芸人、日本語学者と幅広い活躍をされる著者がボーイズラブの魅力について講義してくれます!
2020/05/27 11:10
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、漫才コンビ「米粒写経」の一人であり、また日本語学者でもあるサンキュータツオ氏による作品です。また、同氏はボーイズラブ(BL)愛好家としても知られ、同書は、そのサンキュータツオがボーイズラブとは全く縁遠い男、春日太一にボーイズラブの魅力を徹底講義するという設定で話が進められる内容となっています。同書の構成は、「第1章 男が語るBLとはなんぞや!」、「第2章 男がBLに目覚めるとき」、「第3章 男がBLを読んでみたら」、「第4章 男がBL思考をケーススタディしてみる」、「第5章 男が妄想に挑戦する」、「第6章 男はBLに評論されている」、「第7章 男はBLの絡みをどう楽しめばいい?」、「終章 《着地編》 男と腐女子の関わり方」となっています。なかなか面白い作品です。
腐女子にも、そうじゃない人にも
2020/04/17 08:49
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投稿者:うれい - この投稿者のレビュー一覧を見る
BLは情報と情報の間の余白を自分なりに解釈する知的遊戯。中でもやおいは原作を史料に見立てるならば歴史学に近い。腐ってから早5年以上が経ったが、BLは奥が深い。BLとやおいの違いなんてこの本を読むまで知らなかった。ショタの由来が正太郎少年から来ているとか。ところで何故自分は腐ったのだろう?はっきりとはわからないが、ひとつにはやはり少女漫画からの逃避があったのかも。少女漫画はつい現実と比べてしまう。でも女もいる中で男を選ぶBLでは、性欲と切り離された純愛を純粋に楽しめる。少女漫画よりずっと気持ちが“楽”だ。
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20190125〜0202 男性によるBLの入門書?著者はBLを「余白を見つけ、妄想を味わう知的遊戯」であると定義づけている。「腐」=BL的思考であり、解釈を経た補正と関係性の再構築である、としている。BL作品にゃBL的思考を促しやすい作品についても紹介している。
これを読んでから、ついに「風と樹の詩」を読んじゃった。でもこれって群像劇だよな。はまるほどではないけど面白かった。
著者の定義からすると、私も立派な腐女子、ということになるのだろうか。著者によるBL的思考は、私には割と当たり前の感覚(余白や行間を読む、ということ)なのだが、必ずしも男性同士の恋愛を妄想したり、カップリングを楽しんでいるわけではないのだが。。「腐女子」という言い方もなんだかなあ、と思う。
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文庫化してからようやく入手できました。文庫に追加された内容もあってラッキー。
当初、サンキュータツオが指導者、春日太一が受講者として出発したBL講義が、途中春日さんのナニカが開眼してあるカムアウトをすることで、一瞬攻受が逆転し、後にお互いがお互い対等な関係になっていく姿に心打たれました。
(タツオ×春日→春日×タツオ→タツオ⇔春日)
BLという現象(とあえて書く)についてロジックを学ぶと共に、共著の二人の関係性の変遷を通してBLがどういうものか間接的に読み取れる、二倍おもしろく読めました。
…しかしつくづく自分の中では、オリジナルなカップリング妄想する種というか元が枯渇したんだなー…と実感したりもした一冊でした。
そんな中で創作妄想していた時の自分のBLポリシーを思い出してみると、確かにその中に自分の他人との関係性で理想とする形を投影していたなぁ…と再確認も出来た事もよかったかな。その辺をもうちょっと突き詰めて考えてみたい。
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ずっと文庫になるのを待ち望んでの購入、読了。
自分に腐の世界を楽しめる素地があるとは思ってもいなかったけれど、TLを読んだ時の自己投影の出来なさと息苦しさと違和感からBLの門を叩いてみたところ、萌えの感情を発見。あえてしばらくそのままの薄い状態を維持し、BLとはなんぞや?と一から学ぶつもりでこの本を読んだ。
サンキュータツオ氏のレクチャーを受けているようなつもりで、毎晩寝る前に少しずつ読み進め、時には夢にまでBLを見て、第一部基礎編を読み終えるのに1週間くらいかける有様。作中で同じようにレクチャーを受ける立場の春日太一氏は非常に優秀で、所々置いて行かれている感を味わいながら何度も読み返して、とうとうやおいとは何たるかを知るに至る。私はとうの昔に『日出処の天子』で既に腐の世界の門を叩いていたのも自覚した。
百合はガラス、BLは超合金とはまぁ、なんと的を射た表現かー。第三部は特に面白かった。
男性はみんな男性向けのエロマンガに欲情してるんだと思っていたけれど、そうではない人もいると知れたのは嬉しい発見だった。
巻末のBL文献案内で紹介されている本も、書店であっさりみつけたので、とりあえず買った。
学問として考えてみても、腐の沼はどこまでも深そう。
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結局、それぞれ個人にとってのいちばん魅力的な存在って「自分の妄想したその人」だと思います。ヘタするとその人自身より魅力的だったりする。ずっと時間をかけて愛情こめてその人のことばかり考えて考えて練り上げられた結晶なわけですから。
(P.351)
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TBSラジオリスナーにとってはお二方ともアイドルそのもの。
サンキュータツオ氏……私の上の世代のオタク。アニメオタクにして日本語オタク。萌え→BL。「マリみて」。
春日太一氏……時代劇研究家、の皮をかぶった映像オタク、もちろんアニメも含む。この人のガンダム語りは絶品。百合好き。なんと「1999年の夏休み」好き!!
(私……百合好き。身内にBL好きがいる。)
もう、お前は俺か的な発言多数。
お二方に宮地昌幸氏を加えた鼎談音声配信「【日映シネマガ】偏愛映画放談~「櫻の園」篇~」は、わが「ラジオ・バイブル」なのである。
こんなふたりの対談なのだから、楽しめないわけがない。
レジュメ→対談→ここテストに出るよ式のチェックポイント、という構成も素敵。
また本全体の構造として、
第1部 基礎編 タツオが春日に解説。
第2部 応用編 春日めきめき上達。
第3部 解脱編 春日おもいのほか上達しタツオを上回る片鱗を見せる。
という流れ自体が、BL展開をなぞっているというメタ構造の素敵さも。
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NHK『ねほりんぱほりん』の「腐女子」回で、現役腐女子たちが赤裸々にその生態を語っていたが、それをさらに掘り下げた印象を受けた。<腐女子の視点とは、作品をよりディープに楽しむハイレベルな知的遊戯である>とのポジティブな観点から、腐女子的な思考が、おじさん2人によって徹底的に腑分けされていく。
著者2人の萌え語り(=人生語り)が、楽しい上に興味深いものばかりで、読むこちらまでも内省的な気持ちになり、思考がクリアになった。新たな発見が数多いという意味で、これはもはや学術書のレベルに達している気がする。
あとBL・やおいに限らず、「関係性に萌えを見出す」「描かれていない部分を、能動的に想像力で補う」という楽しみ方は、のめり込むコンテンツがあるオタクならみんな共感できる筈で、創作論の本にもなっている。
(実際、春日太一は本書の中で、面白い作品にはおしなべてBL的と言えるキャラクター同士の激烈な関係性が存在することを指摘している)
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BLを知らない男性向けのBL入門書。原著は2016年、文庫は2018年。
本書において「やおい」は次のように定義される。則ちそれは、世界を原作としてそこに個々独自の解釈を施すことで、世界をファンタジーへと改変しようとする、知的遊戯であると。その改変の仕方には、以下のふたつの約束事がある。
① まず、ふたつの対象をキャラクタライズする。ただし、両者とも男性とする。なぜなら、女性と男性の組合せにしてしまうと、②でそこに設定することになる関係性が既存のジェンダーバイアスに引きずられたものになってしまい、さらにどうしても女性としてキャラクタライズした対象に女性である自己を重ねてしまうことによって、現実とは別個の世界として独立させたいファンタジーの中に現実世界の自己の影が不純物のように残存してしまうから。空想の世界を男性だけにしてしまえば、自己を透明な観察者としてそこから切り離すことが可能となり、それをヨリ純粋なファンタジーとして楽しめるから。
② 両者の間に何らかの関係性を設定する。ただし、両者は恋愛や性愛の枠組みにおいて解釈される。なぜなら、一般に多くの女性に共通の関心事項とされる恋愛や性愛の形式をとることで、女性同士でそのファンタジーを共有することが容易になるから。
サンキュータツオによると「BL」「やおい」は日本人女性による発明だそうだが、本書のなかでも指摘されているように、そこに在り得たかもしれない関係性の可能性をあれこれ空想する楽しみというのは、別に女性だけのものではなくて、男であっても自分のなかでさまざまな物語を妄想するときに同じようなことをして楽しんでいるのではないかと思う。尤も、そこに設定される関係性の多様さや精妙さには差があるかもしれないが。それでも、自分好みの関係性を対象に読み込むというのは、フィクションを楽しむ際の普遍的な営みではないかと思う。とするならば、男がポルノを消費するのと同じように女も性的欲求を満たすために「BL」を享受しているとする憶測は、必ずしも妥当ではないことがわかる。
かつて『ユリイカ2005年11月号=文化系女子カタログ』所収の速水筒「ひとでなしのゲーム」の文中に、「森羅万象はやおいだ」という強烈な一文を見つけ、そこで取り上げられていた「無機物やおい」という想像力の遊戯に驚かされたことがある。それ自体では無関係な個物の集合に、あたかも位相構造を導入するかのようにして、そこに関係性を打ち立てていく。この図抜けた想像力は、やはり面白いと思う。
しかし、そこに読み込まれるさまざまなキャラクターとその関係性とは、既に記号化されてしまっているものであって、所詮は既存の約束事の順列・組合せでしかないようにも思われる。この「既に囲い込まれてしまっている」という感じが、ひっかかる。約束事を共有している者同士でそれを確認し合って面白がっているという、それこそ約束事を踏襲しているだけのやりとり=「内輪ノリ」は、不毛なもののように感じてしまうが、部外者が口を出すことではないし、ひょっとしたら表現とその共有ということにおいては普遍的な光景であるといえるのかもしれない。
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後半、春日太一が自分の身体についてある個人的な告白をする興味深い箇所がある。確かにこれまで、一般に男性の身体性に関しては、男によっても女によっても、限定された仕方でしか語られてこなかったように思う。男性の身体には、当事者が知らずにいるだけで、ひょっとしたら未だ現実化されていない性愛上の可能性が潜在しているのかもしれない。
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面白かったです。腐女子もBL好きも多種多様。テレビでたまにBL好きな人の話とか聞くと自分と全然違うのに腐女子はこうだ!みたいに言われてる気がして嫌だったのですが、この本では自分と違う意見も大前提に人それぞれが成り立っていたので気になりませんでした。そして納得できる部分もすごく多かった、自分が何でBLにひかれるのか理解が深まった気がするし、なんかこれ読んでから平気で私BL好きだよって言える気になった。これきっかけで窮鼠は…買って読みましたが面白かったです。私も同級生あまり味しないタイプだったので。それと時代劇ベストカップルの新選組血風録の話、読んでるだけで泣けてきた、これ絶対やばいやつ。新選組血風録、何とかして見たいと思います。