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家族の生い立ちを辿り、行き着いた先が誰も幸とは言えないが、不幸とまでも言えず、闇の中からかすかに光る道を進もうと必死に生きる姿が感じられるが、果たして光の射す方へ行けるのだろうか。そこに期待してはいけないように思った。この本の登場人物は家庭運に恵まれず育った人たちであるが、複雑な家庭環境のせいにしては前には進めない。不完全な人間でも、それを自覚し、自分自身を受け入れつつ、希望を捨てずに生きるしかないのだと思う。
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もちぎさんの初小説!
家庭内の虐待、性暴力、虐待の連鎖。親子3代に渡って綴られる当事者目線の小説で、胸が苦しくなる場面も。
今回が初小説とのこと。もちぎさんの想いはもっと深いところにあると思うから、さらに深めた第2作を期待。
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幸せで満ち足りた家庭ってなんだろうって、強く感じる作品だった。
未貞の親は、自分と同じ過ちを繰り返さないよう、良い高校、良い大学に入って立派な人間になる道を示した。でもあまりにがんじがらめにしすぎて、未貞は示されたこと以外、自分のしたい事が何もないという事に気が付いて家を飛び出した。
その未貞が親になり、子供に施した教育は自分の親の教育に反抗するかのような、気分によって施される教育。そして幼き日の自分に似ている二則の事は存在を無視。未智留の事は、自分に絶対服従させようとし、身も心も巧みな話術と大人の力で支配。
そして未智留が持った家庭は、両親共働きで裕福な暮らし、子供の事も束縛せず自由にやらせる。一見すると一番理想的な家庭。だけど関わり合いの薄い関係性、リビングで一緒に過ごす時間もなく、授業参観もどちらか一人しかこない。といった事に、子供は絶対的な安心感を感じられずにいる。
きっと家庭が貧乏で食うや食わずの生活ならそんな事気にならないだろうし、何かが足りていれば別の不足感が気になる。だけど、だから甘えてるとか恵まれてるとは言えない。
残花がドストエフスキーの本の感想の中で言っていた、「みんな表面上は馬鹿なふりして、本当ははらわた煮えくりかえってる」というようなセリフが印象的だった。はたから見ると恵まれているように見えても、人それぞれ悩みがあるっていうのはよく言われる教訓だけど、それは本当に分かりづらくて本人さえうまく言語化できないような、微妙な問題が多いんだろうな。
そう、未智留のような性暴力を受けるという大事件ももちろん中々人には言える事じゃないし、未定のような裕福な家庭ですごく投資してもらってるけどなんだか安心を感じられないというのも人には理解されづらい。
性暴力を受けたという衝撃の告白をしたとしても、その告白相手の残花もまだ子供であまりの内容を受け止めきれないというのもあったかもしれないけれど、「大げさに言ってるけど本当は大したことじゃないんだろう」というような受け取り方をされてしまう事もあるわけだ。
「繋渡り」。繋がって渡っていく。タイトル通り、みんな親子の繋がりは物理的に断ち切ったとしても心理的にはやっぱり繋がっていて、世の中を渡って行っている。親の影響力というのは本当に良くも悪くもすごい。もし親からの影響が、この小説の登場人物のようにあまり良いものでなかった場合、それ以外の出会いなどで構築される自分の意思で、どこまで良い流れに変えていけるのか。
二則は自分の意思で良い流れを掴んだのか?それともやはり自分では乗り越えたと思っていても、父親の影をどこかで求めているのか?
答えを見つけるのがすごく難しい問題がじわじわと頭をもたげる、自分や他人の人生について考えさせられる作品でした。
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かつて子供だった大人が描く
子供という形を借りた
大人になり切れない大人たちの嘆き。
もがき。あがき。
家族といえども他人であり
結局、人は誰もが孤独で
だからこそ愛みたいなものを
他人という不完全なものに求めてしまうのか。
最後にこの本のタイトルが
「綱渡り」ではなくて
「繋渡り」であることの意味を思う。
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「誰だって幸せになっていいんだよ」
最終的にはこの言葉に収束するか。
序盤は少し文章のリズム(というのか、語尾の処理というか)に引っかかるところがあったけれど、後半は引き込まれました。(編集が直さなかったのだから、僕の言語感覚とのズレなのかと思うけど)
残花の性格が意外だった。
名前がかなり独特なので、何か隠された意味が(残花→懺悔みたいな)と思ったけれど、特に見出せず。
読後感は悪くないです。
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父親に虐待される主人公とその周辺の人たちの話。
あまりに人間の心の闇の部分をありのままに描写されているから、細かくてすごいなぁと思う反面読んでいて気持ちのいいものではないなとも思う。
ニュースの中では毎日のように不幸な事件が起きるけど、それは確かに自分には関係ないドラマのようなものかと思う。実際に身の回りに起きないと、ニュースの被害者の方々の痛みや感情はわからないだろう。
個人的に思ったが、登場人物みんな自分のことをどんな人物なのか理解していて、なおかつ客観視しすぎなんじゃないかと思った。自分が客観視できてないだけ?(笑)
結局、無意識なところで同じことは繰り返されるのかなぁ、それは悲しいなぁと思いつつ難しいのかなぁって思った。だから繋渡りなのかしら。
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兄、未智瑠(みちる)、弟、二則(ふそく)、残花(ざんげ)、父、未貞(みてい)、母、緒悟理(おごり)と登場人物の名前がなかなか覚えられず読めなかった。
でもふそく、ざんげ、って…
各章で視点が変わるが、ところどころ、誰が話してるのかわからない箇所がある。
登場する誰にも感情移入できず終わった。
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後輩から借りた。筆者のもちぎさんのフォローしてないけど何度かツイートは見たことがある。色々な経験をして色々な人と関わってきたんだろうなっていう文章だった。何かで「人は子供の頃に与えられなかった物に一生執着する」って聞いたことがあるけど二則はまさにそれで父親の愛に飢えていた。だから美智留が父親から受けてる性虐待を父親に愛されてる証だとずっと羨ましく思っていた。虐待を受けたりそれを見てる子供って虐待を愛や教育だと思ってそれが異常と気づくまでに時間がかかるしそれを自分の中で消化して乗り越えるって本当にとんでもなく精神をすり減らすことだと思った。この本はフィクションだけど近親の同性の性虐待って実際あるんだろうって考えると背筋が凍る。途中まで時系列と登場人物がごちゃごちゃになってて誰がどういう境遇だったのか理解するのに時間がかかった、登場人物の名前も独特だったからかな。