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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書では、中世のペストから現代のコロナまで、様々な病と人間との戦いを記している。医学的なことよりも、政治的な面を主に取り上げており、読みやすかった。もちろん、必要最低限の医学の情報は載っている。
WHOへの信頼が揺らぐ昨今、その取り組みの歴史を国際連盟の頃から遡って調べることは重要なことだと思う。
人類の健康をめぐる苦悩の歴史を辿った興味深い一冊です!
2021/03/05 10:44
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、国際政治学者として活躍されている詫摩佳代氏の代表作です。同氏には、ほかに『国際政治のなかの国際保健事業 国際連盟保健機関から世界保健機関、ユニセフへ』があります。同書の中で筆者は、「古くはペストやコレラ、現代でもエボラ出血熱や新型肺炎など、人類の歴史は病との闘いである」と主張され、加えて「天然痘やポリオを根絶に導いた背景には、医療の進歩のみならず、国際協力の進展があった。しかし、マラリアはいまだ蔓延し、エイズ、SARS、エボラ出血熱、そして新型コロナウイルスなど、次々に新たな病が人類に襲いかかっている」と警告しています。同氏は、喫煙や糖分のとりすぎによる生活習慣病といった身近な病から深刻な感染症までを含む、人類の健康をめぐる苦闘の歴史をたどった興味深い一冊です。
国際社会の苦闘をたどり、今後を考えるための一冊
2020/07/03 11:33
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
マラリア、エイズ、エボラ出血熱、新型コロナウイルスなどの感染症や、喫煙や糖分のとりすぎによる生活習慣病といった課題に私たちはどう向き合うべきか。人類は感染症や非感染症を含む「病」とどのように闘ってきたのか、国境を越える協力枠組みの発展と問題点について、国際政治に焦点を当てて検討している。国際協力の始まりからWHOの誕生、感染症や生活習慣病との闘いをたどりながら、そこにはたらく政治の力学を分析。病との闘いに関しては国や企業の打算で足を引っ張られることもあるけれども、本書が示すのは、同時に保健分野が平時の対立を緩和させ、あるいは協力を生み出すケースもあるということ。国際連盟脱退後も保健分野にはとどまった日本、米ソの協力でできたポリオワクチンなど、国際協力の可能性を教えてくれる。
人の命と健康を守ることを最優先する価値観を共有し、それを実現する新しい社会を
2020/05/31 15:33
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投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、「人類と病との闘いは、国際協力のあり方に左右されてきた。」「人類と病との闘いの行方は、国際社会における多様な利害関係を、いかに一つの目標 ―病から人類を守る― に向けて協調させていけるかにかかっている。」と本文の最後を結んでいる。
本書は、感染症と国家間対立、駆け引きやパワーバランスの歴史を振り返り、結論として前述のように述べている。
まさに、新型コロナウイルスをめぐって、2020年5月29日にトランプ大統領が世界保健機関(WHO)からの脱退を表明するなどの対立が続けられている。
新型感染症は、国を選んではくれない。グローバル化のもとで、世界の人類すべてに襲いかかってくる。自国のみの利害関係だけで対応できるようなものではない。まさに、グローバルな、人類的協力ことが重要になっている。あらためて、人類はこのことを考える必要がある。
著者は、あとがきで、「結局、国際協力なくして人類は感染症に対処することはできないのだから。」「感染症や非感染症疾患など様々な脅威から人間の健康を守ることは、国際社会における数少ない共通の価値観となる。」と述べている。
いま、この国際的な価値観が、日本にも問われているだろう。人の命と健康を守ることを最優先する価値観を国民が共有し、それを実現する新しい社会をつくるために力を合わすことが求められているだろう。
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人類の歴史は病との戦いである。本書はペストやコレラなど感染症の脅威に対し、人類がどのように対峙してきたかを国際政治の視点から検証する。
パンデミックといわれるような人類全体の脅威には、国境を越える国際保健協力が必要になる。だが、その過程で国家間の利害や思惑が作用し、これまで数々の挫折と失敗が繰り返されてきた。
WHOの設立については、アメリカがスペイン風邪を教訓にイニシアティブを発揮して進めたが、加盟国をどうするかについてのイギリスと対立や、組織構成や本部の位置についてソ連とのせめぎ合いなど様々な駆け引きや妥協があった。
だが、天然痘は根絶、ポリオに関しても、生ワクチン実用化に向け米ソが協力した。
新型コロナウイルス危機で、国際的な協力の重要性があらためて再認識されている現代、WHOを中心とする国際協力の原点に立ち返ることが必要だと著者は訴える。
このほか、いまだ根絶できないマラリアとの苦闘、エイズ、SARS、エボラ出血熱など新たな脅威、喫煙や糖分の取りすぎによる生活習慣病対策、途上国の健康への権利を巡ってトリップス協定による医薬品の特許保護に柔軟性を持たせることなど国際協力を問う様々な要素が盛り込まれている。
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【263冊目】新型コロナが流行っているこの時期だからこそ手に取った本。きっとこういうことでもないと読まないテーマだと思ったから、逆にこれを未知の世界に出会うチャンスだと思わないと!とはいえ、似たようなテーマの本はこの時期(そしてこの後しばらくは)たくさん出版されると思われるところ、当たり外れあるだろうなと。その点、「新しい地政学」に寄稿していた筆者なら一定程度のクオリティは担保されてるかと思い、購入。あとがきで知ったが、北岡伸一氏の弟子だとのこと。
内容は、①感染症は国際的な保健協力によって対処されてきておりいくつもの成功例があること、そして、②保健協力にはたぶんに政治的な側面があることを示しているもの。
冒頭、チフスやペストといった有名な感染症の歴史の概観がすでに興味深い。特に、これまで公衆衛生分野に興味を持ってこなかった者としては、流行が当時の世相を作ったり、あるいはまさに現代と同じように家にこもって隔離という措置をとっていたことが興味深かった。
また、インフルエンザが第一次世界大戦のフランス陸軍前線兵士の半分を撤退させたなど、感染症が軍事面にも影響を及ぼしてきた事例も、後に描かれるWHO外交とあわせて、感染症が安全保障に影響を及ぼす例として面白い。
さらに、WHOが根絶に成功した天然痘やポリオと、根絶していないマラリアでは、政策面の違いだけでなく、感染経路(ヒトヒト感染か、媒介物があるか)が異なるというのも興味深い。
あと、最後の章を割いて医薬品への「アクセス」を説明しているのも、僕的には◎。厚労省に就職しようとか考えたことすらなかったけど、薬価に対する規制が日本における医薬品へのアクセスを容易にしている面があるとは知らなかった!厚労省(医政局)ってすごいんだなー!
薄くて読みやすいし、感染症が国際政治や安全保障の問題だという筆者の立場を踏まえれば、内閣官房国家安全保障局の職員さんとか読めばいいのに…笑
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感染症の世紀を生きる
航空券連帯税の利用でエイズや結核治療へのアクセスとは知らなんだ。
読みやすいような、ずっと論文を読んでいるような…
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コロナ禍で感染症について書かれている新書を探している中で出会った一冊。
国際保険事業を国際政治と絡めて書かれていて、興味深い内容であった。
感染症だけでなく、生活習慣病の話題もあり面白かった。
世界保健機関(WHO)は国際的に中立な機関だと思っていたが、本機関の設立から現在に至るまでの感染症対策を見ていくと、国際政治の力学からは切り離せないということが、本書で理解できた。
昨今の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいて、WHOは中国寄りの態度をとっている等の批判が高まっているが、財政面で加盟国に依存していることなどを考慮すればありえないことではない、と改めて認識した。
著者の述べるように、国際政治の影響を受けることを利用していけばよい。
(過去、マラリア対策や天然痘撲滅においては、冷戦中の米ソが互いにイニシアティブを取ろうとしたことが、これらの感染症対策に有効だった。)
国際政治に関する本はほとんど読んだことがなかったので、新鮮な考え方に触れられて良かった。
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ペスト、エイズ、新型コロナウイルスなどの感染症から生活習慣病まで。人類は病といかに闘ってきたのか。国際政治の視点からたどる。
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社会学者女性やジェンダー論女性の書いた情感豊かな文章ばかり読んでいただめ、大変失礼ながら、あとがきで筆者が女性であったことを知り驚いた。
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コロナ禍以降、感染症関連の書籍や記事をいくつか読んできた。それらの多くは、感染症の歴史を俯瞰したタテの視点を提供してくれた。本書は、グローバル化社会にあって重要な国際関係、ヨコの視点を提供してくれる。
本書が扱うのは、ペスト、コレラ、マラリア、エイズ、新型コロナ等の感染症に加えて、タバコ問題、糖尿病等の生活習慣病、そして国力の違いがもたらす健康格差と幅が広い。本書を読むと第一次大戦後、いかに国際社会が協調して健康問題にあたってきたか、はたまた逆に、国同士のパワーバランスがいかに健康問題の解決を遅らせてしまったかがよくわかる。
かつては英国と米国、ソ連が、今は米国と中国が世界のトッププレイヤーだろう。WHO設立の立役者である米国が自国主義を掲げて、そのWHOからの脱退を表明したことも、中国が情報を隠蔽し、国際協調を軽視して自国のプロパガンダに走ることも、百害あって一利なしであることが示される。
実は日本も両国を笑う立場にはない。タバコ問題にあっては足を引っ張る側にあると国際的に指摘されているという。もちろんそれらの影には経済的な利得が見え隠れする。
WHOの定義では、健康とは「身体的・精神的、社会的複利のことで、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」とされる。すなわち、健康とは守られるべき基本的人権なのである。
病は国境を容易に越える。コロナ関連の本では、今、本書は一番読まれるべきものかもしれない。
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2021年4月現在、新型コロナウイルス感染が確認され1年半が過ぎ、第4波のまっただ中。本書は、2015年に企画が始まり、著者のワークライフバランスもあり、新型コロナウイルス感染第1波の渦中に発売された。
国際政治を専攻する筆者が、国際保険分野の専門家との交流を通じて、感染症の歴史を国際政治学の視点を加えて検証します。ペストと隔離、コレラと公衆衛生や赤十字社の設立を紐解きます。2度の世界大戦と感染症との関係では、マラリアやスペイン風邪に対する国際政治の背景を解説。そして、第二次世界大戦後のWHOの設立、天然痘の根絶、ポリオ根絶への道、一方でマラリアとの苦悩などの経過を追います。近年の、エイズの撲滅、サーズの恐怖、エボラ出血熱の教訓、そして新型コロナウイルスと国際政治を概観します。一方で、感染症と生活習慣病対策、自由と健康のせめぎ合いの中で、喫煙の問題にも踏み込みます。最後に、健康への権利をめぐる闘いとして、アクセスと注目の格差に焦点をあて、発展途上国を中心とした、未だに顧みられない熱帯病への研究、資金援助の問題提起をします。健康権、感染症、貧困と格差など、あらためて国際協調が重要であることを強調します。
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なんとなく知ってるような知らないような伝染病のことが一通りわかる。旅行先でけねんとなるマラリヤやチフスよく聞くけどなんのことかわからないスペイン風邪のことなど。
地域を跨いで感染することや、そもそも戦争行為により感染地域が非常に拡大すること、皮肉にも前後して国際的な防疫の取り組みがなされること、などがよくわかる。2021年にもなって、何世紀も前と変わらないことやってるんだな、て絶望感も。
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21/05/02読了
ペストに始まり生活習慣病にいたるまで、健康をめぐる国際政治の流れをまとめたもの。
配られたカードでたたかう、てことを改めて思わされた
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2021/5/26読了。BS報道番組で『ワクチン格差』が阻むパンデミックの終焉。をテーマに政治家、感染症専門家、国際政治学者を交えての議論を大変興味深く拝聴した。そこに登場した筆者の発言と学問としての立ち位置に関心を持ち本書を手にしたわけだ。この新型コロナ感染症が発生して1年半が経過するが、減少傾向は見られるものの新たな変異株が
出現して、再拡大の不安も増大している。しかし、
西洋先進国特にイギリス、アメリカにおいては感染拡大と併せていち早くワクチン開発に着手?し大混乱を経てワクチン接種を開始して拡大の収まりを見せ始めている。しかし、一方で手に入るものと入らないものとの格差が目立ち始め、そこにも国家間や企業の思わくが絡み複雑なパワーバランスが浮き彫りにされて来た。人類の歴史は、まさに病(感染症)との戦いの歴史でもあった。本書を読みながら、改めてそこに立ちはだかる課題や解決(国際協力)の取り組みを知ることが出来た。非常にわかり易く納得出来た良書だ。追)重要なこととして、国際的な感染症と人類の健康問題に取組む国際機関WHOの存在も忘れてはならない。