投稿元:
レビューを見る
デジタル・トランスフォーメーション(DX)に関心が強く本書を購入しました。読後の率直な感想としては、DXに関係するであろう事柄を実直かつ網羅的に説明している本だという印象です。まずデジタル技術の活用度合いについて、デジタル能力の高低、リーダーシップ能力の高低で4象限の分類を提示しています。両方高い企業は「デジタルマスター」、反対に両方低い企業は「初心者」です。この判定は企業の経営幹部に対するアンケート調査(自分の企業を自己評価する)からきていますが、本書によれば、デジタルマスターは同業他社と比較して売上高では+9%、利益率では+26%高いとのことです。興味深かったのは、デジタル能力だけが高い企業の場合、売上高は同業他社より高くなりますが、利益率はむしろ低くなるということ。つまり先端的なデジタル技術に手を出しすぎたり、各部署がバラバラにデジタル投資をしているため、コスト面で状況が悪化したということでしょう。
そのような状況説明ののちに、デジタル能力、リーダーシップ能力を細かく分解して、それぞれの能力をいかに高めていくべきかを、企業事例をベースに説明されています。このあたりの解説はよく言えば非常に丁寧なのですが、かなり退屈な個所や、「そんなにうまくいくわけがないだろう」と反発心を覚える個所もありました。第3部では「実践する」ということで、デジタル・シフトのための羅針盤なるものが紹介されていますが、似たような項目が複数回出てきたり、無理やり各項目の項数をそろえた感が否めないところもあり、正直あまり感銘を受けませんでした(頭に入ってきませんでした)。本書、丁寧に真面目に書かれた本という意味で良書だとは思うのですが、書かれていることは想定内の範囲であり、ハッとする気づきや分析の切れ味はほとんどなかったかもしれません。