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スマホやパソコンでは、嬲、娚、娵、啌、鯲、蟶、妛といった不思議な文字を打つことができる。しかし、いったいどう読むのか、何に使うのか――。これらの漢字の由来を徹底調査。また、江戸時代の五代目市川團十郎が先代「海老蔵」を憚って自分はザコエビだから「鰕蔵」と称したという説を検証する。さらに「止めるかはねるか」等、テストの採点基準を科挙にさかのぼって大探索。漢字の不思議をめぐる楽しいエッセイ。
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『スマホやパソコンでは、嬲、娚、娵、啌、鯲、蟶、妛といった不思議な文字を打つことができる。』
この「嬲」は「嫐」でないと本文の意を汲まない
この紹介文にもある「妛」の様な幽霊漢字は有名な謎だったが、それ以外にも盛りだくさん
笹原先生の研究の経過の一端が実況形式で見えてくるつくりであるが、その分「鰕」の項は読みづらさを感じたところも
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ブクログには,しょうもない粗探しばかり書いている。
正確に言えば,探したアラを書くためにブクログを使っているのだが。
たまには,著者が喜ぶようなことも書いておこう。
本書の「第3部 科挙と字体の謎」は,繰り返し読むにたえる圧巻だと思う。
漢語音の四声を数字で書いているのは,日本語音のルビをつけるのに支障があるためか。ピンイン表記でよかったと思うが。
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笹原宏之『謎の漢字』(中公新書、2017年4月)読了。
漢字の由来と変遷を調査した重厚なエッセイ。
全体が3部構成で、「日本の地名・人名と謎のJIS漢字」「海老蔵は蝦蔵か」「科挙と字体の謎」からなる。
個人的趣味からいえば、第1部の「日本の地名・人名と謎のJIS漢字」が一番面白かった。
まずもって驚いたのが、JIS漢字が第4水準まであるということだった。これだけで小生の知見が広がった。
ところで、ワープロを買ったのは1985年か86年頃だったろうか。そのときに、JIS漢字という言葉を覚えた。いわば日本語をワープロで打つためのコード付きの文字列で、2台目のワープロで第2水準まで打てることに驚いた記憶がある。
最初のワープロでは「恣意性」の「恣」、「乖離」の「乖」、「曖昧」の「曖」も打てなかった。すべて第2水準だったからである。
では、第1水準にしても第2水準にしてもJIS漢字がどのようにして決められたのか。これは『国土行政区画総覧』という、全国の地名を調べ上げた資料に基づくものであったという。
つまり、日本のどこかの地名に使われている漢字は、それがたった一ヵ所だけであったとしても、JIS漢字として採用されたという。これが二番目の驚き。
たとえば、本書の最初で採り上げられた漢字は、嫐(どう、のう、なぶる)である。第2水準に入っている。これは熊本県宇城市にある地名だったという。ついでに嬲(じょう、なぶる)も第2水準である。これまた地名で使われていたことから採用された。女男女も、男女男も「なぶる」と読むが、その字面から「なぶる」と読むようになったが(日本人の感覚ってステキ)、そもそもはなぶることが一般的慣習だから選ばれたのではなく(当たり前だ)、ちゃんと地名にあったから選ばれたわけである。
このように、その土地の人でなければ読めない漢字が、ワープロで打つことができるという目的でJISの第2水準に多数含まれている。
他にも娚(ナン、ダン、ネン、めおと)、娵(シュ、よめ)、啌(コウ)、鯲(どじょう)、蟶(テイ)、妛(シ)などもすべて第2水準である。いずれも日本のどこかの地名で使われていたから採用されたという。
第2水準にこのような文字があったとしても日常生活では使わないので、お目にかかることはないし、使わないので知らなくても問題はない。
しかし、我々が使っているPCで、あるいはスマホで、日本語が日本語として入力できるのは、JIS漢字が定められているからであることを知ると、俄然、漢字が面白くなる。
第2部の海老蔵の話は歌舞伎の話で、これはこれで面白かったが、時が時だけに割愛。
第3部の「科挙と字体の謎」は難しかったが、それでも言葉と同じように、漢字も時代とともに変化してきたことを思い知らされた。
点を打つとかはねるとか、漢字を勉強するときにはいろいろ注文が多く、小学校などでは点がひとつないだけで減点されたりしたが、長い時間をかけて同じ間違いをし続けると、それが正しい字になってしまうこともある。
そういえば、かつて漢字を使う国(中国、日本)では漢字があまりに数が多く���しいものも多いので簡単にしてしまおうという動きがあった(高島俊男『漢字と日本人』文春新書、2001年)。その結果として、中国ではピンイン付き簡体字ができた。一方、日本では「かな派」と「ローマ字派」が争ったらしい。その結果として、漢字(常用漢字)、ひらがな、カタカナが混在することになったらしい。何事も中途半端は良くない。
今では音声入力の精度も上がっているようだから漢字を書けなくてもいいし、今後は文章を短くするためだけに漢字が残るのかもしれないなあ。
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全き知らない世界で、興味もなかったのですが、普段使うことがほとんどないレアな漢字が地名に由来することを知りました。日本国中の地名を調べ上げ、漢字を拾っていった人々の苦労と熱意が伝わってきます。
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書肆で見かけて、是非読んでみたいと思っていた。3部構成で、特に第一部が興味を引いた。JIS漢字の由来は昔の地名にあったということ。多くの名字は地名に由来するわけだから、地名・名字というのはJIS漢字の、特にほとんど見かけない字の出典ということになる。
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<目次>
第1部 日本の地名・人名と謎のJIS漢字
第2部 海老蔵は鰕蔵か
第3部 科挙と字体の謎
<内容>
第1部の日本のみで使われる「国字」を追っかけたもの。第2部は、漢字から「市川海老蔵」家の歴史を追っかけたもの。第3部は、漢字の本家、中国の漢字の使われ方を「科挙」から追っかけてた労作。自分の興味からすると、ちょっとだったけど、教師として、漢字の「とめ・はね」などにこだわるのはあまり意味のないこと(歴史的には)がよくわかった。現在の常用漢字にいても、フォント上の文字と書く文字をどう対比させるかは、難しいんだとわかった。
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正しくは読み終わっていない。第三部の科挙の話がちんぷんかんぷんで読み飛ばしてしまった…。簡単に読める本ではなかったね。
「令和の令の字をどう書くか」という時事的なことへのアンサーもあっておもしろかった。正しい漢字とは何なのか、正しい書き方とは何なのか、というかことを考えたいと思う。
あとこの感想をスマートホンで打てていることをJIS漢字に感謝。
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笹原先生がエッセイ!とな?
一見、いつもの、これまでの笹原さんの新書といった感じがするが…。
うん、たしかに「麩菓子」と「竹輪麩」を「逸品だと思う」と言ってみたり、子供を資料館の外で待たせておいて調査に勤しんだりよいった、ちょっとした身の上話が出てきたのが新鮮かな?
三つの内容からなる。
第一はJIS漢字。
その制定に国土地理院発行の『国土行政区画総覧』が大きな役割を果たしていることなどが書かれる。
日本で人名の調査がきちんとなされていないということを初めて知った。びっくり。
第二は海老蔵の漢字表記の話。
五代目が、初代、二代目に自分が及ばないと謙遜して「鰕蔵」とした話などを、資料をもとに追いかける。
第三は科挙の漢字の字体の評価。
宋代あたりは、用字の適切性が見られ、点画の位置や形などにはそれほど厳しくはなかったらしい。
逆に清代には、特定の書体でなくてはいけなくなったり、正字、俗字の区別にやかましかったりと、細部にこだわるようになる。
このあたりの話になると、日本の漢字教育のことも思い出され、対岸の火事とも言っていられなくなる。
書道の発展にもマイナスの影響があった、という指摘も考えさせられる。
昔読んだはずの宮崎市定『科挙』、村上哲見『科挙の話』をもう一度読みたくなった。
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良書。論文めいた言い回しも散見されるが、内容がよく整理されているため読みやすい。仕事柄「謎の漢字」に触れる機会が多いため、取り上げられる漢字のあれもこれも身近に感じられて大変面白く読めた。