言葉にしがたい家族
2019/11/09 01:55
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
よくあるような、大人になってから楽しかった子どもの頃を思い返した作品かと思っていたら、とんでもない誤解だった。ぼかしてあるが、これって近親相姦では?と思わせるが、それだけでは済まされないような「なにか」がある家族なのではないかと思わせる作品。
個性的な、では片づけられない家族
2022/12/06 09:28
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第66回読売文学賞(2014年度)受賞。わたし(都)と陵、パパとママ、個性の強いママを中心としたどこにでもいるような4人家族にに秘密がある、パパとママは実は夫婦ではなく兄弟で、わたしと陵は兄弟だけど・・・・。安田講堂となべおさみの「ヤスダーッ」は関係ないの?という陵の発言は作者と同世代として笑ってしまった、あと、クスッとしたところはママの「どっちでもいいんだけど」という発言、これ何か関西の語尾に「知らんけど」をつける会話に似ている。確かにと思ったのは、死ぬ前の日にママが言った「そうやって生きるかは自分で決められるけど、どうやって死ぬかは、決められないみたい。ちょっと、くやしいわ」ということば、けっこう重たい。陵が言った自分が誰かの夢見ている夢の中の人間の気がしない?と都に言う、私もそれを思う時がある
共に生きる(過ごす)ということの重み
2017/08/25 00:48
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投稿者:une femme - この投稿者のレビュー一覧を見る
大人になった主人公が、子供のころに過ごした夏休みを思い出す物語。
その情景は、昭和の夏や、夏休みを思わせる。
ところが、主人公の家族は、<普通>という枠に当てはまらない。そもそも、<普通の家族>というのは、幻想に過ぎないのだろうけれど。解説で、江国香織さんが、書いているように、<一般的>というのは、そもそも何なのか、ということを考えさせる物語でもあると思う。それは、主人公が、自分たちの人生を、どこかで意識せざるをえない普通と対比させながら、思い返しているからだろう。
主人公が、愛するとは、好きとは何かを考えながら、自分の気持ちは、執着という言葉が当てはまり、それでは、なぜ執着してしまうのだろう、と自問する所を読みながら、自分にとって、愛とは何か、家族とは何かを考えた。
この本のなかの人たちは、愛おしいから側にいて、一緒に時間を過ごす、生活をする、あるいは、長い時間を共に過ごしたから解り合う気持ちが強くなるといった具合に、生きている。そのような人たちの共同体を家族と呼ぶこともできるだろう。(あるいは、家族経営の会社などとも。)つまり、家族だから守るとか、恋人だからキスをするとか、形から生じるものの欺瞞とは逆なのだ。彼らのような生き方には、迷いはあっても、嘘がない。
日常の中に、生活のなかに、普通に存在している愛のようなもの、共に時間を過ごすことで生まれる何か、共有する時間を経ることで、人を結びつける大切なものを、暗に描いているように思われた。
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投稿者:kisuke - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある家族の物語。
登場人物それぞれがモラルに反してはいるのですが、不思議と批判する気持ちはわきませんでした。
本は好きでよく読みますが、この頃こんなに読む意味はあるのか?自分に疑問をもっていました。
この本を読んでみて、やはり自分にはない価値観や考え方、感情を知ることは大切だなと思いました。
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【ママ、ママはどうしてパパと暮らしていたの?】夢に亡くなったママが現れたのは、都が陵と暮らしはじめてからだった。きょうだいが辿りついた愛のかたちとは。読売文学賞受賞作。
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面白かったです。
あわあわとした、姉と弟の日々。
パパ、ママ、そして姉である主人公の都と、弟の陵。別々に立っているようで、とても濃密に絡まっていました。
戦中戦後や昭和の事件、昭和天皇の崩御、そして地下鉄サリン事件や地震も出てきて、姉弟のこれまでの時間の経過が描かれるのが印象的でした。降りたいときに降りることは、できない。でも、降りたくないときに降ろさせられる。生きるって難儀です。
好きだった、という告白はとても残酷で甘美な気がします。姉弟というものは思ったよりも近いかもしれません。
不思議と嫌悪感は全くありませんでした。
あわあわと、ぼやぼやと過ぎて行きました。
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パパ、ママ、弟の陵、ママの実家の紙屋へ入った武治さん、そして私、都。彼らは少し変わったかたちをした家族だった。
徐々に明かされる真実、ただしそれを知っても変わることはないお互いの家族への思い。
その中で密やかに守ってきた愛。
独特の静けさの漂う家族小説であり恋愛小説。
嫌悪感を催しがちな素材をちりばめながらもさらっと描いてしまうところが作者らしい。
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禁断かもしれない内容は人にとっては生理的に受け入れ難いだろう。しかし善悪を超えたところに人と人との真の関係性がある。自分を殺して何が楽しいのか。自分やそれぞれの個を優しく抱きしめて生きていけばいいじゃないか。
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(著者と同じ)1958年生まれの都と一歳年下の弟 陵、そしてパパとママ。4人は祖父の建てた家に住んでいる。
1986年 ママが癌で死亡。3人は家を出て、別々に住み始める。
1995年 通勤途中の陵が地下鉄サリン事件と遭遇。その年のクリスマスに都に「一緒に住もう」と提案。元住んでいた家に都と陵は帰ってくるが、パパは戻らなかった。
1996年 夏の終わり、夜眠られない陵のため都が一緒に寝る。
都が高校一年生の時、姉弟はパパとママが夫婦ではなく兄と妹で、また父親でもないことを知る。
1995年1月阪神淡路大震災・3月地下鉄サリン事件、2011年東日本大震災 2014年二人が住む家の二階一部が崩壊。
陵「阪神の地震があったあとのサリンの事件は、おれを死に引き寄せてしまった。平原に埋まる地雷のように、死はそのへんにいくらでもあって、軽くでも踏んでしまえば、すぐさまおれを掴まえにきてしまうんだって、おれにはよくわかった。」
ママに死が訪れようとしていたある日、都と陵は体を重ねた。
陵が死を恐れたとき、姉の手を求めた、幼い時いつも繋いでいた手を。というところでしょうか。こんな言い方すると身も蓋もないけど。 ほよ
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姉弟の関係よりも、娘とママの関係のほうが描きつくされているように思う。娘の都が、ママの存在を受け止められるようになるまでの心理が、何か痛切なものを感じさせる。
逆に、姉弟の関係には必然的を感じられなかった。
(2017.7)
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川上弘美作品初読
愛の真理を問いそこから逃げずに受け止めるまでを書いてる気がする
一般的に問えば裁かれるかもしれないが、本当に裁ける人は誰も居ない
「真に裁いてくれる人はいない」
この言葉を読み
彼ら裁いて欲しかったのかも知れない
不安だった 肯定できない
違う いけない と思っている
それでも、どうしても離れられなかった
と感じた
近親は社会、遺伝子、宗教など各分野でタブーとされている
ただ、それは絶対に許されない理由にはならない
そこから自分達を解き放つには
相当な覚悟が必要で
それでも二人でいる事を選ぶ彼ら
二組の形は違えど思う気持ちは同じで
好きってなんだろう
交わった時にこの行為と好きは重ならない
でも、とても心地よい
引き離す事も出来ないが、強く結びつくわけでもない 好きの理由や行為
どうしてその人でないとと思うんだろう
そういう答えのない事を思うことが好きなんだろうと思った
社会から不要とされているもの形でもあえて惹かれ合うそこに強く引きつけられた
便宜上、生殖上など外的要因が結びつかないからこそ純粋さしか残らない
ここにたどり着く為の道を真摯に歩き徐々に受け入れた人達の誤魔化せないまっすぐさと強さ
そして人が人を想い請うただそれだけを貫いた人達に涙した
一風変わっているようだけどこれが純粋な愛だと私は思った
私が求める愛の形を書いた本に出会えた幸せ
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優しくも厳しくもないけれど、すこし怖気付くような心細さと、そのままでいいやとやんわり覚悟するような心強さとが織りなしている、常温の水みたいな物語。
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最近の川上弘美らしい、しっかりと心情の描写がある作品です。吉本ばななの「哀しい予感」と少し似ています。とても読みやすい文章でしたが、最期まで物足りない感が否めません。どん底とは?「センセイの鞄」や「真鶴」がとても好きなので、もっと残酷でも良いんだよなあと思ってしまうのです。スイセイという響きはとても良い、だからこそ勿体無いです。どうせ掘り下げないのならば、上辺だけでいいからその見えているところだけを描いてほしい。表面だけを描いて、内面を想像させる…それが彼女の作品における魅力だと勝手に思っているので。読売文学賞の受賞作品。
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久しぶりに川上弘美さんの作品を読んだ。時間も主人公の心情も揺れはするけど、安定していて、きわどい関係が当たり前のようにとつとつと書かれていて、懐かしかった。
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2017/08/26
ふわふわとした小説だった。
ママ、サリン事件、弟、チェルノブイリ、夢、がん、父親、パパ、そして死。
夢か現実かよくわからないその狭間を行ったり来たりしているような感覚。
なんだか江國香織みたいな本だなと思っていたら解説書いてた。