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日本人にとっては政情不安定な、小国というイメージが強いイスラエル。
人口710万人、四国ほどの国土の大半は砂漠、というこの国は、独創的な技術を持ったベンチャー企業が次々生まれる「起業国家」という側面を持つ。
シスコ、マイクロソフト、グーグルといった企業がイノベーションの中心拠点をイスラエルに置いている事や、たとえ戦火の中であってもインテルのCPUの大半がイスラエルで製造されていることなど、「起業国家」イスラエルの姿は日本人にとっては知らないことが多く、大変刺激的な内容だった。
また、背景として語られるイスラエルの文化や社会制度も日本人からみるととても新鮮。
「予備役」という一生続く徴兵制が、業種横断的な人間関係を組織し、若いころから大変な責務を負う経験を作り出していること、軍隊においても下位のものがとことん上官に意見できる空気が個人個人が状況に応じて臨機応変に対応できる組織力を生み出している事、などである。
日本にとってイスラエルから学ぶべきことは多いと感じる。
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イスラエルにおける豊富なベンチャー起業の背景を解説した本。国民徴兵制の中で生まれる濃い人間関係、エリート部隊の存在。上下関係なく議論を行い、失敗を厭わない国民性。国が中心となったヨズマ基金によるベンチャーキャピタル。帰ってくるユダヤ人達。その中に占める技術者の比率の高さなど。また、異なるテクノロジーをマッシュアップする活発な動きなど、いわゆるオープンイノベーションを実現している点は感銘を受けた。
特に徴兵制を採用しているイスラエル、シンガポール、韓国の3国を比較しているくだりは成る程と思わせる。また、イスラエルの今後についても地政学的リスク、頭脳流出の可能性など、冷徹に整理している。
09年の書物ということで内容が古くなっているのではないかと心配したが、あとがきにおいて11年段階のフォローアップが行われており、丁寧なフォローだと感じた。ちなみに小さな文字で謝辞が数ページ書かれている。その最後のところで、著者二人も、このイスラエルの長い物語の主人公の一部なのだと感じた。
それにしても、この邦題はいただけない。Start-up Nationという原題の方がしっくり来る。
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イスラエルについて、宗教的、歴史的位置づけくらいしか知らなかったが、その特殊性故に、ITをはじめとするベンチャーが多数輩出されることにつながったことがよく理解できた。
また、わずか半世紀あまりの間に世界各地から移民してきたユダヤ系の人々からなる社会、今も世界中に分散するユダヤ系の人々とつながっている民族の連携、周辺各国から頻繁に軍事的攻撃を受けている人口わずか700万人の国家というものを、内部から現実として描いていて、とても興味深かった。
2年間の徴兵制があり、その後も予備役として毎年一定期間兵役に戻るシステムのために、業界・社会階層を超えた人脈や連帯感が生まれている。
国土も人口も少なく、建国からの歴史も短い小国が周囲からの攻撃に対応し、国力を増していくために、年功序列、目上目下という概念に囚われていられず、世代を超えてタメ口を使う対等なコミュニケーション。
単一言語、単一民族、海洋国家の日本とは、似ても似つかないイスラエルの社会、産業、ビジネスのありようは、とても興味深く、刺激的だ。
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・どんな軍隊も臨機応変の価値判断を要求するものです。けれども、そうしたことばだけでは何もわかりません。組織構造に目を向けなければなりません。…アメリカ陸軍における上級史観と先頭に従事する軍人の割合は一対五であるのに対して、IDF(イスラエル国防軍)では一対九になっている。
・NASAはそれ以前にも、何回か発泡剤の剥離を目撃していた。その剥離が過去、問題の発生につながらなかったため、その整備は定期的作業として実施する、というのが上層部の決めたルールだった。したがって、それ以上の議論は全く必要とされなかった。
→コロンビア号の爆発について。スペースシャトルを使いまわすために、作業をルーチン化したかったのだ。
NASAはコロンビアのことを「着陸して向きを変えるとすぐにまた飛び出せる、こんな飛行が簡単にできるボーイング747のようなものだ」と喧伝していたそうだ。しかし実際には、「宇宙飛行は、テクノロジーのイノベーションと非常によく似て、基本的に実験的な試みであって、その心がけで取り組むべきだ。飛行を繰り返すたびに、それを重要なテストであり、そして同時にデータの収集源だと考えるべきだ。過去に実践したことを日常的な作業に応用することではない」
・砂漠で魚を養殖することは道理にかなっている、と説得するのは骨が折れた。―サムエル・アプルバウム教授
・アメリカ軍は普通、役割が決められた航空機を四波にわたって飛行させることによって、作戦の具体的な要件を達成しようとする。たとえば、第一波は敵航空機の防衛空域をくぐり抜けられるように設計された空中哨戒機、これに続いてミサイルを発射してくる敵の対空砲火装置を破壊する第二波、そして第三波は、電子化された軍用機、燃料補給のためのタンカー、そして戦闘の全体像を映し出すレーダー機で構成される。最後の第四波は、攻撃機そのもの、つまり爆弾を積んだ航空機の出番だ。
…イスラエルのシステムでは空対空ミサイルを装備しないで出撃する事はありません。それがどんな作戦であってもです。レバノン南部に攻撃するとなれば、攻撃基地は飛行で二分間の距離に置かれます。そうすれば誰かほかの人が支援に来られるのです。それでも、敵国の領土に空対空ミサイル無しで行くなどということは決してありません。
・分野が全く異なるテクノロジーのマッシュアップ。ミサイルの電子工学技術をカプセル内視鏡に応用したギブン・イメージング、光源・酸素を生む藻・インシュリンを作り出すベータ細胞が揃ったミクロの環境を移植するBeta-O2。発想が、凄い。
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逆境が発明を育む。イスラエルの起業家は輸送費の高い、それとわかる大型の最終製品の事業を嫌う意識をはぐくみながら、同時に小型の部品やソフトウェアに魅力を感じる意識を育ててきた。
イスラエルでは学歴よりも軍歴の方が重視される。
経済が本当に離陸するためには、新たな移民の波、新たな戦争、そして新たなベンチャーキャピタルの業界が必要。
移民の存在が重要。自国の経済を刺激するためにディアスポラのコミュニティをいかに活用するかを学ぶ為の創造力が求められてきた。テクノロジー分野のマッシュアップが大好きなイスラエル人の性向は好奇心というだけにとどまらず、イスラエルを非常に革新的にしているものの革新にある文化的な特質。
最も重要なのはスタートアップ企業を立ち上げる、あるいはハイテク業界に参入する行為は意欲満々のイスラエルの若者にとって最も評価されると同時に普通のことになっている。
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いまやイスラエルはIT最先端! 起業意欲も旺盛で世界中から注目を浴びている。その理由がわかる貴重な一冊。
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イスラエルがなぜイノベーションが盛んなのか。国家の成り立ち、軍隊の役割など多面的な視点から分析。国のイノベーション政策に関わる人にとっては必読書。
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イスラエル人のベンチャー・スピリットに焦点を当てた本。起業家精神やベンチャー育成に関して興味がある人向け。
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「イスラエル人5人を管理するほうがアメリカ人50人を管理するよりはるかに複雑な仕事です。なぜなら、イスラエル人は絶えずマネジャーに疑問をぶつけてくるからです。まずこんな質問が飛んできます、”なぜあなたが私のマネジャーなのですか。なぜ私があなたのマネジャーではないのですか”とね」
人口が1000万に満たず、周囲を敵に囲まれた小さな砂漠の国イスラエル。本書は日本では馴染みの薄いこの国がスタートアップ大国となった要因を紹介した本です。
印象深かったのは彼らの国民性です。たとえはっきりしていることであっても疑問を懐き、質問をぶつけ、議論を交わし、革新を目指すという性質。与えられた環境の中で切磋琢磨するのが得意な日本人とは真逆ですね。冒頭の冗談には笑ってしまいました。
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イスラエルで自由になる財産は人的資本以外に何もない。通用するのは開拓者だけ。つまり何もない状況に立ち向かい、必死に仕事をする開拓者たちだけだ。理想主義であり、知識人。
イスラエルにおけるハイテクは農業からはじまる。器物は農業生産活動の母体になり、農民は科学者になった。耕作地が少なく、水不足という事情からイスラエルは農業先進国になった。
規模の大きさから寮の優位性が生まれるのに対して、規模が小さいからこそ質の面に集中できるチャンスがある。
専門家とは例外なく、過去の事実を語る専門家だ。これから起こる事象を語れる専門家は一人もいない。これから生まれる未来についての専門家になるためには、経験に取って代わられるビジョンが必要だ。
これから10年の進歩
1. 人工知能
2. 科学分野における発見の爆発的増大(主に中国とインドで)科学者の数が増えて、テクノロジーも発達する
3. ナノテクノロジーの出現。人間の脳の解明によって人間の潜在能力を明らかにし、コミュニケーションの様々な仕組みを理解し、社会活動の課題を我々に教えてくれるはず
イスラエルは経済活動における研究開発費の割合が世界一大きい国。ベンチャーキャピタルの数が世界一。
才能豊かな人たちの物語というだけでなく、粘り強さ、権威に対する疑問を持ち続ける姿勢、そしてどこまでも格式にこだわらない風土の物語。
イスラエルの作家アモス・オズ、
ユダヤ教とイスラエルは常に疑問と議論の文化、つまり解釈や裏解釈、再解釈、反対の解釈などについて自由闊達なやり取りをし続ける文化を育ててきた。ユダヤ文明がユダヤ文明であるのは、誕生したその時からずっと文字通り議論好きであったから。
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イスラエルのことがよく分かる本。若干、課題よりも”うまく行っている感”の方が強めに出ている気もするが、その特殊性についてよく理解できる。同じ徴兵制をもつシンガポールとの違いもなるほどと思ってしまう。
様々な事例が書かれているのが、とても分かりやすいし、納得感がある。
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今どきのビジ本っぽいタイトルになっているけれど、その内容は『イスラエルの作り方』とも言えるもの。
なぜあのような小国がこれほどのプレゼンスを持っているのかを、具体例を挙げながら(やや冗長気味に)解き明かしている。ポイントはいくつもあるけれど、中でも重要なのは軍の存在。そこで共に時間を過ごした横のつながりが大きくものを言っている。さらに、軍を持っている他の国と大きく違うのは、上下関係の厳しさに縁がないということ。規律を守りつつ、自己主張はする。小国ならではの国家戦略は、こんなところにも垣間見える。
では、軍を持たない日本は見習うべき点はないのかというと、決してそんなことはない。一人が何役もこなす「マッシュアップ」は、業種や分野の壁が高い日本こそ、見習うべき発想だと思う。先日読んだ『ソーシャルインフルエンス』の中で、本田哲也が指摘していた職種のクロスオーバーがまさにコレにあたる。
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イスラエルには無礼と感じことがある位、物事を聞き出そうとする雰囲気があるとのこと。
また軍の役割はネットワークの形成や能力を伸ばす面からも有効に機能している。
イスラエルの成功例について言及している。