とても分かりやすく、いい構成である
2024/08/21 22:09
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
柄谷行人、見田宗介に大澤真幸がインタビューしたものである。最初に大澤真幸による簡単な紹介があり、それからインタビューに入る。とても分かりやすく、いい構成である。特に見田宗介については、教えられることが多く、改めて氏の著作を読んでみたいと思った。
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いやあ、柄谷さんはかっこういい。現在生きている日本人としては、数少ない世界に通用する思想家なんだろうなあ。しかし、交換様式D、まだまだ理解できない。具体的なイメージがわかない。「純粋贈与」ではないのだろうし、「恩送り」というのでもなさそうだし。イソノミアも興味深い。自由と平等が両立する世界。何物にも支配されない。そこでは交換様式Dが成立する。次の著作が待ち遠しい。見田宗介、岩波新書で2冊読んだだけだった。柄谷さんほどには響かなかった。けれど、今回の対談を読んで、主要著作のあと5冊は読んでみたいと思った。2人の思想はどう交錯していくのか。大澤さんが終章で試みているが、なかなかのみ込めない。そして、私が過去に読んできた、梅棹忠夫や梅原猛や河合隼雄などの考えとは、どこかで交わっているのだろうか。化学反応を起こして新たな物質が出現するのだろうか。なんだか、ワクワク、ゾクゾクする。
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「戦後思想のエッセンス」というシリーズを創刊するに当たり、第0号として、柄谷行人、見田宗介を取り上げたのが本書である。同シリーズは、一冊につき一人の戦後の思想家を取り上げて、後続の世代の書き手たちがその思想家について論じるというスタイルを取る予定だが、ここでは編者である大澤真幸が戦後思想の代表者としての二人にインタビューをする形を取っている。
インタビュー形式は、ことに聞き手が、対象の思考圏に嵌っていて(決して悪いことではない)、対抗的な異論を差し挟む余地が少ないときには、ことさら当たり障りのないものになりがちだ。至極、当たり前のことを言ったような気がするが、本書もそういった状況でのインタビューであり、せっかく本人を前にしながらその紹介を浅くするにとどまってしまっているように感じられた。明らかに日本の戦後思想史を代表する二人(少なくとも柄谷行人がそうであることに異論を挟む人は少ないだろう)なのだから、シリーズの主旨としても一冊を使って腰を落ち着けて論じてほしいところである。何とすれば大澤氏自身が改めて取り組んでもよいかと思うがどうだろうか。
柄谷行人は日本においては特異でなおかつ息の長い思想家である。本書でも紹介されている通り、『意味という病』や『日本近代文学の起源』といった文芸批評からそのキャリアを始め、『隠喩としての建築』や『マルクスその可能性の中心』といった理論的な仕事に移行し、そして思索家としてのひとつの頂点である『探求I』『探求II』を世に問い、自らの関心の重心を常に移動させてきた。そして今また、『世界史の構造』などの近年の著作において、より現実にも寄り添いかつ歴史に紐づけられる交換様式論を世に問うている。
大澤真幸の柄谷行人への過度の寄り添い方が少し鼻につくところもあるが、柄谷行人の仕事の紹介としては、ノーマルでわかりやすい。一方で、しびれるような言葉のやりとりは少ないように思う。
見田宗介の方は、一冊も読んだことがないので、評価をしかねるところがある。少なくとも自分には柄谷と双璧をなす戦後思想家の巨人という認識はなかった。日本の社会学の文脈においては、ひとつの頂なのかもしれない。いつか読んでみたいと思うが、どうも食指が伸びないのはなぜなのだろうか。
「戦後思想のエッセンス」のシリーズとしては、中島岳志による石原慎太郎、安藤礼二による吉本隆明、と続いている。その次以降はどうなるのだろうか。
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社会学者の大澤真幸が、日本の戦後~現代を代表する社会思想家として柄谷行人と見田宗助の両名を選び、対談及び自身の解説文によって両名の思想を描き出す一冊。
両名の著作にあまり触れたことがない人でも理解できるように書かれた解説文や、大澤真幸自身の優れたインタビュアーとしての論点設定により、両名の思想の入門書として確かに良い一冊になっている。
柄谷行人については、2010年に発表された『世界史の構造』以降のテーマである交換様式論が主に解説の対象とされ、かつ自身の恩師である見田宗介の思想との接続を図る最後のパートが非常に面白い。
少なくとも研究室のメンバーで柄谷行人を読んでいなかった人は相当少ないように記憶しており、彼らほどではないにせよ、『日本近代文学の起源』や『探求Ⅱ』を読み、社会思想の学問としての面白さを知った自身としては、対談で語られる著作誕生のバックグラウンドなども含めて読み応えがある。
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編者のお二人に対する深い造詣と敬意、鋭い切り口から、お二人の考え、概念を分かりやすく掘り下げながらどんどん引き出してくれています。
しかも最終章でお二人の鍵概念をつなぎ合わせ、それぞれの思想が混交されていくところが、なんというか、新たな可能性を感じました。