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すごい。惹き込まれたというより、引きずり込まれた感じ。
オスカー・ワイルドと、「サロメ」の挿絵を描いたオーブリー・ビアズリー、その姉メイベル・ビアズリーを中心とした、史実をベースとしたフィクション。(なにせメイベルにいたってはWikipediaすらない。)
さすがにこのサロメの絵は見たことあるけど、こんな絵を描く人は「陽」ではないだろうな。この書き込み、恐ろしさを感じる。そういう意味でイメージにピッタリ。
しかし本作の主役はあくまでもメイベルなのだ。天才の弟をもち、それを支えつつも、自分もスポットライトを浴びていたいメイベル。弟を利用することも忘れず、弟のためと言いつつ(本人は真底そう思っているかもしれないが)、弟の希望を打ち砕く。ドロッした欲望の世界だなぁ。
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原田マハの美術系小説。オスカー・ワイルド著・オーブリー・ビアズリー絵の戯曲「サロメ」にまつわる話を、ビアズリーの姉のメイベルを通してえがく。
19世紀末。結核を患い、今にもその若い命を終えようとしているオーブリー。彼のそばに付きそうメイベルは、二人がこのようになってしまった原因である“あの男”、ワイルドのことを忘れたことはなかった。ワイルドは当時禁忌とされてい男色家であった。彼をとりまくあらゆる欲望の渦に飲み込まれていく姉弟。
最初は、またこのパターンかよって思ったけど、現代部分は短く、最低限。知的好奇心をくすぐられ、原田マハをどっぷりと堪能しました。
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表紙はちょっと引いてしまうような絵。それでもマハさんの本だし読んでみたかった。
内容的にはサロメの衝撃(一般常識を知らなかっただけだが)にびっくりしつつ、天才たちと彼らを取り巻く家族の目線がだんだんと怖くなり。なんとか読めた。
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デカダンスな雰囲気が漂う、映画としてみたくなる一冊。
時代の寵児オスカー・ワイルドと彗星のように現れた夭折の天才画家オーブリー・ビアズリー、そしてその姉の女優メイベル・ビアズリーに男色家ワイルドの恋人の翻訳家アルフレッド・ダグラスの、それぞれの感情や思惑が複雑に絡み合ったストーリーに引き込まれる。
ワイルドの戯曲「サロメ」の悪魔的な魅力が、取り巻く人を狂わせていく。
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原田さんの芸術家を主人公にしたこのシリーズが好きで思わず買ってしまったけれど、表紙のちょっと怖めの絵。
「サロメ」聞いたことあるような、事前に調べてみて興味が沸く。新約聖書を元にしたオスカー・ワイルドの戯曲。この
戯曲のストーリーと、オスカー・ワイルドとオーブリーの背徳的な関係と姉メイベルを加えた三角関係があいまって、昼ドラ感がすごい。
以前からミュシャが好きだったのだけど、ミュシャ作品で有名なポスターのモデル、サラ・ベルナールが出てきたので一気に親近感が。モデルとなった写真を見るくらいだったので、ヨーロッパでのスターぶりがよくわかる。
現代パートとどんな感じで繋がるのか、最後一気にミステリー要素満点でちょっとゾクッとくる。
ほんと、原田さんは世界観に引っ張り込むのが上手い。
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なかなか没入できなかった。珍しく、原田マハさんの本で読了感に満たされなかったのは、黒い感情に覆われた物語だったからだろうか。
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以前モロー展で観た『出現』。あの絵で初めてサロメのモチーフを知りその禍々しさに、なんとも言えないドロっとした恐ろしさを感じた。
同じモチーフで書かれたオスカー・ワイルドの『サロメ』とビアズリーによる挿絵。そして更にその人間模様全体さえもをサロメというモチーフで語るのが本作原田マハの『サロメ』。禁断のテーマに魅せられた人々がサロメさながらにその情念を露わにしていく様は、サロメというテーマにぴったりなドロドロした感情が渦巻いていて、非常に緊迫した空気感漂う作品となっていると思う。軽い方の原田マハさんが好きな人は、この展開には少し驚くのではないかな。
オーブリーとオスカー、ダグラスとオスカー、そしてメイベルの思い。サロメのモチーフが幾重にも重なったかのような展開はビアズリーの絵のように緻密で迫力がある。特に自身に内在するサロメ性に目覚めたメイベルは正にファムファタール。人生をかけてサロメを演じきったのだろう。メイベルのオスカーに対する感情は直接的な思いと屈折した思いが混ざったサロメそのものだったのかも知れない。やはり本当に怖いのは女の情念…
敢えて難を言うならオスカーの人物描写かな。それまでの怪しい雰囲気がパリ行きキャンセルから一転、一気に存在感がなくなるのは何かの意図があるのか。もう少しその魅力を厚く表現されていればラストシーンがもっと映えたかも。まぁ作者も編集者も考えた末でしょうからやっぱりこのバランスが良かったのかな。
あと皆さんの言うとおり現代パートは不要ではないかな…楽園のカンヴァスの二番煎じ感だけが残る。本編が良くできてるんだからこの仕掛けは蛇足と感じた。
そういった細かいところを除けば十分に楽しめる作品でした!
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オーブリー・ピアズリーとオスカー・ワイルドを取り上げるとことから、原田マハの独断場となっている。話の進め方にも作者らしい二重3重の工夫がみられて楽しい仕掛けになっている。
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ゲルニカのような、政治的な思惑が絡むリアリティとは全く別の路線で楽しめる。現実はプロローグとエピローグ代わりに申し訳程度に添えられているだけで、本文はほぼ全て19世紀。世紀末の退廃的で毒気のある美術世界、センセーショナルな作家と夭逝した異端の画家、人のいかがわしい好奇心をそそる素材を生き生きと、怒涛の勢いで読ませる。虚構と現実が入り混じるのは、執着や恋や情念に狂う人物の複雑で単純な情動があまりにリアルだから。その辺の心理について人は子ども時代から基本的に成長しないのかもしれない……気のある人には自分を特別に思ってほしくて、みっともないと分かっていてもやらかしてしまう、そして振り向いてもらえないと分かれば可愛さ余って憎さ百倍。
それから、ヘロデ王とサロメとヨカナーンの関係が登場人物らにそっくり重なる描写に、ただでさえ濃い聖書の物語を何度も反芻させられているようで目眩がする。ただその目眩は結構心地よい。
ワイルドがビアズリーの挿絵を却下し書き直させた話は聞いたことがあるが、最終的に採用されたものにもいかがわしいメタファーは結局差し込まれている。そんな風に依頼主にこっそり噛み付いてほくそ笑んでいたかもしれないビアズリーの心情が、読後、今までとはまた違った印象で迫ってきた。
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史実に基づいたフィクションではあるが、生々しくて面白いと思った。
この作家の得意分野であるアートを軸にしたミステリー・タッチの作品は好きだ。
グーグルでチェックした事により興味も深まった。
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面白かったです。才能、愛、仕事、絡みまくって、最後まで緊張感の有る展開で、読後がものすごく疲れました。
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語り手のメイベルが弟のオーブリーに依存している様子が終始鼻についた。弟がワイルドと共に道を踏み外すことを止めようとしていたが、それはきっと建前だろう。クライマックスでは、稀代の妖女サロメと同化した彼女の艶やかな笑みが感じられる。読了後に改めて帯の宣伝文句を見ると、これはメイベルの言葉なのかとも思えてくる。私と一緒に地獄に堕ちよう。
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妖美な画を描く病弱のオーブリー・ビアズリーと彼を献身的に支える姉メイベル。
そこへ男色作家のオスカー・ワイルドと戯曲「サロメ」が姉弟の運命を狂わす。
さらにこの破滅の物語には実は誰も知らないもう一つの「事件」があった❗
…サロメとは、誰だったのか?
暗転の黒頁が心憎し
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皿の上に虫が3匹…
“蠱毒"というのは古代中国で横行した呪術。狭い空間に毒虫を閉じ込めて共食いさせ、生き残った"蠱毒"を標的となる人の食べ物に混ぜると命を奪えると信じられていたそう…。
まさに四つ巴の愛憎…でも真の蠱毒は読み手によって変わるのかも…
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原田マハさんの作品がとても好きでよく読むが、今回は題材からしてまた一つ違う顔が見えたと思う。
際どい情景が続くが、きちんと読者の心を離さないよう構成が練られていたので、特に最後の方は加速気味に本を読み終えた。
読後感は珍しくあまり良いものではなかったが、これはこれで面白かった。