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ドンには定義がある。
自分の業界を愛してやまないこと、愚直なほどにピュアであること、チャーミングであること、面倒見がよいこと、金に執着しないこと(金よりも名誉)、問題解決にフィジカルも辞さないこと。
まごうことなきボクシング界のドンが、山根明である。
彼の言うことが客観的に正しいかどうかは、どうでもいい(思ったよりも現在のボクシング連盟もやばいのはどうやら本当のようだが)。
自慢も含めて彼自体のピュアネスさ全開の独白の仕方が清々しい。せせこましい半グレ連中の回顧本とは文字通り役者が違う。
戦争経験、在日という出自、複雑な家庭、やくざ者との付き合い、女性遍歴、天皇陛下や映画スター、力道山との交錯、、、
彼を通して、昭和という時代が見えてくる。
ゴシップ的には田岡一雄と横綱朝潮の関係が悪気なく開陳されている。
またこうしたドンを中心とした組織が、世界中にあり、その集合体が国際組織になっていることも面白かった。まるでドンの小宇宙。
ただ、海外のドンは、もともと金のある連中(しかも裏組織とつながりのある)が趣味でやっていることが多い。だが、日本式ドンは、基本的に無給である。だからこそ信頼を集めて、金にかえられない権力を手にする。