シベリア抑留を聞く、描く
2022/03/28 16:19
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
父親の戦争、シベリア抑留体験を、娘が聞き出し、背景を資料などで補完しながら、漫画で表現した作品。ほのぼの系のキャラクターだが、当然ながら、中身は重い。
おざわゆきさんが聞き取りをしている場面も含めて描かれており、今と過去が行き来するが、それが、戦争体験や抑留体験を単に過去のものにしない効果をもたらす。
戦地やシベリアでの過酷な体験だけでなく、父が戦後をどう生きたのか、娘の目線から今に落とし込んで描かれているからだろう。
戦争の記憶を受け継ぐために、何度でも読み返したい漫画の一つだ。
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京都マンガミュージアム「戦争とマンガ」展に触発されて展示作を買って読む第3弾。勉強になった。このほのぼのとした絵柄で家族の見た地獄を描く。しんどかったことと想像する。
今後こんな目に遭う人が生まれてはならぬ。
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2015年最後の本として読了。
未成年の大学生が招集され、関東軍の補充兵となり、シベリア抑留を体験し帰国。そしてその体験を漫画家の娘に話すというストーリー。とても感動した。
主人公は抑留生活の中でだんだんと諦めて今日を生きることをする。抑留生活の様々な人間模様。過酷な自然。帰国後のレッドパージの冷たい社会。でも今日を生きることによって、つらいことを忘れる。
漫画家の娘がインタビューすることによって、父の思い出が発掘される。娘は罪悪感さえ覚えるが、やはり伝えるべきことを描く。そしてその伝えるべきこととは、読者への多くのメッセージとなる。
漫画の良さも手伝って、暗いはずの話がさらりと、でもしっかりと描かれていると思った。とても良い本。
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シベリア抑留が過酷なものであったということを、情報として知っていたが、想像以上に酷い話で、読み進めるのが辛くなりました。労働の大変さと共に、共産主義教育があったり、帰国してからも辛い目に遭われていたことなど、知らなかったことも多く勉強になりました。
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当たり前だが、戦争に負けるってことは「武装解除」ということ。法治下状況でさえ銃を持つ者には逆らえない、まして 「敗戦」と聞かされ殺されても訴えるところもない。しかし“敗残兵”を労働力として利用するのを狙っていた。上官は指図して労働しない。超厳寒、栄養不足/「ソ連とは戦争していない(ソ連からの侵略)」と池田大作『人間革命』にも書いてある。’56年、日ソ協定で補償を求めないのが確定されてやっと最後の抑留者が帰国した/武装解除憲法を持っているために在日に好きなようにされてまだ「平和…」に執着する人もいる…米軍に
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亡くなった祖父も、抑留体験者。遺骨収集団を結成してシベリアに何度も行ったり、何百万もかけて慰霊塔建てたり、日中友好協会に入って活動したり。手記も残しているけれど、抑留体験はそれ程までに人の一生を左右する。「赤旗」は、まぁ、付き合いでとってたのかな。ちゃんと読んでいたのを見たことがない。でも、抑留体験と戦後補償の話は聞かされた。ノルマの話、凍傷の治し方、凍った地面は50センチ掘れるか掘れないかだったこと、テールスープが最高に美味しかった、厚生省の動きは鈍すぎる、などなど。挙げればきりがないほど、小さい頃から聞かされて育った。
この本の作者の方は、お父様が抑留体験者だったけれど、その経験に向き合うのに時間を必要とした方だったようだ。色々な形の向き合い方がある。絵にしたり、手記にしたり、慰霊に力を入れたり。ただ、どんな傷を負ってでも生き抜こうとしてきたそのひたむきさに違いはないし、そんな傷を負わせるようなことが繰り返されてはならない。
抑留体験者の高齢化が進み、祖父を始め、多くの方が既に鬼籍に入られた。このマンガのように裾野の広いメディアから、たくさんの人に関心を向けてもらえるようになればいいと願ってやまない。
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本書は、作者の父親が語るシベリア抑留体験を聞いてまとめられたものです。この闇がいかに根が深いものだったかが察せられます。こういう過酷な体験を経てきた人間が、自分の身内にもいたことに、驚きを隠せません。
何度かかつて、ここにも書いたとは思いますが、僕にはシベリア抑留を体験した母方のおじがいて、彼は幼少期の僕に軍隊式の直立不動や敬礼を何度もさせるというファンキーなヒトだったということを覚えておりますが、とうとう本人から、当時の事を聞くことはできずに終わってしまいました。
本書は作者のお父さんが実際に体験した過酷なシベリア抑留の様子を直接聴き書きし、2年半の歳月をかけ、全3巻の同人誌として完結させた作品です。という事実を調べていて初めて知ることができました。
かつて『不毛地帯』の原作およびドラマを見ていたときも、主人公の壱岐正が過酷なまでのシベリア抑留生活を体験していた記述があるわけですが、学徒動員で満州に赴任された筆者の父親は、すでに戦争が終わっていたにも関わらず、ロシア軍が攻め込んできたときに捕虜となり、飢えと寒さの渦巻くシベリアに抑留されていきます。
過酷な労働と粗末な食事のため、次々と
「俺たちは白樺の肥やしになりにきたのか」
と言葉を漏らして斃れていく同胞の姿を自分のおじも見ていたのかなと、そんなことを思いながらページをめくっておりました。
やがて、ロシア兵が「これは」という人間を連れて行って「アクチブ」とし、彼らが収容所内で猛威を振るい、『自己批判』の下に壮絶な吊るし上げをする場面が本当に息が詰まるものでした。
極めつけは『暁に祈る』というノルマを達成できなかった人間を木に縛り付け、一晩冬空に放置していると翌朝そのように見えたというなんとも壮絶なエピソードも、心苦しかったです。
そして、筆舌に尽くしがたい日々を送り続けた筆者の父親は比較的楽な作業に回され、舞鶴へと帰ってくることができたのですが、筆者の聞き取りがきっかけで、自分が帰ってきた舞鶴港へ行ってみようと思い実際に作者と行く場面は感慨深かったです。
こういう話には個人的なものが相当絡みましたが、そういったところも諒とされていただければと思っております。
※追記
本書は2015年7月27日、講談社より『新装版 凍りの掌 シベリア抑留記 (KCデラックス)』として再販されました。