死との向き合い方
2020/07/08 09:28
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、自然界で動物が死んだらどうなるかにすごく興味があったんだろうなと思った。生殖の過程で死を運命づけられている動物もいるくらいだし、食物連鎖の上位と下位の喰う喰われる直線的な関係だけが自然界の死ではない。だから、社会性のある動物が死を悼んでも不思議ではないのかもしれない。科学的にそういった証拠はないけれど、そう思いたい人間の強い願望があるように見える。
死を受け入れることと死を避けようとする姿勢を受け入れることはコインの両面のような感じがした。人間として死と向き合うとは、両方を受け入れることなのだ。
人類の死の受け止め方の考察。
2020/02/17 11:50
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本をどう評価してよいのか、実はよくわからない。
概要をただ書けば、動物学者が「生きものの死」をできるだけ宗教や感情から離れて理解しようとした努力の軌跡、というところだろうか。法医学のデータにもなるという「死後の過程」の研究を見学したり、娘が鳥の死骸や祖母の死に接したときの行動を観察したり。アンチエイジングの「怪しげな」集会にも参加する。
すっきりとした明快な主張を読み取ることが難しかった。「出来るだけ生物学的に死を考察する」と序文にはあったが「終わりに」で行きついたのは「生命の意味を見つけようとしているのが人間だ」。
本書を読み、普段は目をそむけてしまいがちな「いつかは自分にも訪れるもの」についてもう一度自分なりに考えてみる。それでいいのかもしれない。ただ、腐敗過程の研究現場描写のところなどは食前などは避けて読むほうがよさそうである。
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最新の科学的知見を、哲学や動物学の議論を交えてわかりやすく紹介……なんてしておらず。
ふわっとした個人エッセイに、毛が生えたような
『身近で解りやすい話題』
だけど、私にとっては、
『死についてより考えが深まったりはしない』
本でした。故に、毒にもならないが薬にもならない星三つ、と評価します。
生についてよく考えるためには、死についてもよく考えねばならないと、自覚的に色々考えてみたことがある人には、向かない内容。
普段の生活で、気持ち悪い生き物は避けて当然、死や病のことなんて考えたくもない、心構えなんてしたくない。
ていうか、仏教に触れたことがない。
そういう人が初めて手に取ってみるには、いいかも知れないと付記しておくにとどめたい。
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生物学的な死を考えるというコンセプトのもと、様々な生物の生と死について著者の取材内容をまとめた一冊。読みやすくわかりやすい。ただ、ネタがネタだけにギョッとするところも多少あるので好き嫌いは分かれるかもしれない。
カラスは仲間の死を弔うのか、ロバはパートナーの死を悲しむのか、腐敗の進む豚の死骸の下で繰り広げられる虫たちの繁殖、500年以上生きた貝から考える長寿、スガの幼虫から紐解く虫と植物の生存競争、アカトビやホリッド・グラウンド・ウィーバーの保護活動から見る生物の絶滅などなど、知らない世界ばかりで面白い。
「なぜ人は死ぬのか?」「死ぬってどういうことか?」といった死に関する疑問が解消するわけではないけど、いろんな死のエピソードを読んで、死について考えるヒントときっかけをもらえた。
(本書を読んで、カツオブシムシはタンパク質を食べるから骨格標本の掃除に活用するというのを知った。古文書や古美術の世界だとその特性ゆえに害虫扱いだけど、捨てる神あれば拾う神ありなんだな。)
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「死なないように進化できないのはなぜか?」って帯文に惹かれて購入.微生物から鯨に至るまで様々な生物を挙げて死の考察がなされている.
が,結局帯文に対する答えは書かれていない.この文が無ければ読み物として面白かったのかもだが,この文が無ければ手にしなかったであろうから残念ではある.
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エッセイとしては面白いが、知見は中途半端。浅く広げすぎ。レミングの「地走り」はディズニーのヤラセというのは衝撃的だったが。
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動物の死について、様々な方向から多角的にエッセイ調で書かれている。ちょっと話題が広すぎて主題部分が伝わりにくい。レミングは自殺しないことを知ってびっくりした。ディズニー映画のやらせらしい。人間の寿命はどこまで延びるのか。脳の老化で今のところ130年が限界といわれているらしいけど、どんどん研究が進んで、もっと延びるのかも。そこまで長生きしたいと言われると、なんとも言えないけど。
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このところずっと小説ばかり読んでいたので科学書や哲学書
が読みたくなりこの本を手に取った。動物学者であり、
サイエンスライターでもある著者が、生物学における「死」
をめぐる様々なトピックについて書いた本。読み物として
とても楽しく読むことが出来たのだが、肝心の「死」が
生物の進化においてどのような役割を果たしてきたかという
点を突き詰めて考えるまとめのような章がなかったのが
残念。生物のほとんどが死んでしまう以上、死には進化上
何らかの利点があるはずなのだ。
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旺盛な好奇心でイギリス各地をめぐり歩き、専門家たちの話に耳を傾け、ブタの腐乱を観察し、ヒキガエルを轢死から救い、マスメディア報道の歪曲の真相を突き止め、507歳の生き物と出会う。
学者の科学的な本かと思いましたが、むしろ文系的、つまり人間にとってどうか。いろいろ訪ね歩いた体験記みたいな感じでした。
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それなりに面白かった。CSLでの話とのシンクロニシティとかもあったし。(酵母とか)ナウシカにおける腐海というのが死のメタファーであるということが改めて理解できた気がする。海底のクジラとか。そして、周囲と独立して生きているわけではないという生命のベースをもう一度考え直すということもできた。死は無限で生は有限なんだよね。
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生物とは何だろうか。それは生きているものである。
「生きている」とは何かといえば、一般には、「自己と外界を分ける境界があること」「エネルギーや物質を代謝すること」「自己複製すること」などの特徴が挙げられる。英語圏では運動(Movement)、呼吸(Respiration)、感覚(Sensitivity)、成長(Growth)、再生・生殖(Reproduction)、排泄(Excretion)、栄養(Nutrition)の7つの現象での定義があり、頭文字を取ってMRS GREN(グレン夫人)とも称される。
けれども、突き詰めて、一体生きているって何なのかというと、実のところ曖昧で未整理な部分も多い。
ウイルスは生きてるの? 生殖が必須の条件だとしたら、生殖能力がない交雑種のラバは死んでるの?
本書はそんな生命の謎に「生」と対極の「死」から迫ろうとするものだ。
著者自身、動物学者であるが、「死」を専門とするさまざまな研究者の元を訪れ、多様な観点から死を、そして生を考えていく。
ウワミズザクラとイモムシのせめぎ合い。
極めて長寿の貝とフリーラジカルの制御。
ブタの「死体農場」。
大した毒性もないのに猛毒と誤解されているゴケグモモドキ。
死んだ同胞を巣から運び出すハキリアリ。
マウスにネコを恐れなくさせ、「自殺」行為へと誘うトキソプラズマ。
個々のトピックスから、生物種によって寿命がほぼ決まっているのはなぜか、生物種同士の駆け引き、死が多様性に与える影響など、興味を惹く論点が浮かび上がってくる。
個人的には、死なないように進化しなかったのはなぜかという問いはおもしろい視点だと思った。そう、不老不死がよいものならば、そちらに向かう生物がいてもよい。どうもそうではないのは、そこに何らかの理由があるのかもしれない。
非常に整理されているというよりも、著者の思索という部分も多く、問いにも(問題の性質上)すっきり解決が与えられるわけでもないのだが、「死」から「生」を考えるというのはなかなかおもしろい試みだと思う。
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色々なことを考えさせられた。
ヒトは我先にと自分の欲望を通そうとする。
この地球上では高等生物なんだからもっと他の生物に対して遠慮とか思いやりがあってもいいんじゃないかと思う。そして教育が本当に大切だと改めて思った。
思い込みや自分勝手で他の生物を絶滅に追いやったり。
話を鵜呑みにする、ヒトに左右されやすい愚民ばかりだからそうなるのか。メディアによって操作するのも愚民が多いのをよくわかってるからか。
つまらない番組が増えたのも視聴者の大半が愚民だからか。
高等生物は教育しないと地球にとっても害でしかない。
ヒト以外も思いやれる教育。
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人間誰しも1度は考えたことのある「死」というテーマ。
それは様々な謎を我々に与えてくれるものだが、どれも正解に至るのは難しい。
その「死」というテーマに対し、化学的・物理的、そして生物学的に捉え、多くの専門家たちとの会話の中で研究を進めていくこの本の内容はとても興味深かった。結局結論は明確には出ないが深く考えさせられた。
色々な動物が登場し、それぞれの特徴が事細かに記されており、動物好きには人生で必ず読んで欲しい1冊と感じた。
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ポピュラーサイエンス、っていうジャンルの本らしい。そう書いてあったから、そうなんだな。『バッタを倒しにアフリカへ』とか『鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ』とかが該当するのかしら?だとすると、結構、好きであれこれ読んでる気がする。その中では、あんまり響かなかったなー。イギリスの生き物とか文化とかの事情に明るくないからかな?笑いのツボが違うからかな?でも、「死」もまた生の円環の一部なんだな、っていうのは感じられた。おんなじことアシタカも言ってるけどね。
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体裁はエッセイ風で、専門用語などもほとんど出てこず、とても読み易い。
生き物たちの営みを”死”という観点から改めて俯瞰する枠組みは期待を抱かせるし、イギリスでもゴケグモモドキにまつわるフェイクニュースが伝播したんだ…という話や、腐肉を喰らうコンドルの腸内環境についての説明、最近のアンチエイジングに対するアプローチなどなど、生き物ネタから派生する豆知識を色々と知ることができ、素直に「ほー」と感嘆する。
が、シヴィアな言い方をすると得たものはそれだけ、というか、小さなトピックスを四方山話として積み重ねることに終始し、冒頭で著者がぶち上げた”生き物はなぜ死を免れる方向に進化しなかったのか”という大命題に、結局のところ答えていないことが気に掛かり、本書を通じて貫かれる背骨のようなものが見当たらなかった。
ここは著者に責任があるところではないが、邦題に”動物学者”という言葉を入れる以上、ただの動物好きでは与り知らぬ専門的な見地からの考察をもう少し読みたかった、と切に感じる。
「パラサイト・イヴ」の方がよっぽど興味深くミトコンドリアの働きを紹介していたような。