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本書は、後藤新平の生き様―人物像や事跡―を綴ると同時に、明治・大正期の様々な出来事や社会や政治の変化、主に後藤新平と接点が在った人達を中心に、同時代の有名な人々の挿話も多く紹介されていて、非常に佳い。興味尽きない内容が続くことから、「読書の一時」を敢えて設けるなどまでして、夢中で読了した…
後藤新平が活躍した時代も「混迷した時代」であったかもしれないが、現在も、当然異なる状況や事情の下ではあるが「混迷の時代」というような雰囲気が色濃いと思う。であるからこそ、後藤新平の生き様を綴った本書は、輝きを増すのだと思う…
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医師としての志は何とも強し。公共と経綸の理念をもって生きることを真剣に考える。そしてその姿が人心を掌握する。ある意味時代の寵児とでも言おうか。朝敵と蔑まれながらも、日本の羅針盤どころか舵取りにまで登りつめたのは必然のこと。ただ一方で、阿片と税の巧妙な政策や、シベリア出兵の命令書に判を押すなど、偉人とはとうてい呼べない眉唾な行動もとっている。まぁ、所詮人間ということで。
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医者出身が故、感染症、インフラの重要性を理解。
都市設計等に反映。
早くから「予防医学」の重要性を説き、物事の捉え方が「予防」のために何をすべきか。
優秀な人材を登用。
専門家。新渡戸稲造、浜口雄幸等々
責任を与え、自分は大局を押さえる
鉄道院総裁時
「日常の鉄道運営については課長、係長に任せて、局長、部長は時間の余裕をもって広く社会経済を見て、事業の大方針を下す支持する仕事に専念すべきだ」
児玉源太郎が後藤新平を登用。
児玉も、また全面的に任せて、責任を取るスタイル。
後藤が検疫事業の終了を児玉へ報告しに行った。
児玉曰く、「この箱はきみの月桂冠だ。持って行って、開いてみよ」
ここには苦情が書簡が詰まっていた。
児玉ルートで長州閥、軍部との関係性を築く。
藩閥と実力主義者とのバランスに葛藤があったのでは。
”政治家”になれない政治家。
徒党を組まない。藩閥への違和感。人を選ぶ。「人間道楽」
呪縛がない、門閥、藩閥、学閥、天皇。
イデオロギーの呪縛がない。超現実的。
科学的政治家
事前調査を重視、調査に投資を惜しまない。
「わが局(ドイツ)を訪問した日本人は多数いるが、真の統計の理解者は後藤新平氏一人だ」
医者でもない、政治家でもない、型破りな役人。
同じ岩手県(藩閥に属さない)原敬との違いは?
大胆な政策を実現するためには、政党政治は弊害であった。(例えば、政友会は地主、地方の利権をベースとしていた)
陸奥宗光が伊藤博文首相にいう。
「あの男には、早くから何らかの椅子を与えてやらなければならぬ。このまま浪人させておくと、あの男は社会党を起こすかもしれませぬ」
獄中にあった陸奥を同じような理由で伊藤が救ったことが面白い。
陸奥は後藤の事を評価していたに違いない。
そして原敬の尊敬する人物が陸奥であることも面白い。
超現実的に強か、という観点で三人に共通項があるのだろう。
なぜ、首相になれなかったのか?
それは、後藤が内務大臣の時に徹底的に政友会の勢力を削いだ。そのため、唯一の元老西園寺公望から嫌われた。
伊藤博文
「君は生まれるのが早すぎた、そして遅すぎた」
「大風呂敷」批判を受けて
計画が大きいことを理由に大風呂敷と批判するなら、それは当たらない。
計画は総合的に、しかも長期的につくるからこそ計画の意味があるのだ。
大風呂敷とは、いい加減という意味だろうか。
だとしたら、それも違う。俺は、台湾は土地調査から始めた。満鉄に調査部を作った。
外交観
太平洋を挟んでアジア大陸とアメリカは将来的に敵対するとみた。
それを回避するには旧大陸勢力の中国、極東に領土を広げるロシアと日本は経済面で結束し、アメリカと対面せねばならない。
「日露中の提携」を指向。
虎ノ門事件で職を失った正力松太郎へ資金援助、正力は読売新聞を買収。
「よく聞け、金を残して死ぬ者は下だ。仕事を残して死ぬ者は中だ。人を残して死ぬ者は上だ。よく覚えておけ」
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台湾総督府の民政長官として辣腕を振るった人物として興味を持ち、彼の数々の業績と思想、何が優れていたかを知りたく、読み始めた。
500ページ弱の大冊でやっと読了。
山崎淳一郎の作で期待していたが、後藤新平に自分がなったような躍動感は味わえず。
彼が立案した帝都復興案がもし実現していたらと夢想してしまいました。
私と公、公を騙った政治、今の私のみを主張するかの民主主義、色々考えさせられました。