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経済から見ため政治の本であるが、日本の政治の現状を説明するのに実に説得力がある。
確かにナショナリストであるはずの安倍政権が「低所得者に優しい」政策や外国人労働者の「事実上の移民政策」を実行していることは常々感じていたし、世界で右翼と左翼の分類が混乱してきていることも皆が指摘している通りである。本書の考察はその政治の現実を整合的に説明できている。
本書の世界の左派政党が「知的エリートの党」へと変質したとの認識や「リベラル知的エリートへの労働者層の反乱」との視点は実に秀逸である。
しかし、最終章の「日本への教訓」の金融政策の評価についてはちょっと粗くて賛同しかねると思えた。
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左派政党の支持層が都市部の知的エリートになった結果、アイデンティティポリティックスに重きが置かれるようになった。格差が広がっているのにも関わらず、もはや左派政党は低所得の労働者の味方ではなく、再分配に興味をもたない。そして、いわゆるポピュリストが、空白になった低所得労働者から支持を受けて台頭してきた。これは、本書のベースなったピケティの政治分析だが、とても納得感が高い。
これをベースにマクロ経済的な観点から、移民問題、金融政策、財政政策などに焦点を当て、日本、アメリカ、イギリス、EUの政治・経済をきわめてクリアに解説している。
日本については、アベノミクスは金融緩和のみ支持。結果的に、安倍政権は低所得者にやさしかったと評価。ただ消費税増税は最悪で、これに加担しいまだに緊縮路線を唱える旧民主党勢もダメ。また、安易な外国人労働者受け入れも、賃金に下落圧力がかかるため、批判的。これらは、個人的にも納得がいく評価だ。
ドイツだけが得するEUの通貨制度への批判も、勉強になった。もういっそ、ギリシアとかイタリアとかも離脱したほうがいいんじゃないかと思わせるものだった。
移民受入についてのマクロ経済面での指摘も、読みどころだろう。当たり前だが、移民受入は、単純労働者について賃金下降圧力が生まれる。資本家や経営者にとってメリットが大きく、一方で低賃金労働者にとって死活問題につながりかねない。受け入れの社会的コストは、国民全員にかかることを考えると、受け入れの判断は慎重にする必要があるだろう。個人的には、今の日本の移民政策は最低だと思うが、ここで書かれいている意見は賛成できる。
しかし、あらためて、マクロ経済がわからないと、政治の良しあしは判断しにくいと感じた。ただ、このレベルの知識が有権者全般に広く共有されることは、まあまず無理だろうなあ……。
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近年では、政治の対立は「左右」ではなく持つものと持たざるものによる「上下」の軸になっていると言われます。
本書では、まずかつて弱者の味方であると言われていた左翼政党が、現代においてもはや労働者(弱者)の見味方でないことを欧米の論文を元に分析し、さらに右翼的と言われた安倍政権が立憲民主党などの左翼政権よりものむしろ労働者目線の政策を多く打ち出していたことを論じています。
そして、アメリカのトランプ大統領のような移民制限(右翼的)な政策がなぜ多くの弱者に指示されているのか、また逆に移民政策で誰が得をするのかを解説しています
【こんな人におすすめ】
現在の世界の政治の状況について詳しく知りたい人