精緻でアクロバティックな論理が導き出す意外な真相を堪能
2022/11/28 20:36
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投稿者:honto好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
冷徹な美女で変人の冴子と左遷されて鬱屈した寺田のキャラもいいし、組織内の軋轢など警察小説としての味わいもある。ロジックがあぶりだす人間ドラマも魅力的だ。特に、青春小説風の哀切さに満ちた手記形式の「復讐日記」、失われた家族への郷愁が皮肉な結末に繋がる「炎」、異様なロジック・異様な動機「死に至る問い」には、ミステリだからこそ表現できる人間の苦悩や悲しみを感じた。
『密室蒐集家』と双璧をなす本格ミステリファン必見の短編集
2021/12/31 12:06
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を受賞した作家の、同じように精緻に作りこまれたミステリ短編集。ドラマ化もされました。
ドラマ原作となった「炎」他三篇も面白いですが、他の二編も負けず劣らず。特にシリーズ第一話にあたる「パンの身代金」はドラマ化から漏れたのが残念な、本書で一番の傑作。
毒入り商品で脅迫を受けたパン会社の重役が身代金の受け渡し時に殺されてしまったという事件。意外な部分から、するすると意外な真実が現れ、あれもこれも伏線だったのかと感心することしきりです。
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犯罪の証拠品などを保管する犯罪資料館を舞台に、捜査資料や残された証拠品から事件を紐解くミステリー。そういう設定なので古い事件を取り扱うことが多く、いわゆるコールドケースのような感じ。
解説にも書かれていますが、本格ミステリーとしての塩梅はとてもいい感じ。短編集なので無駄がそぎ落とされていて、純度の高いミステリーです。
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2018年107冊目。探偵役の推理が切れ味鋭いものから妄想に等しいものまで落差が激しい。事件そのものも考えさせられるものから荒唐無稽なものまで。その両方がハイレベルな⌈復讐日記」がベスト。次点で⌈炎」。
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この小説を原作にしたテレビドラマ(二時間ドラマ)を観たことが、きっかけで読みました。全5編からなる短編集で、提示された証拠から聞き込みそして推理という流れなので、若干情緒的な面は薄いですが、未解決の事件の証拠を登場人物、読者にキチンとわかるように作中で提示され、主人公である緋色冴子が真相を推理していくところに読みごたえがある。あと事件の背景にある関係者の狂気ともいえるような内面を感じさせる話もあり、そういったところにも惹かれた。ラストの冴子の台詞からも次のシリーズの単行本発売が楽しみになる作品。
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「赤い博物館」の館長である緋色冴子と、助手である元捜査一課の刑事が証拠品をもとに迷宮入り事件を推理で解決していく連作短編。以前テレビドラマ化されているようですが、残念ながら未見。
本格推理はもちろんですが、本作では怖い、そして悲しい設定が多く、物語にも引き込まれました。「復讐日記」と「炎」が特にお気に入りです。
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迷宮入りになった事件の遺留品や資料を保管している、警視庁付属犯罪資料館「赤い博物館」に配属された寺田聡。館長の緋色冴子と難事件に挑む。「パンの身代金」「復讐日記」「死が共犯者を別つまで」「炎」「死に至る問い」の5話。
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警視庁付属犯罪資料館・通称「赤い博物館」は、ロンドン警視庁犯罪博物館・通称「黒い博物館」を模して設立された。そこでは、警視庁管内で起きた過去の事件の証拠品や捜査書類を所轄署から受け取って保存し、今後の捜査に役立てる役目を果たしている。
その資料館の館長・緋色冴子警視はコミュニケーション能力皆無だが、ずば抜けた推理力を持つ美人キャリア。そこに配属されたのは、警視庁捜査一課で失態をやらかし飛ばされてきた元刑事・寺田聡巡査部長。
冴子のアンテナに触れた既に過去のものとなっている事件を、寺田が手足となって捜査し、資料と遺留品を元に冴子の卓越した推理力で解決に導くという5つの連作短編。
癖のあるキャラクターの冴子と、捜査に未練を残しながら資料整理と冴子のパシリに勤しむ聡のコンビが妙に笑える。冴子の指示で聡が事件を再捜査するという流れで、事件の情報は読者にもフェアに示されるという本格ミステリ仕立てにワクワク。
古い捜査資料と聡が足で集めてきた新たな情報を元に、冴子は頭で事件を解決し、ラストで切れ味よく論理を展開する。ちょっと無理筋なケースがあるのも否めないけど、推理ゲームの楽しさを十分に味わえる短編集でした。シリーズになりそうで楽しみ!
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短編集であるが一つ一つの話に伏線、予想外の結果があり既存の短編集よりも深い話を楽しめた。やや強引な展開もあったが、、でもまた続きが出たら読みたい
3.7
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失策で犯罪資料館に飛ばされてきた聡。
館長であるキャリアの冴子。
冴子の、過去の資料から読み解く推理が素晴らしい。
聡も、捜査一課にいたという自負心から張り合うんだけど、全然敵わない。ものすごく説得力のある聡の推理が冴子にくるりとひっくり返される展開が面白い。
最後の「死に至る問」は、あまりに悲しい。そこまで思いつめずにいられないなんて、、、
誰が犯人で、どんな動機があろうと冷徹に事件を読み解く冴子のクールさがかっこいい。
彼女の過去にも何か事情がありそうで、シリーズ続編で明かされることを期待。
解説によるとドラマ化もされているようだけど、雰囲気は原作からは変わっているみたい。それはそれで興味がある。再放送されないかな。
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2作目の大山誠一郎の本。
前回読んだ、「アリバイ崩し承ります」が大変面白かったので、興味を持ってこちらも読んでみたが、
こちらの方がより面白かった。
次こそは!と思い読みながら頭を悩ませますが、1つしか犯人を当てることが出来なかった。
(それも、全てのフラグを回収できたわけでもなかった)
他の本も必ず読もう。
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「赤い博物館」という通称を持つ、警視庁管内で起きた事件の証拠品が集められた犯罪資料館に飛ばされた元捜査一課の刑事と館長の「雪女」が過去の未解決事件を証拠品を元に解決する、というミステリ短編集。
どの事件も意外性のある結末で衝撃だったけれど、一番は「パンの身代金」かなぁ。読んでて一番展開が読めなかった。
雪女こと探偵役の緋色冴子警視は、よくあるタイプのコミュ障だけど頭が切れる、というもの。ワトソン役の元刑事寺田が、優秀ぎみなワトソンなので、寺田の眼を通して読者は新たな着眼点を得られるのが良かった(往々にしてミスリードだったりするのだが)。
続編も楽しみ。
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旅のお共として。警視庁付属犯罪資料館、別名「赤い博物館」を舞台とした連作短編集。読みやすくて面白かった。しかしレビュー数が少なすぎじゃないか。もっと人気が出ていい作家さんだと思うけどなぁ。「炎」「死に至る問い」が特に面白かった。
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警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」の館長である緋色冴子が、部下の寺田聡とともに過去の事件の遺留品や資料を元に未解決で難解な事件を解決する。
この作家さんは、初読み。
かなり高度なミステリであり、難解過ぎる。
ハイレベルである。
全5話あるのだが、どれも分からずにギブ状態。
予測不能なトリックに頭がついていけないのだが、頭を使うことが少なくなったせいか…年齢のせいか…。
「炎」と「死に至る問い」の2話は、家族に纏わる事件なので、なんともやりきれない気持ちが残った。
今回は、文庫化されて手に取ったのだが、ハードカバーは知らなくて、2016年と2017年にテレビドラマ化されていたのも知らなかった。
原作と脚本とでは、少し違うのかもしれないが、知らなかったので残念だ。
クールで論理的な冴子の推理には、惚れ惚れする。
シリーズの継続を望みたい。
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雪女のような緋色冴子と読者代表のような寺田聡に導かれて、謎解きと犯人当ての面白さを味わった。
短編ながらも、複雑な人間関係が描かれているので、読み応えがあった。
聡の迷推理やトリックの傾向があって、読み進むうちに、謎解きが冴えてきた!
と思ったが、最後の解説読んで、作者の術中にハマったのか?たぶんハマった!