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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホットイフとタイムトラベルを組み合わせた、全く新しい時間テーマの傑作だと思う。
多くの時間者でタブーとされる自分との出会いどころか、50人の自分と一緒にバレエを踊るなんざ、とんでも作家の考えることだろうが、この作家さんは従来のSF読みの予想の遥か斜め上を飛び越えた、ぶっ飛び話を届けてくれてます。
女性同士の恋愛が普通になっている時代設定やタイムトラベルが、ある年を境に不可能になるというのがまたミステリアスでよろしい。
いつかその理由を本にしてほしい。
他にも色々、新機軸が出てきますが、そこはぜひ自分で読んで「う~ん」とうなり声を上げてほしい。
SFのはまだまだこんなセンスオブワンダーがゴロゴロしてるんです。
小説をじっくり読み込むタイプの人にお薦めの一冊です。
メモを片手に読むとgood
2022/01/23 16:52
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投稿者:忍 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初はすらすらと読み進めていけるが、途中から登場人物と年代がごちゃ混ぜになりだしす。それを気にしなくても大筋はつかめるのですが、伏線がいっぱいちりばめられていて、それを回収するために、もう一度最初から読み直し。最初はスマホで読んでいたが、読み直すときはPCを使い、Excelにメモを書き込みながら読み進めました。これが大正解で、読み飛ばしていた部分が理解でき、パズルのピースがはまるように構築されているのがよくわかりました。
ただ、ラスト付近でよくわからないところがあり、裁判の判決の理由(クイズに正解したので*罪?)、殺人事件の裏方?の最後の行動の理由がよく理解できませんでした。
どこかで再読してみようと思います。そのときは、Excelのメモをソートして、時系列の順に読んでみようかと思います。
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独立組織【コンクレーヴ】によりタイムトラベラーが職業化された世界で起きた不可解な殺人事件。真相を探るべく組織に潜入したオデットはタイムトラベルが引き起こす心的変化を目の当たりにする―。タイムパラドックスSFかと思いきや、実は変わり種の心理ミステリー。設定自体は割と粗々しいが、デビュー作とは思えぬ精緻なプロットが秀逸。登場人物の殆どが女性で同性愛をも絡むので、著者のジェンダー観が前面に出ている作風。巻末にはタイムトラベラー適正テストが約40頁に渡り収録されているが、答え合わせは未掲載。狂気の遊び心である…。
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1967年、イギリスでバーバラ、マーガレット、ルシール、グレースの4人の科学者がタイムマシンの実用化に成功した。その後、マーガレットを代表として3人はタイムトラベル推進協議会(通称「コンクレーヴ」)を設立したが、バーバラは短期間に時間移動を繰り返したせいで精神に異常をきたしたため、プロジェクトから外されてしまった。時は流れて2017年。タイムトラベルとは無縁の後半生を送ったバーバラとその孫ルビーの元へ、半年後の日付が記された死因審問の通知書が届く。そして2018年初頭、おもちゃ博物館のボイラー室で身元不明の銃殺死体が発見され…。「時間が可逆ならば人の死生観はどう変化するのか」という心理学的な問いをテーマにした、ポップなタイムトラベルミステリー。
面白かった〜!原題はずばり「The Psychology of Time Travel」。タイムトラベラーは他人が死んでもその人が生存している時勢に飛んで簡単に再会できるため、他人の死に鈍感になっていく(必要がある)のではないかという仮説をはじめ、宇宙飛行士の例を使って説明される“時差ボケ”や、脳外科医から見たタイムトラベラーの脳、果ては神学的決定論に支配され心理学が無用になった22世紀の心理学者による精神分析など、タイムマシンがあるからこそ起きる人の心の変化を巧みに描いている。著者自身心理学者なのだそう。
この極めて具体的なディティールが本書を読む楽しさのキモだ。時間移動を使った脱税法、過去や未来の自分と肉体関係をもつ特殊プレイ、コンセプチュアル・アーティストとして名を馳せるタイムトラベラーなど、タイムマシンが実用化された世界にリアリティを感じさせる描写が魅力的。対して、コンクレーヴの入社試験や神明裁判のようすは、タイムトラベラーが我々とは別のルールで動いていることを教えてくれる。“ループしたタイムパラドックス時空のなかにしか存在しない本”という設定など、ハリー・ポッターやアリスの世界のようなのだ。
また、射殺事件解明のあいまに進行するルビーとグレースの恋のゆくえも大きな魅力。タイムトラベラーの恋愛模様は複雑で、まず出会いの瞬間に老グレースは死に、ルビーはグレースの死後の時間をタイムトラベルしてきた若きグレースと一緒に過ごす。グレースのふるまいは完全にファム・ファタルなのだが、後半に彼女の出自が明かされ、その謎のベールがはがれる。話のなかにイギリスの職業階級や人種問題を自然に取り込んでいて上手い。
タイムマシンの開発者をはじめ、活躍する登場人物のほとんどが女性キャラクターなのだが、そこに特別な理由づけはされておらず、科学者も医者も時間移動を司る大企業の社長も女性である世界としてフラットに描かれている。そういう意味では物語のスタート時点で本書は歴史改変された世界と言えるのかもしれない。フェミニズム的なメッセージや、LGBTについて声高に主張する作品ではないが、超超楽しいエンタメ小説のなかで彼女たちの姿が“当たり前”のものとして描写されることに力づけられる人も多いだろう。
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読み始めてから読み終えるまで大分時間がかかりましたが、面白かったです。ただ、ちょこちょこ読んでは止めていたので、この人誰だったっけ?という疑問はしばしば出てきましたが…
タイムトラベルを続けることによる心理的精神的変化ってのは面白いなぁ。死に対する価値観の変化、か。喪失感は薄れるっていうのはあるのかもしれない。とはいえ、複数の自分が存在したり、同じ場所に何度も訪れるタイムパラドックスはどうなってるんだろう。
過去は変えられないし未来も変えられない、というよりは、結局どうあってもそういう過程を踏む時間になるのだ、というような考え方は面白かったです。
内輪の仲間意識を強化するために軽犯罪に手を染める…みたいな子供っぽいところとか、一般市民に死を宣告するとか、正直今の時代だったら企業コンプライアンスがどうなってるんだ?とか叩かれそう。SNSとかが発達してない時代に的を絞って悪ふざけしてたのかなぁ?
中々切り口が斬新で面白かったです。
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個人的には随所に出てくる馴染みのない性描写とその濃厚な表現が気になって最後まで物語に感情移入が出来なかった。
基本的には結論ありきの未来を見る話で、タイムトラベルならではの過去を変えた事で未来が変わる様な展開は皆無であった。そう言った点で言うとミステリーの部分は物足りなく感じた。
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#日本SF読者クラブ 原題を訳すと「時間旅行の心理学」となる。1967年の英国で、4人の女性科学者によってタイムマシンが発明された。そしてタイムトラベルを管理するため、国家からも独立した組織「コンクレーヴ」が設立された。そして、ある殺人事件が起こるというSFミステリー。
この架空の歴史が背景となり、過去と現在とが交互に語られる。タイムトラベルにつきものの、タイムパラドックスについては、本書では気にしなくて良い。というか作者もスルー状態。問題になるのは、タイムトラベルが人間に及ぼす心理的、精神的な作用だ。ここに注目したのは、とてもユニークだと思う。
「コンクレーヴ」には、いわゆるタイムパトロールと呼ばれる犯罪捜査部門もある。他のタイムトラベル物にあるような高尚な使命感とか高潔なイメージ(スーパージェッターとか)は無く、普通の警察っぽい。しかし警察は「警察」ということで。
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シンプルに面白かった~!SFを主にしてミステリ要素もあり、ストーリー展開も楽しめた。
舞台はタイムトラベルができる1960年代のイギリス。タイムトラベルという技術を独占し、管理するコンクレーブという巨大組織は悪なのか?正義なのか?コンクレーブ内の給与体系や所得税徴収における節税方法、組織内の法律など、ディテールも面白い。
主人公は主に三人。殺人事件(2018年1月)をめぐって未来からその発生を知らされたルビー(2017年)と、タイムトラベルという技術を開発した元祖タイムトラベラー(しかしそれにより精神に支障をきたした)バーバラ、殺人事件の死体の第一発見者となりコンクレーブに就職して内部情報を探ろうとするオデット(2018年1月~)の三人の女が奮闘する話。
時間旅行ができるようになることによる副作用が面白い。過去に戻れば死んだ人に何回でも会えるので死生観が狂い、死に対して何とも思わなくなる。自分の記憶もそれが今思い出している自分よりも過去に起こったことなのか未来に起こることなのか、分からなくなるのも当然だろう。また違う時代に愛人を作ったり、過去や未来の自分とセックスをするという特殊プレイまで発生するという性的倒錯も見られる。
ただタイムトラベルによっていちいち精神に支障をきたしていてはコンクレーブでは働けないため、惨たらしい教育が施され人々は感覚が麻痺していく。そうまでしてタイムトラベルしたいか…?と考えると微妙なところだが、コンクレーブに属することの特権意識も相まって辞められない気持ちも理解はできる。
「技術的にはできるけど、やらない」という選択肢を持つことは難しいのだろうか。技術を発展させるのも人間だけど、コントロールするのも人間なんだなぁと思う。
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初ケイト。皆一度は未来や過去に行ってみたいと思ったことがあるはず。タイムトラベルをしたことにより、心の問題があるとは思いもしませんでした…。特に死生観の欠如など、目から鱗でした。確かに、亡くなった祖父母に会ったらきっと泣いてしまうでしょう——。その他、私たちの倫理観を大きく変えてしまう可能性のある作品です。訳も読みやすく、どんな人にもオススメできます!星四つ半。
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タイムトラベルが可能な世界で起きた殺人事件を追うミステリ。解説に「主人公3人はタイムトラベラーではない」とあるのを読んでなるほどと思った。タイムトラベルがなくても事件は解決してたのかもと考えると興味深い(事件自体は時間の移動が可能という設定が必要。やっぱり証拠集めにはタイムトラベル必要かな)。主要な登場人物はほとんど女性。その人生や人間関係が時間的にザッピングされて、視点の定まらない不思議な感覚を持ちながら読みました。
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タイムマシン・ワープは出現する場所に異物があったらと心配だがコンクレーブのやり方は安心
タイムトラベラーが真っ当な感覚を失っていく様は不気味
時間物らしい異質なミステリーだが神明裁判が意味不明
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類書ではお約束のタイムパラドックスなどをあまり気にすることなく(自身がいる場に過去未来の何人もの自分が同席するのがごく当たり前⁈)殺人事件の謎解きを縦軸にしつつ、むしろタイムトラベラーたちが陥いる(であろう)精神的危機の考察を主眼としたSFらしい実験小説。登場人物たちがあちらこちらの時代と舞台に入れ替わり立ち替わりするので正直読むのが疲れるけれど。