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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふたつのストラップを狂言回しに進む塔を巡る物語。
時代は飛び飛び。技術を繋ぐ男たちの誇りが見所。
一番気に入ったのは猫を語り部にした第四章。「我輩」がいい性格してます。
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火災や戦災で焼失しても、地震では決して倒れなかった四天王寺の五重の塔を千年以上にわたって、再建し、守ってきた歴代の匠工たちの物語、というと、硬そうに思うけど、これが出だしから軽く裏切られるというか、そうきたかと。ネタバレすぎるから詳しくはいわないけど、一歩間違えたら、安っぽくなりかねない設定を、五重の塔の建築技術などを絡ませながら、だんだんと違和感なく馴染ませていく構成には素直に感心。気軽に読めるのに、なんだかいいことをたくさん知ったような読後感が心地良い。
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金剛組のCMのような小説ですが。オビに「技能時代小説」とあり、なかなか的を射た表現だなあと。時代があちこちに飛ぶのも構成としてなかなか面白い。百済から渡来人として日本に来てからの金剛組の時代時代での奮闘と技の継承の物語は、事実に基づいているので説得力もあり面白かった。
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四天王寺の五重塔を中心に、時代時代でその強さを作った人や、その強さを引き継いだ人 (+α) の物語。その強さが現代まで引き継がれたのは奇跡という感じがした。
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幾度も焼け落ちては再建された五重塔についての、歴史をさかのぼりながらその時々のエピソードを綴る物語。
語り手が聖徳太子とスカイツリーのストラップということで軽め。
木下さんと言えば渋いながらも軽快な時代物というイメージだったが、これまで読んできた作品とはだいぶ雰囲気が違っていた。
現代~初めて五重塔が建てられた飛鳥時代へ、その時々の職人たち、あるいは建設に関わった人々の思いやドラマを描くと同時に、この不可思議な建築技法についても語られていた。
例えば五重塔を貫く心柱。これこそが肝心要の中心となる柱なのかと思いきや、そうではなく、塔を支える側柱と呼ばれる柱も繋がっているのではない。
未だに完全には解明されていないというその建築技法によって、焼失はあっても地震で倒れたことはないという奇跡の塔が出来上がっているというのは興味深い部分だった。
また飛鳥時代編では聖徳太子という人物について大胆な説が展開されている。
山岸凉子さんの『日出づる処の天子』で聖徳太子に興味を持った私としては、聖徳太子がいてほしいという気持ちの方が強いが、不在説も強くあるのでどちらかは分からない。
このストラップのように歴史を遡ることが出来たら面白いのに。
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五重の塔が地震に強いと言うのは、本作品で初めて知った。またこの時代においてなぜ地震に強いのかも十分解明出来ていない事にもビックリ。昔の人ってスゴイね。
聖徳太子とスカイツリーのストラップがタイムトラベラーになって物語が進んでいく。
この話でも出てくるが、五重の塔を伝えた技術者は朝鮮半島からやって来たと言われている。今の関係が残念ですね。
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連作短編6編+2
四天王寺の五重の塔の歴史を作り手側の立場で描いている。心柱や垂木など構造などかなり詳しく説明され、いろいろな時代の棟梁たちや出来事がミステリータッチで工夫が凝らされている。ただ時代があちらこちらしているのと携帯ストラップの軽い語りが好きではなかった。
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心柱がすっくと立つ五重塔の構造断面図を何度も何度も穴のあくほど見返しながら読んだ(断面図は冒頭部分に掲載あり)。たしかに美しい。古の匠が、理論を超えてその美のなかに真を見たのだろうな、すごいことだ、浪漫だ。
この塔の構造の神秘の部分だけでなく、なぜ倭の国にこのような塔が建つことを求められたのかという歴史的存在意義まで含めるには、あらゆる時代から視点を変えて語る必要があり、“ストラップ”が各時代を旅して、その所有者に視点が移るという設定が、頭を切り替えやすくて、とても感心した。屋根や側柱などの支え、しなる構造は高度な数学や力学(わかってしまえば教わるだけならシンプルなのかもしれないが、数学の定理の道を切り拓いてきた知恵者たちもあらためてほんとすごい)の上に成り立ってるんだなー。伝右衛門の章が、いちばん心に残ったな。泣いた赤鬼の青鬼くんをおもいだした。
“変わることをおそれるな”
”謎だからこそ知恵があつまる”
ひとが未来へ歩みつづけるために。勇気をもらえるメッセージが詰まっている。頁を繰ってこの国のかつてのいつかを旅しながら、考えさせられた。
学ぶ喜びのある1冊。良作です。
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地震で倒壊した例がない五重塔。その五重塔は、建築構造として心柱に全く依存していない。
心柱の謎・・・はいいとして、聖徳太子はいただけないな。
心柱構造をわかりやすくした建築工学の本のほうがよかったような気がする。
登場人物の描き方が、どうも薄っぺらくて残らない。
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四天王寺の五重塔と金剛組(本作では魂剛)の各時代の建築を巡る歴史小説。
出だしの聖徳太子とスカイツリーのストラップファンタジーは自分としてはとっつきにくかったですが、連作本編の人情噺や歴史背景を基にした物語は面白かったです。
特に聖徳太子の正体の著者の見解や、五重塔の建築的な素晴らしさは一読の価値ありです。
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一度も倒れたことがない五重塔、その宮大工たちお話。飛鳥時代より現代まで、聖徳太子が見守り(!)、スカイツリーまでその「心柱構造」は続く、職人たちの熱い物語。
聖徳太子により中国から仏教とともにやってきた金剛組の祖の大工。地震で倒れるのよう工夫を凝らした。火災や戦禍により消滅してもその時の宮大工により再建されてきた。建物の中心にある「心柱」、その構造がスカイツリーにもある。今もって技術的なことは解明されていないようです。1300年前にこの構造が使われ始めたというの驚きで。聖徳太子が随所に出て面白く、そして難しい解説なく、その時代での人間ドラマありで、興味深い物語でした。地震で倒れない技術を設計した人に解説してもらいたい。歴史が弱い私としては、この柔らかさが読みやすかったかな。
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そうだわ、世界で最も古くから続く会社「金剛組」って新書で読んだわ。西暦578年創業ってなんともはや。聖徳太子をストラップに、さらにはヒトやネコに憑依・憑霊させ、1400年の時代を往来して五重塔の歴史と仕組みを解くっていかしてる。木造であれだけの高層建築物が、たび重なる大地震でも崩壊しないってのがいかに凄いことなのか知らされる。揺れに以前に、現代のような深い杭基礎なくして傾かないってのがそもそもエライ。日当たりのいい所で育った木は、年輪の中心がずれるからゆがみが出るって、なるほどなぁ。木造建築技術の奥深さのほんの一端ながら、お勉強になりました。スカイツリーとの関係も、最後の解説で感服。
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有志以来、地震で倒壊していない木造建築、それが五重塔。各時代の五重塔建立にまつわる八つのお仕事ストーリー。五重塔が、直接でないにせよ現代の高層ビルやスカイツリーの建設に影響を与えているという件りには、鳥肌でした。以前1000年以上の歴史のある金剛組の倒産の記事を新聞で見た気がしますが、こんな物語があったとは知りませんでした。目から鱗の読書でした。
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世界最古の企業「金剛組」。五重塔からスカイツリーまで共通する心柱の技術。この魅力的な題材が十分生かされていない気がする。
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四天王寺五重塔を時を駆けながら描いていく。
建てては燃え、燃えてはまた建て。その度に技術も工夫も凝らされていく。
建築物だけでは無い。人は手に入れては失い、失ってはまた手に入れる。考え、工夫して。
我々は今、多くのものを失った。これから何をどのように手に入れていくのか。それを考えなくてはならない。