲気を体感できる。
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戦間期のアメリカ南部。黒人や女性を抑圧する社会の空気に縛られつつ抗う。そのあり様は登場人物によって様々で、彼らが織りなす物語に福音書のイメージが重ねられもする。訳者は後書きで読者に再読を勧めているが、確かにそうすることによって汲み出すことができるものは多いように思う。ただ結構長い作品なので、実際再読するかと言われると考えてしまう。
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出だしの美しさにピンと来たら、読んで見るべきだ。
映画業界に参入する事で、小説家としての立ち位置が
微妙になった感のある、フォークナー。
だが、月の光がどこへ導くのか。
村上春樹の、ねじまき鳥クロニクルのような、
ある種行き着く先の知れない感じを楽しみたい人にお勧め。
あまり難しく考えないで読んで、時が来たら意味を調べるのが良いと思う。
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「普通」の人生などないと改めて感じさせる。なかでもクリスマスのアイデンティティの拠ってたつもののなさに一滴混じった悪意の果たすものの大きさ、それがもたらした複雑な生き様、そして悲劇には深く考えさせられるものがあった。人生において繰り返し読むに値する一冊。それにしても米国南部の歴史が抱える深い深い業よ。
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とってもしんどい
読むのに1ヶ月かかった。
それぞれの物語があって、それが1つの事件と絡む構成はカラマーゾフの兄弟のような感じもある